東京の川に金はある?多摩川と甲州金の痕跡を追う

多摩川上流・丹波川の風景

東京の川に金はある、と言っていい。ただし半分は山梨の話だ。多摩川は山梨の笠取山から東京湾まで、およそ138キロ流れる。砂金の話が聞こえるのは、そのいちばん上、県境の向こうの丹波川の一帯ばかりだ。東京の下流の河川敷で揺って金に会えた、という話は、まず聞かない。

私のホームは多摩川だ。下流で石を拾い続けてきた。その同じ川の上流、丹波川の砂には金が混じる。金のほうは、私のいる下流まで降りてきてくれない。

楽ではない。金は米粒より小さく、半日で数粒の日も普通にある。時給で考えたら、すぐ帰りたくなる量だ。ただ、この金には戦国の歴史がおまけでついてくる。

東京の街を流れる川に金、と聞くと冗談に聞こえる。だが金は、街から来るのではない。山から来る。多摩川の水源は山梨の深い山で、その山がかつて金を抱えていた。その森を、東京都の水道局が明治の終わりから守り続ける。蛇口の水と丹波川の粉金は、同じ山から下りてくる。

どこで採れるか、なぜ上流だけか、採り方と決まりまで、順に書く。金は少ない。話は多い。

石好き次郎
丹波川は、奥多摩湖をさらに越えた先だ。いつもの多摩川も、上へたどれば川幅が細り、水が冷たくなる。見慣れた一本の川に、まだ知らない顔がある。
場所山梨県丹波山村・丹波川(多摩川の上流部)
駐車場道の駅たばやま(丹波山村)が目安
トイレ道の駅たばやま
採集可否条件付き可。河川の自由使用の範囲・少量まで。上流部は秩父多摩甲斐国立公園の区域に注意し、掘削はしない
子ども向け△ 山の川。水が冷たく流れが速い
最終確認日2026年7月

採れる石・料金・地図の詳細は、記事末尾のスポット情報まとめに置いた。

目次

多摩川で砂金が採れる場所——上流の丹波川

砂金が採れるのは、多摩川の上流部だ。奥多摩湖より上、山梨県丹波山村を流れるあたりで、多摩川は丹波川と名前を変える。源流に近く、山から崩れた金が川に入りやすい。東京の川と言いながら、金のある所は県境を一つ越えた先にある。下流で拾える石の顔ぶれは、多摩川の鉱物図鑑で河原ごとに並べた。

丹波川は水が澄み、底の石まで見える。下流のゆったりした流れを見慣れた目には、別の川に映る。

エリア砂金特徴注意
上流(丹波川・奥多摩)出る源流に近い。粉金が中心国立公園の区域あり
中流(青梅〜羽村)ほぼ出ない石拾いには向く通常の河川ルール
下流(東京の河川敷)出ない散歩・観察向き採掘目的の場所ではない

表のとおり、砂金なら上流一択だ。上流には国立公園がかかる。入っていい場所の話は、後ろの一か所で済ませる。

丹波川へは、奥多摩湖の奥から国道411号で山梨側へ向かう。都心からは車で二時間ほど。気軽な散歩の距離ではなく、半日つぶす覚悟の遠出になる。そのかわり人が少ない。聞こえるのは、水の音と皿の音くらいだろう。白状すると、私はまだ丹波川で皿を揺ったことがない。東京から近い川なのに、上流の金は人の話でしか知らない。少し情けない。

なぜ多摩川の上流に金があるのか——甲州金と黒川金山

多摩川上流の金は、山の話にさかのぼる。この一帯には、武田氏の時代の金山があった。いちばん名が通るのが、甲州金を支えた黒川金山だ。

金は、石英の脈に含まれることが多い。黒川金山の金も、白い石英の脈に伴っていた。その石英が砕けて沢に入り、金だけが重さで川底に残る。だから丹波川の砂には、白い石英のかけらと一緒に、細かい金が混じる。

上流に金が集まるのは、金が重いからだ。山で崩れた金は遠くまで流されず、源流に近い川底に残る。下流へ行くほど薄まる。東京の河川敷で揺って出ないのは、腕のせいとは限らない。金のほうが、そこまでなかなか来ない。

黒川金山の山の中には、黒川千軒と呼ばれた金山衆の町があった。彼らが山で追った金の取りこぼしが沢へ流れ、川へ出た。丹波川の皿に残るのは、その取りこぼしだ。千軒で追いかけた金の残りを、今は皿一枚で追う。勝ち目の薄さは、誰でも承知の上だ。

だから多摩川の砂金を、グラムで語っても仕方がない。皿の底の一粒の後ろに、甲州金がいる。金の重さより、背景の重さで拾う川だ。歴舟川や最上川と粒の大きさを比べるなら、日本の砂金の川へ。

石好き次郎
石仲間のおじさんは、丹波川から戻って「武田の金の残りを拾ってきた」と言った。皿に残ったのは、粉のような金がほんの少しだったそうだ。「信玄が良いところを先に取った」と真顔で言う。四百年前の相手に、本気で悔しがっていた。

砂金の採り方——多摩川の上流で揺るなら

道具は、揺り板かパン皿、砂をすくうスコップ、採った金を入れる小瓶。この三つで始められる。揺り板とパン皿の選び方は石拾いの道具で比べられる。

狙うのは、流れが緩んで砂が溜まった場所だ。カーブの内側、大岩の下流、川底が段になった所。増水のあとは水が濁り、砂も動いてしまう。水が落ち着いた晴れの日に、底の見える浅瀬から探す。

特に狙い目は、速い瀬から淵に変わる境目だ。急な流れが緩むと、運ばれてきた金がそこで落ちる。淵の入口の砂を、表面だけでなく少し掘った下からすくうといい。下の砂ほど、古くから溜まった金が混じる。

砂をすくったら、水の中で皿を回して軽い砂を流す。金は底に残る。何度も繰り返して砂を減らし、最後に皿を止めてそっと傾ける。皿の縁に金色の細い帯が残れば当たりだ。

揺るときは、皿を水面すれすれで小刻みに回す。大きく揺らさない。軽い砂と一緒に、金まで飛ぶ。水の中で砂を撫でるように、少しずつ縁から流す。腰を落とすと、手元がぶれない。

一つの砂の溜まりを揺り切るのに、慣れても10分はかかる。焦って砂を減らすと、金まで流す。二、三時間かけて数か所を回るくらいの気持ちがいい。一か所で出なければ、溜まりを変えるほうが早い。

揺りながら、河原の石も見ておく。目につくのは白い石英のかけらだ。角に赤茶のさびが付いたものがあれば、手に取って眺める。金を抱えていた脈も、こういう白い石だった。もっとも、さびた石英の大半は、ただのさびた石英だ。期待しすぎないのも、腕のうちだ。

皿の中は、最後まで地味だ。灰色の砂が減り、黒い砂が残り、その黒の端に、鈍い黄色が一点。ぎらぎら光るものはたいてい雲母で、指で押すと崩れる。金は光らない、と言ったら言いすぎだが、思うより静かな色をしている。

重砂——黒い砂が金の合図

揺っていくと、皿の底に黒い砂が残る。これは砂鉄で、金と同じく重いので最後まで残る。この黒い砂を重砂と呼び、たまり始めたら金が近い合図になる。逆に黒い砂が出ない場所は、金も期待しにくい。黒の中身は、皿の底の鉱物で一粒ずつ名前がつく。

川で金まで見分けるのは難しい。だから重砂だけを袋に取って持ち帰る手がある。家で乾かし、磁石を近づけると砂鉄はつき、金はつかない。砂鉄を抜いた残りをルーペで見る。川で急がず、家で仕上げる。

よくある間違い

黄鉄鉱を金と間違えることが多い。昔から「おろか者の金」と呼ばれてきた石だ。黄鉄鉱は角ばって光る。砂金は角がなく、押しても割れず、曲がる。皿の中で光るものを見たら、まず形を見る。派手に光るものほど、疑ってかかる。雲母か黄鉄鉱か金か、河原で迷った石はキラキラする石は金かで見分けられる。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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