相模川の高田橋で拾うなら、緑色の石だ。緑のもとは、セラドン石や緑泥石といった緑の鉱物になる。拾った石を、足元の流れにくぐらせる。乾いた肌に、青みがかった緑がじわりと浮く。当たりか、ただの苔か。まだ分からない。この半秒のために、相模川の高田橋へ来る。
砂金のように皿を揺する必要はない。河原にしゃがんで、緑の混じった石を目で探す。道具は、目だけでいい。子供でも見つけられる石だ。
この緑は、遠く丹沢の山から来ている。相模川が丹沢の緑色の岩を砕き、下流へ運ぶ。だから高田橋の河原には、緑を帯びた石が混じる。水晶も翡翠も出ない。そのかわり、この緑には相模川の顔がある。
高田橋は、水遊びやバーベキューで人気の河原でもある。肉の焼ける匂いの横で、黙って緑の石を探すことになる。はたから見れば、ずいぶん地味な遊びだ。本人は、けっこう忙しい。

| 場所 | 神奈川県相模原市・高田橋周辺の河原(相模川中流) |
|---|---|
| 駐車場 | 河川敷に広い駐車場 |
| トイレ | 相模川散策路沿いに公衆トイレあり(場所は市の散策路マップで) |
| 採集可否 | 可。個人の範囲。増水時・放流時は不可 |
| 子ども向け | ○ 最初の川に向く。ダム放流サイレンが鳴ったらすぐ水際を離れる |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
採れる石・料金・地図は、記事末尾のスポット情報まとめに置いた。
高田橋で拾える緑色の石——セラドン石
緑の入り方は、一個ずつ違う。全体が緑のこともあれば、緑の斑や脈が入るだけのこともある。相模川の看板のような石だと思う。酒匂川や箱根まで足を延ばすなら、神奈川の石の週末旅から選べる。
灰色と茶色ばかりの河原で、緑は遠くからでも目に入る。ところが近づくと、緑はたいてい一個ではない。足元に三つ、四つ。どれから拾うかで迷う。迷ううちに、最初に遠くから見えた一個がどれだったか、分からなくなる。
| 拾えるもの | 見た目 | 拾い方 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| セラドン石(緑色の石) | 青緑〜緑。斑や脈のことも | 河原で目で探す。濡らすと分かる | 低い |
| チャート・砂岩 | 灰〜茶。硬い | 目で探す | 低い |
| 石英 | 白〜半透明 | 目で探す | 低い |
本命はセラドン石だ。道具はいらず、目で拾える。ただし全体が真緑の見事な石は少ない。ほとんどは緑を帯びた程度で、その中から濃いものを選んでいく。拾うのは子供でもできる。選ぶのは、大人でも迷う。
良い石の基準は、緑の濃さと均一さだ。青みのある緑で全体が染まり、濁りの少ないものが上物になる。角の取れた丸い石は、川を長く下ってきた証拠でもある。濡らして緑がぐっと立つ石だけを、袋に入れる。
なぜ相模川に緑色の石があるのか——丹沢とセラドン石
黒い岩が、水に浸かって緑になる。セラドン石は、そうやってできる鉱物だ。海の底で噴いた玄武岩が、海水や熱水と長い時間をかけて反応し、鉄やマグネシウムが緑の鉱物へ変わった。理屈は分かる。それでも手に取ると、黒かったとはどうにも思えない。
丹沢は、もとは南の海の火山島だった。プレートに乗って北へ進み、500万年以上前に本州にぶつかる。あとから来た伊豆に押されて、いまの高さまで持ち上がった。海の底の岩が山になり、川に削られて河原に戻ってくる。話が大きすぎて、河原で考えると少し笑ってしまう。
相模川は、丹沢と北の小仏山地を分ける線に沿って流れる。その線は、昔のプレートの境目だ。ぶつかった傷跡を、石を運ぶ川がなぞる。できすぎた話だ。
丹沢の谷太郎川には、行ったことがある。山の中にいると、ここが海の火山だったとは、とても思えない。石の緑のほうが、山の昔をよく覚えている。その谷と七沢の沢の石は、七沢・谷太郎川の話で。
中世の宗教画で、人物の頬がうっすら緑がかって見えることがある。画家の失敗ではない。肌の下塗りに「緑土」という緑の絵の具を使い、上に重ねた赤みが光で褪せて、下の緑が出てきた。
その緑土の色のもとが、セラドン石とその仲間の鉱物だ。足元に転がる緑と、絵の中の頬の緑が親戚。北斎の絵が好きな身としては、絵の具の出どころの話は素通りできない。拾う手が、少し丁寧になる。
地元の博物館が、岩石の顕微鏡写真を94枚並べて、人気投票をしたことがある。相模川の河原の石で上位10枚に残ったのは、セラドン石を含む凝灰岩の一枚だけだった。光を通すと、ステンドグラスになるらしい。
河原では、ただの緑がかった石だ。翡翠のような値はつかない。そのかわり、丹沢という山の成り立ちが、そのまま石の色に出た。

セラドン石の見分け方
緑っぽい石は、河原に意外と多い。そこからセラドン石を拾い分けるのは、慣れの問題だ。ポイントは三つ。押さえてしまえば、あとは目が勝手に覚える。
見分けの基本は、緑が「表面についた色」か「石の内側の色」かを見ることだ。表面だけの緑は、たいてい苔や汚れで、爪でこすれば落ちる。石そのものの緑は、割った断面や濡れた面で内側まで続く。まずはこの一点を確かめる。色から石の名前を引くなら綺麗な石の図鑑も使える。
見分ける3つのポイント
- 色——青みのある緑。苔の緑とは違い、石の内側から出る色
- つや——濡らすと緑がぐっと濃くなる。乾くと白っぽく沈む
- 伴う石——チャートや砂岩に混じって出る。丹沢由来の礫が多い河原を狙う
よくある間違い
最初のうちは、緑がかった石を片っ端から拾ってしまう。それでいい。何度か通ううちに、青みの強い緑だけが目に留まるようになる。丹沢由来の礫が多い、灰緑色の石が目立つ河原を選ぶと、当たりの密度が上がる。目が慣れるまでが、この石拾いの本番だ。
緑の石を手に取ったら、裏も見る。表は緑でも、裏は灰色ということがよくある。もとの岩の中で、緑の粒と灰色の粒が混じり合っていたからだ。裏まで緑の一個は、それだけで当たりの側に入る。袋に入れる前に、一度ひっくり返す。その一手間で、持ち帰る石の質が変わる。
高田橋の河原——アクセスと過ごし方
高田橋の「高田」は、人の名前ではない。右岸の高峰村と左岸の田名村から、一字ずつ取った。架かって100年を過ぎた。川の両側が、仲よく一つの名前に収まる。
相模川の中流で、河原が広い。石拾いの人より、水遊びやバーベキューの人のほうがずっと多い。かつては約千二百匹の鯉のぼりが川を渡る「泳げ鯉のぼり相模川」の会場として知られた。祭りは令和元年で幕を下ろしたが、河原の賑わいは変わらない。
中流という位置がいい。上流の丹沢から運ばれた石が、ここで流れが緩んで溜まる。緑の石が集まるのは、この「運ばれて、溜まる」場所だからだ。道具は、丈夫な袋と水際で滑らない靴で足りる。細かい持ち物は石拾いの道具ガイドにまとめた。
都心からは車で一時間ほどで、河川敷に広い駐車場がある。バスなら、JR上溝駅や淵野辺駅から水郷田名方面行きに乗れば、高田橋の近くまで行ける。山奥まで行かなくても、海底火山のかけらに会える。場所は近いのに、石の話は遠い。初めての一本に高田橋が向くのは、そこだ。
石を探すなら、人の少ない朝が静かでいい。緑の石は水際に近い所で見つけやすい。子供と来るなら、浅い所で水遊びをさせながら、緑の石を一緒に探すといい。砂金のように空振りが続かないので、子供も飽きない。
広い河原は、バーベキューの人も多い。ゴミは持ち帰り、火の跡には近づかない。煙の風下で石を探しても、いいことは一つもない。
半日の使い方はこうだ。朝のうちに、人の少ない水際で緑を探す。日が高くなったら浅瀬で足を冷やし、子供がいれば水遊びに切り替える。石拾いと川遊びが、一日で両方片づく。欲張りな親には、ちょうどいい河原だ。
拾った緑色の石をどうするか
泥を落とすと、緑はもう一段濃くなる。ブラシと水で洗い、洗剤は使わない。乾くと緑が少し落ち着くので、色を見たい日は濡らして眺めるといい。棚に並べるだけでも、丹沢の緑が手元に残る。
セラドン石そのものは柔らかい。強く磨くと表面が削れる。この石は、拾ったままの姿がいちばん似合う。産地は相模川・高田橋、それに採集日を書いて添える。紙一枚で、河原の石が標本になる。
飾るなら、白い皿や明るい木の上に置くと緑が映える。何個か並べると、同じ緑でも濃淡が違う。河原で迷った理由が、それで分かる。どれも少しずつ違って、どれも捨てにくい。
放流のサイレンと、河原の決まり
河原の決まり
河原で常識的な範囲の石拾いなら、まず問題にならない。入らないのは、護岸や工事の区域と、立入禁止の表示がある所だけだ。
ダムの放流と水量の確認
相模川は上流にダムがある。放流のときは水位が急に上がる。サイレンが鳴ったら、石を置いてでも水際から離れる。雨の後や放流時は川に近づかない。緑の石は逃げない。晴れて水量が落ち着いた日に、また来ればいい。
季節と服装
季節は、春から秋がいい。夏の河原は石が焼けて、素手で触ると熱い。帽子と水を持っていく。冬は水が澄んで、水際の石の色がよく見える。ただ、濡らして確かめる石拾いなので、指先が先に音を上げる。どの季節も、水辺で子供から目を離さない。
相模川での石拾いに関するよくある質問
セラドン石は絵の具に使える?
原料にはなるが、河原で拾う量では無理だ。緑土という顔料は、セラドン石を多く含む土や岩をまとめて砕いて作る。拾った一個をすり潰すくらいなら、棚に置いて眺めたほうがいい。歴史の話として知っておくと、同じ緑が少し面白く見える。
高田橋以外でも緑の石は採れる?
相模川の中流の河原なら、丹沢から来た緑の石はあちこちで見られる。目を慣らすなら、河原が広い高田橋から。
セラドン石は珍しい石か?
珍しくはない。相模川では普通に転がる石だ。ただ、拾ってすぐ緑と分かる石がある河原は、どこにでもあるわけではない。珍しくないのに、よそにはない。この石は、そういう立ち位置にいる。
石好き次郎から
流れにくぐらせて浮いた、あの緑。海底で噴いた溶岩が水と反応した色だ。その岩でできた丹沢が本州にぶつかり、持ち上がり、崩れ、川が高田橋まで運ぶ。拾うのは一瞬だ。そこまでの道のりは、途方もなく長い。
数で言えば、緑を帯びた石は河原にたくさんある。だが、全体が濃い緑の見事な一個は、半日探して一つか二つだ。数は出るが、当たりは少ない。だから選ぶ楽しみがある。
苔むした石は、最初のうち誰でも緑の石と取り違える。苔の緑は明るくて、石の緑より元気がいい。元気のいい緑ほど、たいてい外れだ。
相模川で拾えるのは、海の火山と、ぶつかった山と、それを運ぶ川の話が、一個に全部入った緑だ。街から一時間で、それが拾える。安い。

スポット情報まとめ
| 場所 | 神奈川県相模原市・高田橋周辺の河原(相模川中流) |
|---|---|
| 採れる石 | 緑の石(セラドン石・緑泥石などの緑)・チャート・砂岩 |
| 難易度 | 初心者向け |
| 駐車場 | 河川敷に広い駐車場 |
| トイレ | 相模川散策路沿いに公衆トイレあり(場所は市の散策路マップで) |
| 子ども向け | ○ 最初の川に向く。ダム放流サイレンが鳴ったらすぐ水際を離れる |
| 料金 | 無料 |
| 採集可否 | 可。個人の範囲。増水時・放流時は不可 |
| Googleマップ | 地図・経路を開く |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
公式確認先

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