高麗川で石拾い。巾着田の河原で、飯能の山のチャートを拾う

川の砂利と小石(イメージ)

高麗川で拾えるのは、赤・緑・灰のチャートと砂岩を主役に、泥岩や緑色岩が混じる、飯能の山から下ってきた石だ。拾うなら、日高市の巾着田の西側、駐車場側の河原がいちばん降りやすい。

高麗川には、行ったことがある。ただ、河原がどんな顔だったか、何を拾ったか、季節はいつだったか。正直に言うと、覚えていない。石の名前は二十年分しっかり頭に残るのに、自分が歩いた河原のほうは平気で忘れる。我ながら、ひどい記憶の配り方だ。

石好き次郎
忘れた河原は、もう一度行けばいい。二度目なのに、初対面で会える。

この記事に、私の思い出話は出てこない。かわりに、川を一本たどる。石がどの山で生まれて、巾着田のどこに並び、どこで荒川に入るか。埼玉の川を広く見るなら埼玉の川原で美しい石を探すが入口で、ここは高麗川だけを一本深く掘る。

目次

高麗川で拾える石

坂戸の城西大学の近くで高麗川の河原を調べた報告には、直径10センチを超えるチャート、珪化木の入った泥岩などの堆積岩、それに変成岩が出たとある。チャートと泥岩は、上流の飯能の山の地質とよく合う。変成岩がどこから来たかは、報告には書かれていない。巾着田の河原で手に取る石も、おおむね次の表に収まる。

石色・見た目どこから来たか見分けの手がかり
チャート赤・緑・灰・黒。すべすべ飯能の山の付加体(深い海に積もった放散虫の殻)硬く、ナイフで傷がつかない。割れ口が鋭い。大きいものは10センチを超える
砂岩灰〜暗い灰。風化するとオレンジがかる付加体の砂岩・砂岩と泥岩の互層ざらつく。ルーペで砂粒がびっしり見える
泥岩灰〜黒。つやがない付加体の泥岩粒が見えないほど細かい。珪化木の入ったものの報告がある
緑色岩暗い緑・濃い緑、ときに赤紫や暗い赤付加体の中の海底火山の溶岩や凝灰岩緑でも縞がなく、薄くはがれない。ずんぐりした塊
石灰岩白〜灰緑色岩に伴う岩塊酢をたらすと泡が出る。ナイフで傷がつく

どの石がどれだけ多いか。高麗川の礫の割合を数えた資料には、今回当たれなかった。多い少ないは、手で確かめるしかない。石灰岩も、上流の山にあることは確かだが、河原にどれだけ混じるかは分からない。

赤いチャートだけが目当てなら、乾いた石を見ても始まらない。水際の濡れた石から見ていく。表に入らない石が出たら、色から川原で拾える石の種類一覧で引く。

緑の石は、片岩か緑色岩か

高麗川で緑を見つけたら、まず割れ方を見る。はがれずに、ずんぐりと丸くなっていれば緑色岩を疑う。薄い板にはがれて、表に縞が走るなら結晶片岩。長瀞の岩畳をつくる、あの緑の仲間だ。

飯能の山には、海底火山の溶岩や凝灰岩が付加体の中に厚く挟まる。高麗川の緑は、こちらの生まれが本筋になる。長瀞の片岩は荒川の谷の石で、高麗川の水はそこを通らない。高麗川で片岩らしい緑を拾ったら、どこから来たかを考える楽しみが一つ増える。見比べる片岩の顔は、長瀞の岩畳で縞を見ておくと早い。

高麗川の石は、飯能の山から来る

高麗川は、飯能市の正丸峠の東のふもとに始まる。埼玉県立川の博物館の紀要はそう書く。飯能の山あいを東へ下り、日高市で大きく曲がって巾着田を抱き、坂戸市で越辺川に入る。河原の石は、この途中の山が削れたかけらだ。

飯能市の地質の資料によると、山地の中央部には、ジュラ紀の堆積岩の地層が広く分布する。名前は上吉田ユニットと住居附ユニット。泥岩、砂岩、チャート、それに赤紫から濃い緑の火山の岩が混じり、石灰岩の塊を含むこともある。

産総研のシームレス地質図で、高麗川沿いの飯能の山あい(吾野のあたり)を引くと、前期から中期ジュラ紀の付加体の混在岩と出る。付加体は、海のプレートが沈み込むとき、海の底にたまったものや海山のかけらが陸の側にはぎ取られて寄せ集まった地層だ。いろいろな石が一つの山にまとまる。

チャートは、ジュラ紀よりさらに古い

同じ資料は、上吉田ユニットのチャートから三畳紀の放散虫の化石が、泥岩から中期ジュラ紀の放散虫の化石が出ると書く。チャートのほうが古い。遠い海の底で先に積もった殻の層が、あとから泥と一緒に陸へ寄せられた順番になる。

住居附ユニットには、赤いチャートが多いともある。高麗川で赤い石によく手が伸びるなら、それは山のほうの事情かもしれない。チャートの層と片岩の縞の見分けは、河原の縞模様の石は何かで一つずつ分けた。

巾着田には、昔の礫の層がある

武蔵野大学の地質教材の報告は、高麗駅の近くの獅子岩橋の上流に、秩父古生層(秩父帯の古い呼び名)の岩や飯能礫岩層の見える露頭があると書く。巾着田についても、高麗川の蛇行でできた場所に、飯能礫の大きな露頭が広がるという。

いまの河原の礫のすぐそばに、もっと前の時代の礫が層になって出る。河原の一個が、山から下りたばかりなのか、古い礫の層から崩れて戻ったのか。そこを見分けた資料は見つけられなかった。ただ、礫の川のそばに礫の地層がある、と思って歩くと、足元の見え方が少し変わる。

巾着田の河原の歩き方

巾着田は、高麗川が長い時間をかけて蛇行してできた平地だ。日高市によれば、直径およそ500メートル、広さは約22ヘクタール。川が平地をぐるりと巻くので、同じ一日の中で、流れの速い外側と、ゆるい内側を両方見られる。

川遊びとデイキャンプができるのは、巾着田の西側の河川区域のうち、駐車場側だけだ。石を拾うのも、まずはここから。蛇行の内側は流れがゆるみ、運ばれてきた石を置いていく。外側は水が当たって深くなる。砂利が広く出た所の、水際から少し上の筋を見る。

川に入る前に、足場を先に確かめる。丸い石は乗った瞬間に転がる。濡れた石の表には、藻がのる。両手が空く袋の持ち方にして、片手はいつでも地面につけるようにしておく。

花の季節の巾着田は、人の河原になる

巾着田は、9月のお彼岸のころに咲く曼珠沙華の名所だ。管理事務所によれば、例年9月上旬から10月の第3日曜日ごろまでは河原を含めて混み合い、河原でのキャンプやバーベキューはできない。群生地は有料で、入場料は500円。周りの道も混むので、電車で来るよう案内が出る。

石好き次郎
花の季節の巾着田は、人を見に行く場所になる。石は、花が終わってからでいい。逃げない。

冬の河原と、上流の雨

いちばん落ち着いて歩けるのは、花が終わったあとの冬だ。曼珠沙華は花のあとに葉を伸ばし、2月ごろに葉が枯れるまで、巾着田を緑にする。草の引いた河原は見通しがいい。冬の装備と楽しみ方は冬の石拾いは、むしろ狙い目に書いた。

高麗川の水は、飯能の山から下りてくる。上流で雨が多かった日は、巾着田が晴れていても水は増える。前の日に雨が続いたら、河原に降りない。水が濁る、流れの音が変わる、枯れ枝が流れてくる。どれか一つでも来たら、石を置いて上がる。

高麗の駐在所だよりは、飯能と日高の市内でクマの目撃通報があると注意を出す。巾着田のまわりは開けた場所が多いが、上流の山あいへ足を延ばすなら、出かける前に地元の情報を一度見ておく。

巾着田への行き方と、拾っていい場所

項目内容
電車西武池袋線・高麗駅から徒歩約15分
駐車場普通車500円・二輪100円(1日)。午前7時〜午後5時(12月29日〜1月3日を除く)。年末年始は第1駐車場が使えない期間があり、入口の大型バス駐車場を使う
トイレ管理事務所・第1駐車場・ふれあい広場の3か所
管理事務所午前8時〜午後5時。12月29日〜1月3日は休み

決まりは、ここにまとめる。川は、散策や釣りなどで誰でも使える場所だ。河川法で許可が要るのは土石の採取で、手で数個を拾って咎められることは、まずない。巾着田の河原では、直火と宿泊のキャンプができず、鹿台橋付近から天神橋付近までは車も入れない。上流の山側は、飯能市と日高市にまたがる県立奥武蔵自然公園にかかる。その特別地域で土石を採るには許可が要る。

高麗川のほかに関東の川と浜を並べて行き先を選ぶなら、関東の石拾いスポット12選が入口になる。

高麗川の石は、越辺川と入間川を経て荒川へ

高麗川は荒川水系の一級河川だ。川の博物館の紀要によれば、坂戸市上吉田のあたりで越辺川に入り、その越辺川は川島町出丸本のあたりで入間川に入る。入間川は川越市古谷本郷のあたりで荒川に合流する。高麗川の水は、越辺川と入間川の名前を借りてから、荒川に着く。

荒川の側から見ると、合流は川越だ。荒川で石を拾うなら寄居から熊谷にかけての扇状地がいちばんで、そこは合流よりずっと上流になる。寄居や熊谷の砂利に、高麗川の石は混じらない。合流のあたりの荒川は、もう砂と細かい礫の川だ。

それでも、二つの川の石は親戚になる。荒川の上流も、秩父帯のチャート・砂岩・緑色岩の山を通る。違うのは、荒川には長瀞の結晶片岩が加わることだ。同じチャートを高麗川と荒川で拾い比べたいなら、荒川で石拾いの河原へ行く。片岩が混じるかどうかが、二つの川の分かれ目になる。

拾った石は、濡らしてから見る

家に帰ったら、まず水に沈める。河原で赤かったチャートも、乾くと灰色がかって黙る。水に戻すと、赤と緑がまた立つ。磨くかどうかは、濡らした顔で決める。

磨いて化けるのは、きめの細かいチャートだ。硬いぶん手間はかかるが、つやが出ると、乾いても濡れたときの色が残る。ひびがなく、色のむらの少ない一個を選ぶ。手で磨く順番と道具は河原の石が宝石のように光る。手磨きのコツと手順に書いた。砂岩と泥岩は、磨くより洗って眺めるほうが似合う。

石好き次郎から

高麗川は、派手な川ではない。灰色の砂岩と、硬いだけのチャートと、ずんぐりした緑の塊。水晶もガーネットも、確かな話としては出てこない。それでも電車を降りて歩いて行ける河原に、海の底でできた山のかけらが並ぶ。それだけで、行く理由になる。

赤いチャートを一個拾うと、三畳紀の海と、ジュラ紀の沈み込み帯と、飯能の山と、巾着田の蛇行が、手のひらの上で一列に並ぶ。資料を何本読んでも、この並び方は河原でしか分からない。

採集は、基本一人だ。花の季節を外した巾着田の河原は、一人で歩くのにちょうどいい。濡らして、赤が立てば袋に入れる。立たなければ、川に返す。その繰り返しで日が傾く。

石好き次郎
派手な石の出ない川だ。だから、一個の赤がちゃんと赤く見える。

公式確認先

高麗川の地質・川の流れ・巾着田の使い方・決まり・生き物は、次の資料で確かめた。

最終確認:2026年10月10日

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高麗川のチャートに目が慣れたら、同じ秩父帯の石に長瀞の片岩が混じる川へ。山を出た広い河原で拾う荒川で石拾い。長瀞で見て、山を出た河原で拾うへ。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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