川原でよく見る石は、20種ほどしかない。色で分ければ、もっと少なく見える。川原に下りて、足元を見る。赤い石、緑の石、光る粒。目を引く石はいろいろある。けれど数でいえば、いちばん多いのはたぶん灰色の石だ。縞もない。光りもしない。誰も拾わない。あの灰色の一個に、名前はあるのか。
早見表のすぐ後に、20種の一覧を表にした。「透明な石」「縞模様の石」「キラキラする石」は詳しい記事が別にあるので、要点だけにする。「緑・赤・黒・白の石」と「重い砂・小さな結晶」は、ここで腰を据えて書く。灰色の答えは、その途中で少しずつ出てくる。

川原の石、早見表で先に見る
| 見た目 | 候補 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 透明・半透明 | 石英・水晶・方解石・長石 | 本記事内(詳しい記事あり) |
| 縞模様がある | メノウ・チャート・片麻岩・流紋岩 | 本記事内(詳しい記事あり) |
| キラキラ光る | 雲母・黄鉄鉱・石英・磁鉄鉱 | 本記事内(詳しい記事あり) |
| 緑色 | 緑色片岩・緑色岩・蛇紋岩・セラドン石 | 本記事内 |
| 赤〜茶色 | ガーネット・碧玉・鉄分を含む石 | 本記事内 |
| 黒色 | 玄武岩・磁鉄鉱・黒色頁岩 | 本記事内 |
| 白色 | 石英・長石・石灰岩 | 本記事内 |
| 砂が重く沈む | 砂鉄・ガーネット・重鉱物 | 本記事内 |
川原でよく見る石、20種の一覧
名前で引きたい人のために、砂や泥が固まった石、マグマが冷えた石、熱と圧力で変わった石、鉱物の順に並べた。川の例は、その石がよく目につく川の一例で、ほかの川に出ないという意味ではない。半分以上は、灰色か黒っぽい地味な石だ。
| 石の名前 | 色 | 見分けの一言 | よく出る川の例 |
|---|---|---|---|
| 砂岩 | 灰〜暗い灰。風化するとオレンジ | ルーペで砂粒がびっしり見える。ざらつく | 多摩川・入間川 |
| 泥岩 | 灰〜黒 | 粒が見えないほど細かく、つやがない | 多摩川 |
| 黒色頁岩 | 黒 | 薄い層ではがれやすい。玄武岩より軽い | 泥の地層を削る川 |
| チャート | 灰・赤・緑・黒 | すべすべで硬い。割れ口がガラスのように鋭い | 多摩川・入間川 |
| 礫岩 | いろいろ | 小石をセメントで固めたように見える | 各地 |
| 花崗岩 | 白地に黒いゴマ | 白・透明・黒の粒が目で見える。ざらつく | 荒川(甲府)・木津川 |
| 閃緑岩 | 白と黒が半々 | 花崗岩より黒っぽく、透明な粒が少ない | 丹沢から来る川 |
| 安山岩 | 灰〜暗い灰 | 細かい地に、白い小さな斑点が散る | 火山のある地方の川 |
| 玄武岩 | 黒〜暗い灰 | 重い。小さな穴(気泡の跡)があることも | 火山のある地方の川 |
| 流紋岩 | 白〜薄い桃色 | 溶岩が流れた筋が見えることがある | 火山のある地方の川 |
| 凝灰岩 | 薄い緑・灰・白 | 軽く、もろい。火山灰が固まった石 | 丹沢から来る川 |
| 結晶片岩(緑色片岩) | 緑・銀 | 薄くはがれ、平たい石になる | 荒川(長瀞) |
| 片麻岩 | 白と黒の縞 | 縞がうねる。ごつごつ重い | 変成岩の地帯の川 |
| ホルンフェルス | 黒〜暗い灰 | 硬い。割れ口が鋭く、叩くと高い音 | 花崗岩の近くの川 |
| 蛇紋岩 | 暗い緑〜黒 | すべすべ。蛇の皮のような光沢の模様 | 糸魚川の姫川 |
| 石灰岩 | 白〜灰 | 酢をかけると泡が出る | 石灰岩の山を流れる川 |
| 石英 | 白・無色 | ガラスのつや。硬くてナイフで傷つかない | どの川にも |
| 長石 | 白〜肉色 | 平らな面が光を返してキラッとする | 花崗岩の川 |
| めのう・玉髄 | 半透明の白・赤・黄 | ろうのようなつや。縞が出ることも | 久慈川 |
| 碧玉(ジャスパー) | 赤・茶・緑 | 光を通さない。なめらかで硬い | 久慈川 |
透明な石——濡れた状態で判断しない
川原で透けて見えた石が、家で乾かしたらただの白い石だった。誰でも一度は通る道だ。透明な石はたいてい石英で、方解石や長石も同じ顔で並ぶ。やっかいなのは水で、濡れていると白い石まで透けて見える。乾かしてから、もう一度見る。透明というだけで浮かれて持ち帰った石は、家で乾くと、たいてい黙る。硬さや割れ方まで含めた見分け方は、河原の透明な石は水晶かに書いた。
縞模様の石——縞の正体は石ごとに違う
縞のある石を拾うと、切ったらメノウが出るんじゃないかと思う。思うのは自由だ。ただ、縞の成り立ちは一つではない。空洞の中で結晶が育った縞(メノウ)、海底に積もった層(チャート)、地下深くで圧力を受けてできた縞(片麻岩)、マグマが流れながら固まった筋(流紋岩)。四つの縞を手で見分ける順番は、縞の見分け方で一つずつたどれる。
キラキラする石——光り方で正体が分かれる
川砂の中で、金色の粒が光る。手が止まる。息も少し止まる。だが、光る鉱物は一種類ではない。雲母は角度を変えると光が消え、黄鉄鉱は角ばった面で光り、石英は無色のまま光を返す。本物の砂金は、角度を変えても黄色のままだ。光る粒を拾ったら、光り方で分ける手順で金かどうかを確かめる。
緑色の石——緑色片岩・セラドン石・蛇紋岩
関東の川原で目につく緑は、多くが緑色片岩や緑色岩だ。緑泥石という緑の鉱物が色のもとで、緑色片岩は薄くはがれ、平たい石になって転がる。荒川の長瀞あたりでよく見る、あの緑の板だ。セラドン石は、火山岩のすき間に入りこむ雲母のなかまの緑で、神奈川県の相模川が有名だ。セラドンはフランス語で海の緑を指す。川で拾う緑に、海の名前がついている。
蛇紋岩も緑になるが、表面に蛇の皮のような光沢の模様が出る。一度見れば、名前に納得する。緑の石を拾うと、誰でも一瞬は翡翠を考える。翡翠は重く(比重が大きく)、硬度も高い。持った重さと、ナイフで傷がつくかどうかで分かれる。一瞬の夢は、たいていナイフの先で終わる。濡らすと青緑が立つセラドン石を拾いに行くなら、相模川で緑の石を探すから。
赤・茶色の石——ガーネットと碧玉
川底の砂が、うっすら赤く見える場所がある。ガーネット(柘榴石)の粒かもしれない。1〜3mmと小さいので、ルーペがいる。磁石には、砂鉄ほど強くはつかない。種類によっては弱く反応するので、磁石だけでは決めない。
奈良県の竹田川と兵庫県の猪名川は、ガーネットの見つかる川として知られる。竹田川の上の二上山のあたりでは、この赤い粒を「金剛砂」と呼んできた。奈良時代にはもう、この砂で玉を磨いた記録がある。明治からは、機械の部品やレンズを磨く研磨材として需要が増えた。ルーペの下の小さな一粒は、もともと磨く側の石だった。
もう少し大きな赤から茶色の石なら、碧玉(ジャスパー)か、鉄分の多い砂岩を疑う。碧玉は、光を通さない石英質の石だ。赤は酸化鉄、茶から黄色は水酸化鉄の色。どちらも、言ってしまえば鉄さびだ。茨城県の久慈川は、赤いメノウと碧玉の産地として知られる。
黒色の石——玄武岩と磁鉄鉱
黒くて重く、表面がざらついた石は玄武岩であることが多い。花崗岩地帯の川では、黒く細長い柱状の結晶(電気石)が入ることもある。黒くて磁石にくっつく粒は磁鉄鉱だ。川砂が黒っぽく見える場所には、この磁鉄鉱(砂鉄)がたまりやすい。磁石を近づけると、黒い砂がひげのように立ち上がる。見た目は地味なのに、反応だけは派手だ。
碁石の黒には、石から作るものがある。三重県熊野市の那智黒石で、岩石の名前は黒色頁岩(粘板岩と書く本もある)。金をこすりつけて質を見る試金石にもなった。光る粒の正体を確かめる側の石が、自分はまったく光らない。
黒色頁岩のような黒い石は、ほかの川でも見つかる。層状に剥がれやすく、玄武岩より軽く感じる。同じ泥が固まった石でも、色の浅いものは、つやのない灰色の泥岩として転がる。冒頭の灰色の、候補の一つ目だ。
白色の石——石英と石灰岩
白く不透明な石は、乳白色の石英か長石であることが多い。長石は平らな面(劈開面)が光を返して、キラッとすることがある。石灰岩は、酢をかけると泡が出る。石灰岩地帯を流れる川なら、角の取れた白い礫がまとまって見つかる。白い石は、川原でよく目につく。目につくのに、手に取られることは少ない。そこは、次の灰色といい勝負だ。
灰色の石——いちばん多くて、名前を呼ばれない石
さて、冒頭の灰色だ。拾って、ルーペを当ててみる。細かい砂の粒がびっしり詰まって見えたら、砂岩の線が濃い。砂岩は灰色から暗い灰色で、風化するとオレンジがかる。粒が見えないほど細かく、つやがなければ泥岩。割れ口がガラスのように鋭く、すべすべならチャートだ。
埼玉県の飯能河原では、チャートと砂岩の二つで、石全体の8割を超える。地味な石ほど、数が多い。

重い砂・小さな結晶——パンニングで分かること
川底の砂をパンニング皿(比重選鉱用の皿)ですくい、水の中でゆする。軽い砂が流れ出て、比重の重い鉱物だけが皿の底に残る。残るのは砂鉄・ガーネット、ときどき砂金だ。砂鉄は磁石で先にどけて、残りをルーペでのぞく。皿を振る時間より、のぞく時間のほうが長くなる。
[PR]この記事は広告(アフィリエイトリンク)を含みます。
皿の底に残った黒や赤の粒が何なのかは、パンニング皿の底に残るもので一粒ずつ見ていける。皿の使い方は、下の表の川ごとの記事で。
どの川に行けば、何が見つかりやすいか
| 川 | 見つかりやすい石 | 詳細記事 |
|---|---|---|
| 山宮河川公園(山梨) | 水晶 | 甲府の川に水晶はある? |
| 木津川(京都) | ガーネット混じりの変成岩(水晶はまれ) | 木津川の砂に水晶はある? |
| 猪名川(兵庫) | ガーネット | 猪名川の砂に赤い粒はある? |
| 竹田川(奈良) | ガーネット・サヌカイト | 奈良・竹田川に赤い宝石? |
| 久慈川(茨城) | めのう・玉髄 | 久慈川の河原に赤いメノウはある? |
| 相模川(神奈川) | セラドン石(緑) | 相模川で緑の石を探す |
| 多摩川(東京) | チャート・石英・砂岩 | 多摩川の足元は小さな鉱物図鑑 |
| 金辺川(福岡) | ガーネット・磁鉄鉱ほか多種 | 香春町・金辺川は鉱物の宝箱? |

川原での観察と安全
川には、海とは別の怖さがある。増水は数十分で川の顔を変える。前の日まで晴れていても、上流で雨が降れば水位は急に上がる。川に入るなら、流れの緩やかな場所を選ぶ。単独行動は避ける。これは、ほぼ毎回一人で来る私がいちばん守れていない項目だ。だから、せめて深追いはしない。ダムの下流で放流のサイレンが鳴ったら、すぐ水際から離れる。
川原の石は苔で滑る。足元は、滑りにくく足先を守れる靴がいい。長靴は水が入ると重くなって動けなくなるので、流れのある場所や深い場所には向かない。拾うことのほうは、個人が手で少し拾うぶんなら心配いらない。私有地・天然記念物・国立公園の特別地域などでは拾わない。気をつけるのは、そこだけだ。
よくある質問
Q. 濡れた石と乾いた石で、なぜ見え方が変わる?
水が石の表面の細かい凹凸を埋めて、光の乱反射を減らすためだ。濡れているときは白い石も透明感が増し、縞模様もはっきり見える。乾くと元の色に戻る。
Q. 川原の石と海岸の石は、何が違う?
川原の石は、流れてきた距離が短いぶん、角が残りやすい。海岸の石は長いあいだ波にもまれるので、たいてい丸い。海の石は、海岸で拾える石の種類一覧で色と重さから引ける。

石好き次郎から
川原の石は、上流の地質図の切れ端だ。赤い石が多ければ、鉄分を含む地層が上流のどこかにある。緑の石が多ければ、変成岩帯を流れてきたのかもしれない。地質図を広げる前に、足元の石の色を数えたほうが早い日もある。
見分け方を覚えても、名前の言えない石は残る。持ち帰って調べても、名前がつかないことがある。名無しの石ほど、なぜか手放せない。
光る粒を見ると、今でも一瞬は砂金を疑う。ほとんどは雲母か黄鉄鉱だ。がっかりした数だけ、光り方の違いを覚える。
冒頭の灰色に戻る。名前は、ある。たいていは砂岩、ときどき泥岩だ。砂が固まって石になり、山から転がってきて、また砂に戻る途中で、たまたま今日、足元で止まった。名前の言える側に、ちゃんと入る石だった。20年やって、まだこの灰色を素通りできない。

関連記事
- 河原で見つかる綺麗な石。色と模様から名前を探す図鑑——色と模様から、綺麗な石の名前を引く図鑑
- 拾った石を調べる方法|見分け方・洗い方・磨き方・保管まで完全ガイド——見分けたあとの洗い方・磨き方・しまい方まで
- 拾った石の洗い方——泥と鉄分を落として標本にする全手順——泥と鉄さびを落として、標本の顔にする
- 砂金の採り方——皿を回すと、金は残るか——皿を回して、底に金が残るかを確かめる
- 久慈川の赤いメノウを探して。茨城の川原へ——久慈川の赤いメノウと碧玉を、茨城の川原で


コメント