茨城で赤めのうを拾うなら、久慈川だ。赤が多いのは、常陸大宮を流れる支流の玉川。私の石拾いは、だいたい、なりそこねの連続だ。赤いのを拾って、光に透かして、ただのチャートだと分かる。久慈川は、そういう外れの中に、本物が混じる川だ。赤い縞のめのうが河原に落ちている川は、日本では数えるほどしかない。
ただし、甘くはない。10個拾って、当たりは1個か2個。一日歩いて何も出ない日もある。そんな川に、懲りずに通う人間がいる。私もその一人だ。
久慈川・押川・那珂川と、茨城で石を拾える河原を順に見ていく。行き方、出る石、見分け方、時期。採集歴20年で覚えたことは、出し惜しみせずに書く。
途中で、拾えない山にも二つ寄る。妙見山と筑波山だ。拾えないのに寄るのは、そこを知ると川の石の出どころが読めるからだ。
茨城で石拾いができる場所一覧
| スポット名 | 採れる石 | 難易度 | 子ども向け |
|---|---|---|---|
| 久慈川(常陸大宮市)・支流の玉川 | めのう・玉髄・碧玉(赤めのうは玉川が本場) | 中級 | ○ 支流の玉川は穏やか |
| 押川(大子町) | 砂岩・チャート・石英(めのうは少ない) | 中級 | △ 川に降りる場所が限られる |
| 那珂川(水戸市・那珂市) | チャート・砂岩・石英 | 初級 | ○ 河原が広い |
| 花園川(北茨城市) | チャート・砂岩・変成岩 | 初級 | △ 渓谷は足場を選ぶ |
| 筑波山周辺 | 花崗岩・斑れい岩(見るだけ) | 観察 | ○ ケーブルカーで登れる |
| 妙見山(常陸太田市) | リチア電気石(見るだけ) | 観察 | — |
○=家族連れ向き、△=向かない、—=対象外。行き方は、川ごとの章で。赤めのうを狙う日も、まず表のいちばん上の川から歩く。
本命は久慈川と、支流の玉川。那珂川は、その前に目を慣らす準備運動の河原だ。押川は、人のいない河原で一人になりたい日の川だ。
茨城の外の河原と見比べるなら、関東の石拾いスポットから多摩川や長瀞へ渡れる。
茨城の地質——なぜ久慈川で赤めのうが採れるのか
河原に立ったら、まず上流のほうを向く。めのうの出どころは、上流の山にある。常陸大宮の北、諸沢から北富田のあたりでは、火山の噴出物が固まった岩(男体山火山角礫岩)の割れ目に、めのうが脈で入る。ただ、ここの脈のめのうは透明から白が多い。赤は、別の筋から来る。
熱水が岩の割れ目に入り、二酸化ケイ素を沈殿させた。それが冷えて固まると、めのうになる。
縞は、沈殿を繰り返した回数だ。1本の縞が1回分。何百回と重なって、やっとあの模様になる。手のひらに乗る石にしては、気の長い話だ。
赤いのは、鉄のせいだ。酸化鉄がほんの少し混じると、橙から赤になる。錆と同じ色だと思えば、覚えやすい。
赤から橙のめのうは、支流の玉川の河原に、礫になって転がる。玉川の流域では、大きな脈はまだ見つかっていない。赤い石だけが、先に川を下ってくる。
脈が風化して崩れ、川が下流まで運んでくれた。だから河原で拾える。山に登らなくていい。中年の足には、これがいちばんありがたい。
奈良時代の常陸国風土記は、この川のアユを「大きさ腕のごとし」と記す。腕ほどのアユ。釣りの話が盛られるのは、1300年前から変わらないらしい。水が澄んで川底の石まで見えるのは、今も同じだ。石を探す側には、景色より先にそこがうれしい。
久慈川——日本有数の赤めのう産地
久慈川は、電車で行ける赤めのうの川だ。めのうの話が集まるのは常陸大宮市の中流域で、JR水郡線の常陸大宮駅から歩ける範囲に、降りられる河原がある。
乾いた石は白く濁って、ただの石に見える。赤めのうは、濡れて初めて赤くなる。だから見るのは、水際の濡れている石だ。
水際では、濡れた石の色を順に見ていく。白、灰色、茶色の中に、橙が一つ混じると目が止まる。ただし、止まった目の先にあるのは、たいてい赤いチャートだ。光にかざして、縁が透けるかどうか。そこで九割が振り落とされる。
次に見るのは、流れがぶつかる場所だ。カーブの外側、大岩の下流。底の石が入れ替わりやすく、新しい石が出る。
大きさは、2〜5センチが多い。10センチを超えるものはめったにない。最初から大物を探すと、たいてい手ぶらで帰る。欲の深い目には、小さな赤が映らない。
時間は2〜4時間みておく。1時間だと、目が慣れたころに帰る時間になる。
久慈川の主なポイント4か所
常陸大宮駅から歩ける清流公園のあたりは、いちばん入りやすい河原だ。広くて降りやすい。そのぶん人も多く、週末は先客がいる。同じ姿勢で下を向いている人を見ると、少しほっとする。拾えるのは白から乳白色の玉髄が中心だ。
赤を狙うなら、支流の玉川だ。常陸大宮駅から西へ歩くと出る。本流の河原は白い石が多いが、玉川へ移ると、砂利の中に橙の粒が混じりだす。濡れた橙は、遠目には熟れた柿の種くらいに見える。それを一個ずつ、光にかざして確かめる。降りる河原三つの違いと見つけるコツは、久慈川の赤いメノウの一本で比べた。
上流へさかのぼると大子町で、袋田の滝の町だ。日本三名瀑の一つで、別名「四度の滝」。西行が「四季に一度ずつ来なければ本当のよさは分からない」とほめた、という言い伝えもある。私なら、季節ごとに来る口実にする。午前は常陸大宮で河原、午後に滝。逆にすると、河原に着くころに日が傾く。
玉川が本流に合流するのは、ずっと下の那珂市との境だ。そこから下ると、河原が広くなる。歩く距離は増えるが、人は少ない。そのかわり、めのうは広い河原に散らばる。静けさと数の両方は、なかなか手に入らない。
地図を出して、本流と支流がぶつかる場所を探す。合流点は水の流れが変わり、石が溜まる。
久慈川のめのう——見分け方3つのポイント
めのうと普通の石の違いは、3つで判断する。透明感、光沢、重さだ。
一個拾ったら、空にかざす。縁が透けたら当たりだ。厚みがあると透けないので、薄い部分を光に当てる。
次に、濡らしてみる。蝋のような光沢が出たら、めのうの顔だ。ざらつかない。
重さは、比重2.6前後。同じ大きさの砂岩より、わずかに重い。本当にわずかだ。両手に一個ずつ載せて首をかしげる姿は、はたから見ると相当あやしい。
値札をつける側から言うと、値がつくのは赤だ。橙、黄、白の順に下がる。縞がくっきりしていれば、もう一段上がる。拾う側としては、白い一個も同じくらいうれしいのだが。
玉髄も混じる。めのうと同じ二酸化ケイ素だが、縞がない。均質で、蝋のような光沢がある。どちらも拾う価値はある。
よくある間違い——チャートとの混同
チャートは、めのうと同じ二酸化ケイ素だ。だが光を通さない。
違いは、生まれにある。めのうは岩の割れ目で熱水から育ち、微細な石英が層になる。チャートは放散虫の殻が海の底に積もって固まった。同じ成分でも、片方は割れ目育ち、片方は海の底育ちだ。
赤いチャートを赤めのうと間違える人は多い。私も最初はそうだった。
碧玉(ジャスパー)も紛らわしい。めのうと同じ成分だが、不純物が多く不透明になる。これも光を通さない。

押川——大子町の穴場
押川は、大子町を流れる久慈川の支流だ。
川幅が狭く、河原も小さい。めのうの話は、常陸大宮側ほど聞かない。そのかわり、砂利がよく洗われて、石の色が素直に見える。灰色の砂岩、黒っぽいチャート、たまに白く透ける石英。ここで本流の石の顔ぶれを覚えておくと、下流で迷わない。
荒れていないのもいい。久慈川の有名な河原は週末に人が入るが、押川は誰もいない日がある。私はたいてい一人で拾うので、この静けさがありがたい。
常陸大子駅から車で15分ほどだ。駐車スペースは限られる。路上駐車はしない。
川に降りる場所も限られる。無理に斜面を降りない。転落すれば、誰も気づかない。
那珂川——初心者向けの河原
那珂川は、河原が広い。この川は栃木から茨城へ流れる。栃木側の支流・武茂川では砂金が出る。茨城側では、チャートや石英、砂岩が多い。那珂川の河原の石の顔ぶれは、那珂川の一本にまとめた。武茂川の砂金を含めた栃木側の河原は、栃木の清流で石を探すが入口になる。
那珂川の河原は、灰色の砂利で埋まる。角の取れた丸い石がそろっていて、しゃがむ場所に困らない。白く光るのは石英、濡れて黒く艶の出るのはチャートだ。色の数が少ないぶん、一個ずつの顔がよく見える。
水戸の街の北側を流れていて、駅からも遠くない。那珂市・水戸市あたりの河原は、広くて歩きやすい。
チャートも多い。赤と緑。ここで何度でもめのうと間違えておけば、久慈川で間違えずに済む。なりそこねを、先に見飽きておく練習だ。
花園川——北茨城の変成岩
花園川は、めのうの出ない川だ。それを、わざわざ歩く。北茨城市を流れ、阿武隈山地の南端にかかる川だ。
その代わり、阿武隈山地の変成岩が拾える。久慈川では出ない石だ。めのう目当てなら外れの川だが、赤ばかり追って疲れた目には、ちょうどいい口直しになる。
花園川の石は、手に乗せると平べったい。久慈川のころころした石と比べると、形からして違う。縞の向きに薄くはがれるのが、変成岩の癖だ。めのうの川から来ると、石の重さまで違って感じる。
JR常磐線・磯原駅から車で20分ほど。花園渓谷という景勝地があり、紅葉の時期は人が来る。そのころは、足元より頭上を見ている人のほうがずっと多い。
妙見山——日本を代表する電気石の産地(採集禁止)
茨城の「県の石」の鉱物は、拾えない山にある。常陸太田市の妙見山のリチア電気石(トルマリン)だ。紅、青、緑と色が多く、柱の形の結晶で出る。リチウムを含む珍しい鉱物で、国内の産地は数か所しかない。露頭は市の天然記念物なので、ここは見るだけ。拾えない石が県の代表。石好きとしては、少しだけ悔しい。
電気石は、熱すると電気を帯びる。押しても電気が出る。石のくせに、ずいぶん器用だ。
筑波山——花崗岩と斑れい岩の境界
筑波山は、火山のような顔をして、火山ではない。地下でマグマが固まったまま、地上に出られなかった。火山のなりそこねだ。なりそこねの山となら、私は話が合う。
山頂のあたりは、硬い斑れい岩。そのまわりを、削られやすい花崗岩が取り囲む。やわらかいほうが先に削られ、硬いほうが頂上に残った。
登山道から岩を眺めて歩く。斑れい岩から花崗岩へ、どこで切り替わるのか。境目を探しながら登れば、きつい坂も少しはまぎれる。
拾った赤めのうをどうするか
家に帰ったら、まず洗う。ブラシと水だけで、洗剤は使わない。泥がこびりついた石は、一晩水に浸けておく。
乾かすと、色が沈む。河原であれほど赤かったのに、と誰でも一度はがっかりする。これが普通だ。
色を戻すには、磨くしかない。耐水ペーパーで、400→800→1500番の順に削る。番手を飛ばすと、傷が残る。水を使う理由まで含めて、手磨きのコツで一度通しておく。
めのうは硬度7。石英と同じ硬さだから、磨くのに時間を食う。1個に半日かかることもある。拾った時間より磨く時間のほうが長い石も、珍しくない。
仕上げに、酸化セリウムで磨く。ホームセンターで買える。これで蝋のような光沢が出る。研磨の手順はめのうを磨く手順に書いた。
磨いてはじめて、中身が分かる。拾った時点では、拾った本人にも分からない。だから、やめられない。
茨城で拾っていい場所と、川に入る前に
河原で、趣味の石を少し拾う。これに手続きはいらない。川は、誰でも使える場所だ。拾わないのは二か所だけ。妙見山のペグマタイトの露頭は常陸太田市の天然記念物で、筑波山は国定公園の中だ。どちらも見るだけにする。
あとは私有地。柵や看板があれば入らない。それさえ守れば、河原はたいてい黙って石を拾わせてくれる。
季節と水量の確認
狙い目は、10月から4月だ。渇水期で、川床が広く出る。石が見える。
夏は水量が多く、拾いたい川床が水の下に沈む。
国土交通省の「川の防災情報」で水位が見られる。家を出る前にスマホで一度開く。これだけは面倒がらない。
増水のあとは川床の石が動く。拾う側には、正直おいしい。ただ、何日たったかでは決めない。上流の雨と今の水位を見て、川が落ち着いた日に入る。石は逃げない。逃げ遅れるのは、いつも人間のほうだ。
必要な道具と服装
要るのは、軍手、袋、ルーペ(10倍)、濡れてもいい靴だ。ハンマーは要らない。河原の石を割る必要はない。道具の選び方は、石拾いの道具の一本で比べられる。
ルーペは、10倍前後のアクロマートを選ぶ。安すぎるものは周辺がぼやけて、中心しか見えない。
着替えを車に置く。水際を歩けば、どうせ濡れる。冬の濡れは、帰りの車で骨まで冷える。
飲む水とは別に、石にかける水を一本持つ。水際から離れた場所で見つけた石も、ひとかけすれば正体が出る。
クマ・マムシ・スズメバチ・マダニ——危険生物への備えと装備は石拾いと危険生物の記事に全部まとめた。出発前の5分で読める。石の話は聞き流してかまわない。安全の話だけは、読んでから出かける。
茨城での石拾いに関するよくある質問
Q. 子どもと行ける?
A. 行ける。支流の玉川は田んぼの中を流れる穏やかな川だ。本流は流れの速い所があるので、目を離さない。
Q. 茨城に慣れたら、次は?
A. 栃木の武茂川で砂金か、群馬の神流川で変成岩。同じ関東で、違う石が出る。

拾った石の名前が気になったら、川原で拾える石の種類一覧で見当をつける。
茨城の石は川原だけではない。笠間の稲田の白い花崗岩は、東京駅を作った石・稲田石になった。
石好き次郎から
久慈川で拾う赤の大半は、なりそこねだ。割に合わないのは、分かったうえで通う。濡れた石に赤い縞が走った瞬間のあの感じは、ほかの石では埋まらない。
茨城は派手な県ではない。翡翠は出ないし、石の名所として名前が挙がることも少ない。ただ、赤めのうがある。私には、それで十分だ。

公式確認先
料金や開いている日、道の具合は変わる。下は、書くときに開いた公式のページだ。
久慈川・玉川
久慈川・袋田の滝・筑波山・妙見山
最終公式確認:2026年10月9日



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