荒川で石拾い。長瀞で見て、山を出た河原で拾う

河原の砂利(イメージ)

荒川で石を拾うなら、秩父の山を出た寄居から熊谷あたりまでの、砂利の広がる河原がいい。拾えるのはチャート・砂岩・結晶片岩など、秩父の山から下ってきた石で、下流へ行くほどチャートの割合が増える。

荒川は、多摩川と並ぶ私のホームの川だ。降りるのは、たいてい下流側。山を出て、平野に広がった河原のほうだ。どの河原かは書かない。扇状地の砂利の上なら、どこに降りても顔ぶれは大きく変わらない。

上流の長瀞は、岩畳で名高い。ただ、あそこは見る場所だ。拾うのは、山を出てから。ここでは荒川を上から下へ一本たどって、石がどこから来て、どこに並び、どこで砂に戻るかを書く。

石好き次郎
長瀞で縞を覚えて、山を出た河原で拾う。荒川の石拾いは、川を一本まるごと使う遊びだ。
目次

荒川の石は、秩父の山から来る

荒川の源は、埼玉・山梨・長野の境に立つ甲武信ヶ岳(標高2,475メートル)だ。秩父の山あいを深い谷で下り、長瀞、寄居を抜けて関東平野に出る。そこから東京湾まで、全長173キロになる。

河原の石は、その途中の山が削れたかけらだ。どの種類の石が、どんな大きさと丸さで、どれくらいの割合で混じるか。それが上流の地質をそのまま映す、と産総研の地質ニュースは書く。河原にしゃがむと、山の地質図を足元で読むことになる。

秩父帯——チャート・砂岩・緑色岩・石灰岩の山

荒川の上流の山の多くは、秩父帯と呼ばれる地層でできている。ジオパーク秩父の案内が挙げる顔ぶれは、チャート、緑色岩、石灰岩、砂岩と頁岩。どれも海の底や海の上でできた石だ。

チャートは、深い海に放散虫というプランクトンの殻が積もって固まった岩。緑色岩は、海底火山の溶岩が変わった緑の岩。石灰岩は、海に浮かぶ火山島のまわりのサンゴ礁などの名残だ。砂岩と頁岩は、陸から流れ込んだ砂と泥でできた。武甲山の白い山肌は、その石灰岩だ。

三波川帯——長瀞の結晶片岩

もう一つの石の出どころが、長瀞から皆野のあたりに出る三波川帯だ。地下深くで押しつぶされた岩が、縞のある結晶片岩になった。緑色の片岩は、緑泥石という鉱物の色で、薄くはがれる。

この緑の片岩を拾ったのは、私たちが最初ではない。縄文時代の石皿(木の実などをすりつぶす石の台)には、結晶片岩でできたものがある。その石材の出どころを、寄居付近の荒川沿いの緑泥石片岩の礫とみる研究がある。埼玉県立川の博物館の紀要が、そう紹介する。数千年前にも、この川の平たい緑の石を選んで持ち帰った人がいた。

つまり荒川は、海の底でできた石の山と、地下で押しつぶされた石の帯を、両方通ってから平野に出る。下流の河原の砂利は、その二つを混ぜた見本棚だ。

長瀞は見る場所、山を出たら拾う場所

長瀞では、三波川帯の岩盤が川床にそのまま出る。岩畳の縞は、ここでしか見られない大きさで並ぶ。ただし国の名勝・天然記念物で、拾えない。岩畳の歩き方と見どころは長瀞で石は拾えない。それでも岩畳へ行きたくなる理由に書いた。

長瀞で縞の見本を目に入れておくと、下流で平たい緑の石を拾ったとき、名前がすぐ出る。見るだけの場所が、そのまま下流の予習になる。上流で見て、下流で拾う。荒川は、この順番がいちばん効く。

寄居から熊谷まで——扇状地の河原

荒川は寄居で山を抜ける。坂がゆるみ、流れの勢いが落ちて、運んできた砂礫を河床に置いていく。寄居から熊谷大橋のあたりまでは、砂礫がたまり、流れの筋がたびたび変わる区間だ。

ここは扇状地だ。扇の要は、寄居から深谷の植松橋のあたり。そこから熊谷のあたりまで、扇が広がる。石を拾うなら、この扇の上が本番だ。

さらに下ると、川は台地と丘陵のあいだの低地をゆっくり流れる。河原の主役は、砂と草に替わっていく。拾える大きさの石を探すなら、熊谷のあたりまでと考えておけばいい。その先は、石より鳥を見る川だ。

下るほど、チャートが残る

荒川の礫を調べた研究には、三波川帯を横切るあたりで結晶片岩の礫が増え、下流になるとチャートが主になる、という報告がある。チャートは硬く、すり減りにくい。最後まで石の大きさで残るのは、この石だと書かれる。

片岩は薄くはがれる石なので、流されるうちに割れて小さくなる。砂岩も角から削れる。下流ほど、硬いものだけが残る。下流の河原で手に取る石がチャートばかりになるのは、たまたまではない。

荒川の下流の河原で拾える石と見分け方

下流側の礫河原で手に取る石は、ほとんどが次の五つに収まる。色だけで決めず、手ざわり・割れ方・はがれ方を重ねて見る。

石色・見た目どこから来たか見分けの手がかり
チャート灰・赤・緑・黒。すべすべ秩父帯(深海に積もった放散虫の殻)硬く、ナイフで傷がつかない。割れ口が鋭い。下流ほど多い
砂岩灰〜暗い灰。風化するとオレンジがかる秩父帯(陸から流れた砂)ざらつく。ルーペで砂粒がびっしり見える
頁岩(泥岩)灰〜黒。つやがない秩父帯(陸から流れた泥)粒が見えないほど細かい。薄い層で割れやすい
緑色片岩(結晶片岩)緑・銀。平たい板の形三波川帯(長瀞・皆野のあたり)薄くはがれる。表に縞が走る。寄居に近いほど多い
緑色岩暗い緑〜緑がかった灰。かたまり秩父帯(海底火山の溶岩)緑でも、はがれずに丸くなる。片岩との分かれ目はここ

迷いやすいのは、緑の石だ。薄い板になり、縞が見えれば緑色片岩。緑なのに、はがれずにずんぐり丸ければ緑色岩を疑う。灰色で地味な石の大半は、砂岩とチャート。ざらつくか、すべすべか。指先で分けられる。

縞のある石は、片岩の縞とチャートの層を取り違えやすい。縞の成り立ちから分ける手順は河原の縞模様の石は何かに、色ごとの候補は川原で拾える石の種類一覧にまとめた。

石灰岩は、見つかればもうけもの

秩父には、武甲山のような石灰岩の山がある。では、下流の河原にどれだけ混じるのか。そこを書いた資料は、見つけられなかった。分からないものは、多いとも少ないとも書かない。

白っぽくて、ナイフで傷がつく石が出たら、家で酢をたらしてみる。泡が出れば石灰岩だ。チャートは同じ白でも傷がつかない。この二つは、硬さで分かれる。

石好き次郎
下流の砂利に片岩が混じっていたら、それは長瀞のあたりから、割れずにここまで来た一個だ。地味でも、少し丁寧に袋に入れる。

荒川の河原の歩き方——中州・増水・季節

扇状地の河原は、流れが何本にも分かれる。歩いていると、向こう岸の手前に砂利の島、中州が見える。石は中州のほうがよさそうに見える。それでも、流れを渡って中州へは行かない。浅く見えても、扇状地の流れは速い。

その流れの筋は、大水のたびに変わる。去年歩けた砂利の島が、今年は流れの下にある。地図の航空写真は、少し前の河原を写していることがある。寄居から下は両岸に堤防が続くので、まず堤防の上から河原を見渡して、降りる場所を決める。

狙うのは、水際から少し上がった砂利の筋だ。前の増水で石が入れ替わった場所は、表面に泥や藻の膜がまだ付いていない。濡れた石から見ていくと、色の違いが早く分かる。乾いた石は、どれも同じ灰色に見える。

川に入るなら、先に足場を確かめる。丸い石は、上に乗ると転がる。足元は、濡れても脱げない水陸両用のシューズで足りる。シューズで迷ったら、川の足元の話を一度見ておく。

上流の雨とダム

荒川の上流には、二瀬ダム・浦山ダム・滝沢ダムがある。秩父の山で雨が降れば、下流が晴れていても水は増える。前の日に雨の多かったときは、河原に降りない。水かさが増えてきたら、石を置いてでも上がる。

石好き次郎
河原で一番こわいのは、晴れた日の増水だ。山の雨は、こちらの空には映らない。空が青くても、水が濁ってきたら上がる。

夏の熊谷と、冬の河原

熊谷は、夏の暑さで名の知れた町だ。木陰のない礫河原は、照り返しで足元から焼ける。夏は必ず帽子をかぶる。それでも、夏の昼の河原は長くいる場所ではない。行くなら朝の早いうちに切り上げる。

荒川の下流側がいちばん歩きやすいのは、冬だ。草が枯れて、河原の端まで見渡せる。雨の少ない季節で水が引き、ふだん流れの下にある砂利の筋まで歩ける。冬の河原の装備と楽しみ方は冬の石拾いは、むしろ狙い目に書いた。

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石好き次郎の見立て
手袋は、行く場所で変える。指が思うように動かない手袋は、私は好きじゃない。水に濡れる河原や浜では、防水で、内側に保温の層があるものを使う。水の無い所なら、もっと薄手でいい。冬の水は、手袋をしていても長くは触らない。

行き方の例と、拾っていい場所・いけない場所

荒川の下流側は、両岸に堤防が続き、ところどころに河川敷の公園がある。たとえば熊谷市の荒川大麻生公園は、荒川左岸の河川敷に広がる県営公園だ。広さは166.7ヘクタール。野鳥の森と野草の広場があり、扇状地の先に近い。行き方は、公式確認先の県の公園案内で見る。

寄居の側なら、かわせみ河原が石拾いの河原として知られる。そこは寄居・かわせみ河原で石探しで別に書いた。降りる河原は、ここと決めなくていい。堤防の上から見渡して、砂利が広く出ている所を選ぶ。扇の上なら、顔ぶれは大きく変わらない。

決まりは、ここにまとめる。長瀞は国の名勝・天然記念物で、岩畳だけでなく川岸も含めて拾えない。寄居の玉淀も、埼玉県の名勝だ。この二か所は、見るだけにする。それ以外のふつうの河川敷は、散策や釣りと同じく誰でも使える場所だ。河川法で許可が要るのは土石の採取で、手で数個を拾って咎められることは、まずない。

埼玉のほかの川、入間川のことは埼玉の川原で美しい石を探すに並べた。荒川の支流の高麗川は、巾着田の河原の話を一本の記事にした。関東全体から選ぶなら関東の石拾いスポット12選が入口になる。

拾った石は、濡らしてから磨く

家に帰ったら、まず水に沈める。河原で濡れていた石は、乾くと灰色に戻って黙る。水に入れると、チャートの赤や片岩の緑が、河原で見た色に戻る。磨くかどうかは、濡らした顔で決める。

磨いて化けるのは、きめの細かいチャートだ。硬いぶん手間はかかるが、つやが出ると濡れたときの色が乾いても残る。砂岩は、磨いても劇的には変わらない。片岩は、はがれる面を磨くより、縞を横から眺めるほうが石らしい。

手で磨く順番と道具は河原の石が宝石のように光る。手磨きのコツと手順に書いた。チャートを一個選ぶなら、ひびがなく、色のむらが少ないものがいい。

石好き次郎から

長瀞の岩畳は立派だ。けれど、拾えない石の前では、石好きの手は行き場がない。拾いたい日は、山を出たあとの、だだっ広い砂利の上に行けばいい。

下流の河原は地味だ。灰色の砂岩と、硬いだけのチャートが、見渡すかぎり続く。石を見に来る人は、まずいない。いるのは釣り人と、しゃがみこんで動かない中年男くらいだ。

それでいい。秩父の山の標本の引き出しを、平野に全部ひっくり返したような河原だ。海の底の石も、地下で押しつぶされた石も、同じ砂利の上に混じる。一個拾うたびに、海の石か地下の石かを分ける。分け損ねた石は、家で水に沈めてから考え直す。

採集は、基本一人だ。荒川の下流の河原は広いから、一人で歩くのにちょうどいい。持ち帰るのが灰色のチャート一個でも、それで足りる。

石好き次郎
最後まで石の形で残るのは、チャートだ。地味で、硬くて、しぶとい。河原でいちばん多い顔に、まだ飽きない。

公式確認先

荒川の地形・地質・決まり・行き方は、次の資料で確かめた。

最終確認:2026年10月9日

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荒川で目が慣れたら、埼玉のほかの川へ。高麗川のチャート、入間川の砂利まで、5か所を一枚にまとめた埼玉の川原で美しい石を探すから。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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