宮川で石拾い。御白石と同じ白い石英が、伊勢の下流の河原に転がる

白い丸石の河原(イメージ)

宮川の河原で拾えるのは、白い石英岩の丸い礫と、黒や緑の片岩、灰色のチャートや砂岩だ。拾いやすいのは、度会町から伊勢市にかけての下流で、川幅が広がって礫河原が開ける区間になる。伊勢神宮の御白石と同じ顔の白い石が、そこでは足元に転がる。

宮川の河原には、行ったことがある。ただ、どこで降りたか、何を拾ったか、季節がいつだったか。どれも、正直覚えていない。20年拾ってきて、川の名前と「行った」だけが残った。記憶はこの程度だ。

だからこの記事は、思い出では書かない。国の川の資料と、産総研の地質の報告で、宮川を上流から下流まで歩き直す。何が拾えて、どこから来て、どこで拾うか。御白石の話は、最後に短く置く。

目次

宮川で拾える石

宮川は、奈良との県境の日出ヶ岳(1,695メートル)に始まり、伊勢湾まで91キロを流れる。流域の山は、ほとんどが三波川帯と秩父帯の古い地層でできている。河原の顔ぶれも、その二つの帯の石が中心になる。

石色・見た目どこから来たか見分けの手がかり
石英岩(白い礫)白。少し透き通る肌。暗い灰色の細い筋が入るものが多い三波川帯の片岩の中の石英脈球に近い形に丸まりやすい。重さのわりに硬い。御白石の大半はこれ
メタチャート白〜灰。層の筋が見えるチャートが地下で熱と圧力を受けたもの層にそって平たく割れやすい。白くても丸くなりにくい
黒色片岩(泥質片岩)黒〜暗い灰。面が銀色に光る三波川帯(宮川の流れの3分の2が通る)薄くはがれ、平たい石になる
緑色片岩緑。平たい三波川帯横から見ると薄い層が重なる。濡らすと緑が濃くなる
チャート灰・赤・緑・黒秩父帯すべすべで硬い。割れ口がガラスのように鋭い
砂岩・泥岩灰〜暗い灰秩父帯・源流の一部の四万十帯ルーペで砂粒が見えれば砂岩。いちばん数が多い地味な石

白い礫は、灰色や黒の石のあいだに混じって見つかる。手に取ったら、まず形を見る。丸ければ石英岩の線が濃い。平たくて層の筋があれば、メタチャート(地下の熱と圧力で変わったチャート)を疑う。白い石の兄弟でも、割れ方で育ちが分かれる。

黒い平たい石の大半は、片岩のなかまだ。面が銀色に光り、端から薄くはがれる。緑の平たい石も同じ帯の生まれになる。灰色で硬く、すべすべした石はチャート。表に入らない石が出たら、色から川原で拾える石の種類一覧で引く。

石好き次郎
丸い白は、何十キロも転がってきた白だ。平たい白は、途中で割れた白かもしれない。同じ白でも、形が履歴書になる。

宮川の石は、どこから来るか

国土交通省の資料によれば、宮川の流域は、櫛田川沿いを走る中央構造線の南側にある。流域の大部分は三波川帯と秩父帯で、北側が三波川帯、南側が秩父帯に分かれる。四万十帯は、最上流のごく一部と、支流の大内山川の上流にだけ顔を出す。

上流は秩父帯、中流から下は三波川帯

宮川は、南の大台ヶ原から北の伊勢湾へ下る。帯の並びと重ねると、上流で秩父帯のチャートや砂岩を削り、中流から下で三波川帯の片岩の地帯を流れる形になる。産総研の報告では、宮川の流路のうち約60キロ、3分の2が三波川帯の上にある。

秩父帯は、海の底に積もったチャートや砂岩が、陸にくっついてできた地層だ。三波川帯は、それより深い地下で押しつぶされ、片岩に変わった地層になる。宮川の河原では、この二つの帯の石が一つの砂利に混ざる。

白い石英は、片岩の中から出てくる

産総研の内野隆之さんの報告は、御白石の起源を調べている。白石のほとんどは石英岩で、チャートは変成したメタチャートだった。もとをたどると、三波川帯の泥質片岩の中にある幅の広い石英脈と、メタチャートの岩の塊に行き着く。

秩父帯の北の縁にも石英脈やメタチャートはある。ただ量が少なく、脈の幅も狭い。宮川の白い礫の大半は、黒い片岩の中に挟まっていた白い脈が、川に削り出されたものになる。黒い石の中から、白い石が生まれる。河原の白と黒は、もとは同じ岩の中にいた。

柔らかい片岩は、転がるうちに薄く割れ、小さくなる。硬い石英岩は、丸くなりながら下流まで残る。メタチャートは層にそって平たく割れやすく、丸くなりにくい。報告は、丸くなりやすいことを、石英岩が白石に向く理由に挙げる。

石好き次郎
黒い片岩を一個、白い礫の横に置いてみる。地味な黒のほうが、白の母親だ。そう思うと、黒も袋に入れたくなる。

宮川の、どこの河原で拾うか

国土交通省の資料は、宮川を源流から河口まで四つの顔に分ける。源流と上流は、大杉谷の急な渓谷とV字谷。大小100もの滝がある。中流は河岸段丘が発達し、河口から17キロのあたりに広い礫河原と瀬と淵が続く。下流は川幅が広がり、9〜10キロのあたりにも礫河原ができる。

上流の岩の川

大台町の滝谷には、宮川上流漁業協同組合の下に、町のキャンプ指定地の河川敷がある。三重県の観光の案内は、ここを岩のあいだを縫って流れる川と書く。浅く流れのゆるい所で川遊びができ、一部に深い所もある。

上流の石は、大きく角ばる。秩父帯のチャートや砂岩が、まだ転がりきらない顔で並ぶ。白い礫を探す場所ではない。割れ口の新しいチャートを見て、宮川の石の生まれた側を知る場所だ。

中流から下流の礫河原

白い丸い礫を拾うなら、下流の礫河原だ。産総研の報告によれば、御白石を集める河原は各町の奉献団に任されていて、度会町の田間や上久具など、川幅が広く、礫が一面に積もる下流の河原が多い。伊勢御遷宮委員会も、明治のころは伊勢市から度会町の河原で拾ったと書く。

下流の砂利は、石の数が多く、粒がそろう。片岩は薄く小さくなり、チャートは角が取れ、石英岩は丸い白になる。上流で見た石の、何十キロか先の姿が並ぶ。石の変わり方を見るなら、上流と下流の両方で一つずつ拾って、並べてみるといい。

縞の入った石が出たら、層か脈かで分ける。片岩の縞と、チャートの縞と、白い石英の脈は、見た目が似ても成り立ちがちがう。分け方は河原の縞模様の石は何かに書いた。

宮川の河原の歩き方——ダムのサイレンと増水

宮川には、上流に宮川ダムと三瀬谷ダムがある。宮川ダムを管理する三重県は、放流の前にサイレンと放送で知らせる。ふつうの放流は、1分の長いサイレンが3回。もっと危ない放流のときは、15秒の短いサイレンが3回になる。

事前の放流は、天気に関係なく行われる、と県は書く。空が晴れていても、サイレンが鳴ったら川から上がる。上流の山に降った雨は、下流の晴れた河原とは関係なくやってくる。

川に入る前に、足場を先に確かめる。宮川の中流から下は、片岩の地帯を流れる。平たい石は水の中で斜めに重なり、乗った瞬間にずれる。濡れた片岩の面は、見た目よりよく滑る。

石好き次郎
晴れた日のサイレンほど、信じにくい音はない。だから先に決めておく。鳴ったら上がる。考えるのは、上がってからでいい。

河原の顔は、洪水のたびに入れ替わる

国土交通省の資料は、2011年9月の洪水のあと、河口から2.8キロより上の区間で川底の石が粗くなる傾向が出たと書く。細かい砂利が流され、大きな石が残った。大きな水が出るたびに、河原の石は並び替わる。

産総研の報告も、白い礫は大雨のたびに上流から運ばれてくると書く。御白石が20年ごとに同じ川から拾えるのは、川が石を補充し続けるからだ。前に来た河原と顔ぶれがちがっていても、それが宮川の普通になる。

冬の宮川

宮川の中流と上流は、夏はアユ釣りやカヌーの川になる。釣り人の近くでは川に入らず、離れて歩く。人が減り、草が枯れて河原が見渡せるのは冬だ。水が澄めば、白い礫は水の中でも見分けやすい。

冬は、日の高いうちに降りて、傾く前に上がる。冬の河原の装備と楽しみ方は冬の石拾いは、むしろ狙い目に書いた。

宮川への行き方と、拾っていい場所

宮川沿いには、川のほとりの公園がいくつかある。どれも公園の案内で、河原への降り口までは書かれていない。降りるのは、公園や私有地の中を荒らさずに、堤や道から無理なく降りられる所だけにする。

行き先行き方メモ
宮リバー度会パーク(度会町棚橋)伊勢市駅から三交バス「注連指」「上田口」行きで22分、「度会特別支援学校前」から徒歩約10分。車は伊勢道の玉城ICから約10分宮川の河畔の公園。駐車場378台・無料。園内は植物の採取・火気・キャンプが禁止
宮川親水公園(伊勢市小俣町元町)JR宮川駅・近鉄小俣駅から徒歩8分水遊びのせせらぎなどがある公園。駐車場80台
宮川堤(伊勢市中島・宮川町)JR山田上口駅から徒歩約15分。伊勢市駅前からバスで約7分の「度会橋」下車すぐ県指定名勝の桜の堤。駐車場あり(無料)
宮川上流(大台町滝谷)JR三瀬谷駅から町営バスで約30分漁協の下の河川敷は町のキャンプ指定地。岩の多い川で、一部深い

決まりは、ここにまとめる。源流部は吉野熊野国立公園、上流から中流は奥伊勢宮川峡県立自然公園(大台町・大紀町)、下流部の一部は伊勢志摩国立公園にかかる。公園の特別地域で土石を採るには許可が要る。宮川堤は1937年に県の名勝になった堤で、ここの石は持ち帰らない。神宮の神域の石も同じだ。それ以外のふつうの河原で、手で数個を拾って咎められることは、まずない。

三重のほかの川や浜と並べて行き先を選ぶなら、三重で石を探すが入口になる。櫛田川の片岩や、熊野の浜の那智黒も、そこにまとめた。

御白石の川としての宮川

伊勢神宮では、20年に一度の式年遷宮のたびに、宮川の白い石を新しい正殿のまわりに敷く。お白石持行事だ。伊勢御遷宮委員会によれば、各町の奉献団が宮川の流域で拾い、奉曳車や木橇に載せて沿道や川を練り、神域では一人ひとりが白い布に包んで正殿の近くまで運ぶ。2013年の行事には、のべ約22万人が加わった。

産総研の報告では、白石に定められるのは、直径3〜7.5センチの球に近い「石英系白石」だ。3センチより小さくても、7.5センチより大きくても外れる。河原に白は多くても、御白石になれる白は限られる。行事の中身と、神宮のほかの石の話は伊勢神宮と宝石——神様に捧げられた石の正体に、真珠と並べた三重の石の文化は三重の真珠と御白石に書いた。

拾った白い石は、濡らして見る

家に帰ったら、まず水に沈める。乾いた石英岩は、すりガラスのような白で黙る。濡らすと、少し透ける。伊勢御遷宮委員会が「水晶のように少し透明感のある石肌」と書く白は、この濡れた顔のほうだ。

黒い片岩も、濡らすと銀の面が立つ。緑色片岩は、緑が一段濃くなる。乾いた河原でぱっとしなかった石ほど、水の中で化ける。拾った石は、乾いた顔で判定しない。濡らした顔で決める。

石英岩は硬い。磨けば艶は出るが、手で磨くには時間がかかる。柔らかい片岩は、はがれやすく磨きには向かない。磨いてみるなら、小さな白い礫で一つ試す。手で磨く順番と道具は河原の石が宝石のように光る。手磨きのコツと手順に書いた。

石好き次郎から

宮川の白い石は、黒い片岩の中に挟まっていた脈だった。山の中では、白は脇役だ。黒い岩の割れ目に、細く入っていただけの石。それが川で何十キロも転がるうちに、まわりの黒が先に砂になり、白だけが丸く残る。

脇役が最後まで残って、正殿のまわりに敷かれる。石の世界では、ときどきこういうことが起きる。目立つ石より、しぶとい石が勝つ。

採集は、基本一人だ。宮川に次に行ったら、白い礫と黒い片岩を一つずつ拾って、並べてみる。袋には、場所と日付を書いておく。この記事は、そのとき書き直す。

公式確認先

宮川の地質・川の姿・御白石・行き方・決まり・ダムの放流は、次の資料で確かめた。

最終確認:2026年10月10日

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宮川の白と黒を覚えたら、次は三重のほかの川と浜へ。中央構造線をまたいで石が入れ替わる櫛田川や、熊野灘の丸い小石の浜まで並べた三重で石を探すへ。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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