
久慈川の赤いめのうは、支流の玉川で拾える。本流では、白い玉髄のほうが多い。拳ほどの赤は、たぶんもう出ない。それでも、河原の砂利をかき分けると、赤みがかったオレンジ色の石が出てくる。光に透かすと、奥から赤が燃えるように透ける。
これが赤めのう(カーネリアン)だ。茨城県常陸大宮市を流れる久慈川と、その支流・玉川。関東でめのうが拾える川として、石好きのあいだでは「聖地」と呼ぶ人もいる。東京から電車で2時間。その距離に、本物の赤めのうが落ちている河原がある。
川の名前も、この赤から来た。奈良時代の常陸国風土記に、もう玉川が出てくる。赤い石が交じり、色は琥珀に似て、火を起こすのにいちばんいい。だから玉川。昔の人は、この赤を眺めるより先に、打って火を出していた。そう思うと、しゃがむ膝の痛みも少しは報われる。
めのうの生まれは、地下から上がってきた熱い水だ。地層の割れ目を通るうちに、溶けていたシリカが、ごく細かい石英の結晶になって残った。
だから、めのうは水晶の親戚にあたる。ただ結晶が小さすぎて、六角柱にはならない。そのかわりに縞ができる。六角柱をあきらめて、縞を取った石だ。
| 場所 | 茨城県常陸大宮市・久慈川本流(清流公園付近)と支流の玉川 |
|---|---|
| 駐車場 | 整備された観光駐車場なし。清流公園の駐車スペース等(農作業の車の邪魔にならないこと) |
| トイレ | 河原にはない前提で、駅で済ませておく |
| 採集可否 | 可。個人の範囲。農地・私有地の川岸は必ず許可を得る |
| 子ども向け | ○ 玉川は穏やかで子連れ向き。増水・滑りに注意 |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
採れる石・料金・地図は、記事末尾のスポット情報まとめに置いた。
なぜ久慈川にめのうがあるのか
茨城でいちばん高い八溝山(1,022m)から、この川は始まる。長さ124kmの一級河川だ。流域の常陸大宮のあたりには、昔の火山が残した岩が広がる。その割れ目や空洞にシリカが集まり、ゆっくり固まって、めのう・玉髄・碧玉になった。
久慈川がその地層を数百万年かけて侵食し続け、めのうを含む岩石を砕いて下流に運ぶ。河原に転がる石は「地層が削られた証拠」だ。上流ほど角ばった原石、下流ほど川に磨かれた丸い転石が多い。山宮の水晶と同じ仕組みだ。
3つの採集スポット——それぞれの特徴
| スポット | 場所 | 特徴 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 久慈川本流(清流公園付近) | 常陸大宮市・清流公園 | 河原が広く降りやすい。初心者向け。白〜乳白色の玉髄が中心 | ★☆☆ |
| 玉川(支流) | 常陸大宮市村田地区 | 赤・オレンジの赤めのうが採れる。「玉川」という名前が1,300年前から | ★★☆ |
| 山田川(支流) | 常陸大宮市 | 大きな石英塊と、大きめのめのうの話を聞く川。場所探しに慣れが要る | ★★★ |
初めてなら、久慈川本流の清流公園付近から入る。河原が広く、石が見やすい。赤めのうを狙うなら玉川だ。常陸大宮駅から西へ歩くと玉川に出る。田んぼの間を流れる小さな川なので、降りやすい場所を見つけて河原に入る。畦は踏まない。山田川は大きなめのうの話を聞くが、場所探しに慣れが要る。二回目以降の宿題にしておく。

アクセスと基本情報
電車なら、常磐線で水戸まで行き、水郡線に乗り換えて常陸大宮駅で降りる。駅から清流公園まで歩いて約20分、玉川までは約25分だ。車なら、常磐自動車道・那珂ICから国道118号を北西に約20分。整備された観光駐車場はない。農道沿いの空きスペースや清流公園の駐車スペースを利用する。農作業の車の邪魔にならない駐車マナーが重要。
ベストシーズンと時間帯
春(3〜5月)と秋(9〜11月)が最適だ。梅雨と台風の時期(6〜9月)は水が出やすく、降りられない日が多い。冬(12〜2月)は水が冷たくて長居できないが、草が枯れて河原がよく見渡せる。
「雨の翌日は石が動いて面白い」という声はよく聞く。ただ、それを狙って川に降りるのは勧めない。久慈川は山側の雨を集める川で、下流が晴れていても、上流の雨やダムの放流で水位が急に変わることがある。数日待って、水位が落ち着いてから行く。石は逃げない。朝の早い時間は日が低く、石の透け感がよく見える。
めのうの見つけ方——5つのコツ
① 光の向きを使い分ける。
透けを見たいときは、低い日の差すほうへ向かって歩く。めのうは半透明なので、向こうから光を受けると、縁が内側から灯ったように見える。色を見たいときは、日を背にする。赤いチャートと赤めのうは、色だけならよく似ている。最後は、灯るかどうかで分ける。
② カーブの内側の砂利だまりを見る。
めのうの比重は約2.6で、まわりの石とほとんど変わらない。特別に沈むわけではないので、狙うのは砂利ぜんたいがたまる場所になる。流れの速い直線より、川が曲がる内側の砂礫を先に見る。
③ 人の入っていない小さな河原を選ぶ。
駐車しやすい広い河原は、先に誰かが歩いている。草の伸びた小さな河原、掘り返した跡のない砂利のほうが、透ける石が残る。石が少なそうに見える場所ほど、拾われていない。
④ 赤が欲しければ、玉川へ。
支流の玉川に移ると、砂利の中に橙が混じりだす。濡れた橙は、灰色の砂利の中で、そこだけ火が残ったように見える。昔は「玉川石」と呼ばれた赤だ。
⑤ 浅い流れの中ものぞく。
くるぶしほどの浅瀬の水の中は、乾いた河原より石の色が素直に出る。半透明の石は、水の中のほうが見つけやすい。深みには入らない。足元はサンダルでなく、滑りにくい川用の靴にする。川靴をどう選ぶかは、石拾いの足元で。
採集できる石の種類と市場価値
| 石の種類 | 見つかりやすさ | 特徴 | 市場価値(目安) |
|---|---|---|---|
| 玉髄(カルセドニー)白〜乳白 | 高(★★★) | 最も多い。光を通す半透明 | ほぼゼロ〜500円 |
| 赤めのう(カーネリアン) | 中(★★☆) | 赤〜オレンジの半透明。玉川の特産 | 500〜5,000円(研磨済み) |
| 縞めのう(アゲート) | 低(★☆☆) | 縞模様入り。美しいものは希少 | 1,000〜10,000円 |
| 碧玉(ジャスパー) | 中(★★☆) | 不透明の赤茶〜緑色 | ほぼゼロ〜500円 |
| 珪化木 | 低(★☆☆) | 木が石英化した化石。木目が残る | 500〜5,000円 |
表の値段は、磨いて店に並んだときの目安だ。値札を付ける側で長く石を見てきたが、河原の玉髄に値はほとんどつかない。値が動くのは、縞のくっきりした赤と、木目の残った珪化木くらいだ。値段はつくが、拾った日の天気まではついてこない。売るために拾う川ではないと思う。値の付く石と付かない石の線は、川の石は売れるのかで正直に引いた。

袋田の滝との1日コース
袋田の滝には、「四度(よど)の滝」という別名がある。大岩壁を四段に落ちるからだ。西行が「四季に一度ずつ来なければ本当の良さは分からない」と言った、という話も残る。四回か。石拾いの口実が、あと三回できる。
久慈川の流域は茨城の奥だが、日本三名瀑のひとつ、袋田の滝(大子町)への入口でもある。午前は常陸大宮で久慈川・玉川のめのう、昼は大子町で奥久慈しゃもかりんご、午後は袋田の滝、締めは大子温泉(奥久慈温泉)。この順なら、石に興味のない連れも文句を言わない。袋田は同じ水郡線の上流側なので、川をさかのぼる順に回れる。
北関東で2日使うなら、「久慈川(めのう)→武茂川(栃木・砂金のパンニング)」という組み合わせが成立する。石の種類も探し方も変わるから、2日が長く感じない。
よくある質問
Q. 採集は無料?
無料だ。河原で手で拾うぶんに、入場料も手続きもいらない。重機で掘る、売るほど運び出す、となれば話は別で、河川法などの許可が要る。拾うのはポケットや小袋に入るぶんだけ。それが河原との普通の付き合い方だ。
Q. 子供と一緒に行ける?
行ける。玉川は田んぼの中を流れる穏やかな川で、子ども連れに向く。水位の落ち着いた春と秋の晴れ続きを選び、滑りにくい川用の靴をはかせる。濡れた橙は目立つので、子どもにも見つけやすい。
久慈川のめのうの種類と、拾ったあと
久慈川のメノウが生まれた地質と歴史
このあたりのめのうには、働いていた時代がある。北の諸沢で掘られた白いめのうは「水戸火打ち」と呼ばれ、鋼に打ちつけて火花を出す火打ち石になった。マッチが広まったあとも、農閑期の仕事として昭和50年代まで掘られたという。戦後には、ネクタイピンやカフスボタンにも加工された。火を起こした石が、背広の袖口で光った時代がある。
白いめのうと赤いめのうは、出どころが違う。北の諸沢から北富田のあたりでは、火山の噴出物が固まった岩(男体山火山角礫岩)の断層に沿って脈で入る。色は透明から白。赤からオレンジは、玉川の河原に礫として転がる。赤が欲しい人が玉川へ行くのは、石の側から見ても筋が通る。
メノウの見分け方——透過光観察のコツ
めのうかどうか迷ったら、懐中電灯で裏から照らす。めのうは半透明で光を通すので、縞や中の様子が浮かぶ。不透明なふつうの石は、暗いままだ。小さなライトが一本あれば、河原で迷う時間がだいぶ減る。
家に帰ったら、拾った石を全部並べて、もう一度ライトを当てる。河原で当たりだと思った石の何個かは、家の明かりの下で外れに戻る。逆に、ついでに拾った一個が透けることもある。河原の判定は、家でひっくり返る。
濡らすのも、見分けの手だ。乾いた玉髄は白く粉を吹いたようになり、チャートも砂岩も同じ灰色に沈む。ペットボトルの水をかけると、めのうだけが急に奥行きを取り戻す。ライトを当てるのは、そのあとでいい。
迷いやすいのは碧玉(ジャスパー)だ。同じ石英の仲間で、色も赤から茶。ただ、光を通さない。ライトを当てても縁まで暗ければ碧玉、縁がぼんやり明るくなればめのう。赤いチャートも、同じ手で振り分けられる。縞のある石の分け方は、縞模様の石の見分け方に並べてある。
久慈川メノウの色と種類
久慈川のめのうの色は、白、灰、黄、橙、赤と幅がある。赤から橙は、酸化鉄がほんの少し混じった色だ。白や灰は、混じり物の少ないシリカの色に近い。同じ河原で拾っても、帰りの袋の中はにぎやかになる。
河原のマナーと、めのうの硬さ
採集のマナーは、採りすぎない、ゴミを残さない、掘った穴は埋め戻す、の三つで足りる。割った石の破片は持ち帰るか、目立たない所に寄せる。めのうの割れ口はガラスのように鋭い。次に来た人が、裸足の子どもかもしれない。
めのうの縞は、成長の記録だ。温度、圧力、成分の変わり目が、そのまま一本ずつ線になる。木の年輪と同じで、数えようと思えば数えられる。数え終わる前に、たいてい次の石を拾ってしまうが。
めのうは硬度7前後で、ガラスより硬い。川底で何年転がっても、表面がつぶれずに丸くなっていく。久慈川の石の肌がなめらかなのは、その硬さのおかげだ。
拾ったあと——磨く、記録する、見比べる
久慈川のめのうは、磨くのに向いた石だ。タンブラー(回転研磨機)で3〜4週間かけて磨くと、曇った表面が光沢を帯び、縞模様がはっきり浮かぶ。ただ、磨く前の曇った顔も、あれはあれで拾った日の顔だ。
水郡線は、久慈川に沿って走る。車窓から河原の広さを下見できる産地は、ありがたい。私なら、石より先に、窓の外の砂利ばかり見てしまう。
久慈川で拾えるのは、たいてい親指の先ほどの小粒だ。そのかわり、透け具合がいい。ブラジルやインドの大きなめのうとは、同じ石とは思えないほど顔が違う。産地違いで並べると、そこがいちばん面白い。並べる相手は、海岸のメノウがいい。波に磨かれた丸さが、川の一個と並ぶ。
河原には、めのう以外の石も多い。赤いチャート、黒い頁岩、白っぽい花崗岩の丸石。どれも上流のどこかの山のかけらだ。めのうが出ない日は、外れの石の顔ぶれを覚えて帰る。それが、次の当たりを見分ける目になる。めのうが出ない日も、この川は手ぶらでは帰さない。
採集のあとは、茨城県立自然博物館を訪ねるのもいい。久慈川流域の地質や鉱物標本が見られ、拾った石が何者か、少し分かってくる。押川や那珂川まで茨城の河原を順に見るなら、茨城の川原の一本がある。
めのうを玉にした歴史は、火打ちより古い。60kmほど南の土浦に、古墳時代のめのうの勾玉工房の跡がある。めのう製の勾玉の工房跡としては、日本最古だ。材料は、平たくて小ぶりな河原の転石。どこの河原かまでは分からない。それでも、古墳時代の職人も河原で石を選んでいた。やることは、たぶん大して変わらない。
光にかざすと、縞がまっすぐでなく、炎のようにうねる石がある。久慈川の赤でそれに当たると、しばらく手の中で回してしまう。縞の形は一個ずつ違う。同じ顔の石は、二つと出ない。
磨く前に、割れ口を一度よく見ておく。貝殻の内側のようになめらかな曲面なら、石英の仲間だ。ざらついて粒が見えるなら、砂岩か花崗岩。めのうは割れても、ガラスのかけらに似た顔をする。
めのうを探し続けると、目が変わる。透け具合、色のむら、光の返り方。それを一瞬で見分けるようになる。何の役に立つかと聞かれると、河原でしか役に立たない。
地質図を見てから川に行くようになって、空振りが減った。これは本当に効いた。産総研の地質図は、誰でもネットで開ける。火山の岩が広がる区間に目星をつけてから、河原に降りる。
久慈川は、増水のたびに砂利が入れ替わる。「もう全部見た」と思った場所から、次の週に見たことのない石が出てくる。
石好き次郎から
久慈川のめのうは、赤い。1,300年前には、その赤が川の名前になった。火を起こすための赤が、いまは透かして眺めるための赤になった。
石仲間のおじさんは「久慈川はもう終わった」と言う。私は今年も、何個か見つけた。拳大は出ない。ただ、本当に終わった川なら、小さな赤も出ないはずだ。
終わったかどうかは、次の赤が決める。

スポット情報まとめ
| 採れる石 | めのう(縞・赤)・玉髄 |
|---|---|
| 難易度 | 初心者向け(清流公園付近) |
| 料金 | 無料 |
| Googleマップ | 地図・経路を開く |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
公式確認先
- 山方自然生態観察施設 淡水魚館|観光いばらき
- 常陸大宮市 公共施設ガイドマップ
- 常陸大宮市ふるさと文化事業|瑪瑙(火打ち石)
- 土浦市|土浦の考古学No.19「メノウの産地:玉川」(PDF)
- 大子町|【国名勝】袋田の滝・生瀬滝

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