北海道石(ほっかいどうせき)は、2023年に国際鉱物学連合に認められた新しい鉱物だ。正体は、炭素と水素だけでできた「ベンゾ[ghi]ペリレン」という有機物の結晶で、紫外線を当てると黄色から黄緑に光る。産地は北海道の鹿追町と愛別町の2か所だけで、どちらも立ち入りと採集が禁じられている。拾いには行けない。
石なのに、中身は石油や石炭と同じ仲間の分子だ。鉱物という言葉の幅が、この一個でぐっと広がる。
この記事では、北海道石が何でできているか、なぜ「光るオパール」の謎が解けたのか、どうやってできたのか、そして実物をどこで見られるかを順に書く。

北海道石とは——炭素と水素だけでできた「石」
まず、分かることを表にまとめる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み・学名 | ほっかいどうせき/hokkaidoite |
| 認められた年 | 2023年1月(国際鉱物学連合・番号IMA2022-104) |
| 正体 | ベンゾ[ghi]ペリレン(C22H12)の天然の結晶。有機鉱物 |
| 見た目 | 淡い黄色。単斜晶系の細かい結晶 |
| 紫外線での光り方 | 鹿追町産は黄色〜黄緑、愛別町産は黄緑〜青緑 |
| 産地 | 北海道の鹿追町(然別地域)と愛別町(愛別水銀鉱山)の2か所 |
| 拾える? | 拾えない(両産地とも立ち入り・採集禁止) |
世界で認められている鉱物は約6,000種ある。そのうち有機化合物の鉱物は、約65種しかない。九州大学は、北海道石を「日本における初めての有機鉱物の新鉱物」と発表した。
名前は、北海道で見つかったことに加えて、北海道の産業との結びつきや「道産子」の意味も込めて付けられた、と北海道大学の講演で紹介されている。
なぜ光る?——「光るオパール」の謎の正体
鹿追町では、2014年ごろから、紫外線を当てると光るオパールが見つかっていた。ただ、何が光るのかは分からないままだった。
調べてみると、光の主はオパールそのものではなかった。オパールの中に入り込んだ細かい黄色の結晶、つまり北海道石だった。謎の答えが、新しい鉱物だったことになる。
産地の岩に紫外線を当てると、淡い青、黄緑、朱色と、いろいろな色に光る。ただし北海道大学の記事によると、黄色以外は別の有機化合物の結晶だ。一つの岩の中に、光る分子が何種類も同居している。
中学生のときの「光るオパール」から
発見した研究者の一人は、九州大学の大学院生だった。中学生のときに、蛍光するオパールを初めて見て感動した。大学に進み、その光の正体を自分の手で突き止めた。

どうやってできた?——大昔の植物と、古い温泉
岐阜県博物館などの説明では、地下の植物の化石のような生き物由来の有機物が、マグマの熱で変わったと考えられている。それが熱い水に溶けて運ばれ、温泉として地表に湧き出し、沈殿して結晶になった。
鹿追町では、かつてあった古い温泉でできたオパールの中に、北海道石が閉じ込められた。愛別町では、水銀鉱山の跡で、辰砂(硫化水銀の鉱物)のそばの石英のすき間から見つかった。
鹿追町と愛別町の違い
| 産地 | どんな場所 | どこにあるか | 光り方 |
|---|---|---|---|
| 鹿追町(然別地域) | 火山の中の古い温泉の跡 | オパールの中に、細かい枝のような結晶 | 黄色〜黄緑 |
| 愛別町(愛別水銀鉱山) | 水銀鉱山の跡 | 石英のすき間に、多くは1mm以下の板状の結晶 | 黄緑〜青緑 |
愛別町では、先に「カルパチア石」が見つかった。コロネン(C24H12)という、北海道石と炭素が2つ違うだけの、よく似た分子の鉱物だ。調べを進めるうちに、そのそばから北海道石が出てきた。カルパチア石も青緑に光るので、二つを見分けるのは難しいことがある。
北海道石は拾える?見られる場所
拾えない。和歌山県立自然博物館の案内によると、二つの産地はどちらも立ち入りと鉱物の採取が禁じられている。鹿追町の産地は2023年9月に町の天然記念物になり、大雪山国立公園の国有林の中にある。産地の場所も、保護のため公開されていない。
実物を見るなら、展示している施設へ行く。九州大学の2023年の発表では、とかち鹿追ジオパークビジターセンター、環境省のひがし大雪自然館(上士幌町)、愛別町の施設で展示中とされていた。今も並んでいるかは、行く前に各施設に確かめる。
北海道大学総合博物館(2023年夏)や和歌山県立自然博物館(2024年春〜夏)でも、期間を区切って展示された。どちらも今は終わった。北海道の旅の途中で石の展示を回るなら、全国の鉱物・化石博物館も一緒に見ておくといい。

家で「光る石」を楽しむなら
北海道石は手に入らない。それでも、紫外線で光る石は家で楽しめる。いちばん身近なのは蛍石で、日本の産地や光らせ方は蛍石はどこで取れるかに書いた。ライトの選び方と、河原の石を照らす実験はブラックライトで光る石の記事にある。
北海道石と同じ物質は、実験室で作ることもできる。ただし、作ったものは北海道石とは呼ばない。鉱物を名乗れるのは、自然の中でできたものだけだ。
北海道で拾える石なら、話は別だ。砂金、メノウ、黒曜石。拾っていい場所は北海道で石を拾える場所にまとめている。
石好き次郎から
北海道石は、石の中に閉じ込められた有機物の結晶だ。大昔の植物が熱で変わり、温泉に運ばれ、オパールの中で光る結晶になった。地球は、生き物の残りかすまで鉱物にしてしまう。
光るオパールは、10年近く前から知られていた。答えが出るまでには、光を見て感動した中学生が大人になるだけの時間がかかった。石の謎は、たいてい急がない。
拾えない石の記事を書くのは、少しさびしい。それでも、見に行ける場所がある石は、まだいいほうだ。

公式確認先
設備・アクセス・規制など変わる可能性がある情報は、次の公式ページで確認している。訪問前に最新情報を確認するのが確実だ。
- 九州大学|プレスリリース「世界初となる新鉱物『北海道石』を発見」(2023年11月10日)(PDF)
- European Journal of Mineralogy|IMA CNMNC Newsletter 71(hokkaidoite IMA2022-104)
- 愛別町|北海道石 公表資料(PDF)
- 北海道大学 like hokudai|北海道石の講演会(光るオパール・名前の由来・有機鉱物の数)
- 和歌山県立自然博物館|北海道石の展示案内(産地の立ち入り・採集禁止)(PDF)
- 岐阜県博物館|学芸講座Q&A 日本の宝石鉱物(北海道石のでき方)(PDF)
- 日本地球惑星科学連合2023|講演要旨 SCG48-11(産状・カルパチア石)
- 北海道新聞|鹿追の産地が町の天然記念物に(動画・2023年10月21日)
最終公式確認:2026年10月19日

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