多摩川で石を拾う——東京・神奈川 完全石拾いガイド

多摩川の石拾い・鉱物採集スポット写真
石好き次郎
ここで石が拾えると言うと、たいてい半信半疑の顔をされる。私も最初はそうだった。二子玉川の駅から歩いて15分、河原にしゃがんで30分。手の中に赤いチャートと白い石英が並んだとき、東京の見え方が変わった。

東京に住んでいると、石拾いができる場所が近くにないと思いがちだ。

しかし多摩川がある。東京・神奈川・山梨の3都県を流れるこの川は、石の宝庫の山梨県を源流に持つ。奥多摩の山々から流れ出た多様な岩石が、長い年月をかけて河原に積み重なる。チャート・砂岩・泥岩・石英——それに化石まで。名前の「多摩川」には「玉」の意味が込められているという説があり、石好きたちの間では「宝の川」と呼ばれている。

東京から電車一本で行け、予約不要でいつでも行ける——これが多摩川の最大の魅力だ。仕事帰りでも週末の午前中でも、思い立ったら河原に降りられる。東京近郊に住む石好きにとって、多摩川は最も身近な「石の教室」だ。

スポット最寄り駅見つかる石特徴
丹波川(山梨・丹波山村)JR奥多摩駅からバス砂金(粉金)★武田の黒川金山由来。規制・増水の確認必須
御岳渓谷(青梅市)JR御嶽駅すぐ★観察のみ推奨国立公園区域にかかる。石の生まれる場所を見る
是政橋下(府中市)西武多摩川線・是政駅 徒歩2分チャート・石英・砂岩電車でアクセス最良。石好きの定番
立川市河原JR立川駅周辺貝化石・植物化石・砂岩上総層群が露出。化石採集スポット
二子玉川河原東急・二子玉川駅 徒歩5分チャート・砂岩・泥岩・石英都心から最も近い多摩川石拾いスポット
平井川(八王子・日野)JR豊田駅周辺多摩川水系の多彩な転石支流。本流より人が少なく静か
河口部(大田区・川崎市)石は砂に変わる石拾いの川としては終点。散歩の区間
目次

多摩川の石はなぜ多様なのか——山梨からの贈り物

奥多摩(上流)、立川・府中(中流)、二子玉川(下流)。3回に分けて行くと、同じ川で石が変わるのが分かる。私は15年、この川に通っている。上流の山の石が中流で変化し、下流で海に届く直前の状態になる——一本の川の石の変化が地質と地形の変化を反映する。多摩川はそれを体感できる日本でも希少な「地質旅行ができる川」だ。

拾った石が、どこから来たかを地図で追える。チャート・砂岩・変成岩が、それぞれどの地層から出たか。産総研の地質図Naviで確認すると、「この石は奥多摩の秩父帯から来た」という追跡が可能だ。川を遡って産地を想像する——石採集の知的な側面が多摩川では特に楽しめる。

多摩川は山梨県の笠取山(標高1,953m)を源流とし、東京湾(川崎市〜大田区)に至る全長138kmの一級河川だ。上流は奥多摩・丹沢山地の地質が複雑な変成岩・花崗岩帯を通り、中流は関東ローム層の台地を削りながら流れる。上流から下流まで全く異なる地質の石が同じ川で採集できる——これが多摩川の最大の特徴だ。

多摩川の上流(奥多摩〜青梅)には秩父帯(古生代〜中生代の変成岩・チャート・石灰岩)と四万十帯(中生代の砂岩・頁岩)が分布する。この2つの地質帯から来る石が多摩川を下るにつれて混ざり合い、東京・神奈川の中下流域で「地質標本の宝庫」を作る。フィールドを歩かなくても多様な地質の石を一か所で見られる——多摩川はその意味で「動く地質展示室」だ。

多摩川の源流は山梨県甲州市(旧・塩山市)付近の笠取山だ。山梨県は日本有数の鉱物産地——甲府水晶、黒曜石、ガーネット、トルマリンが採れる地質を持つ。その山梨の山々から削り取られた岩石が川を下り、東京・神奈川の河原に届く。

多摩川の河原に多い石の筆頭はチャートだ。チャートは放散虫など微小なプランクトンの死骸が海底に積み重なり固まった堆積岩で、奥多摩のものは約2億5,000万年前に形成された。モース硬度は7——鋼鉄(硬度5)より硬く、チャート同士を打ち合わせると赤い火花が散る。これが「火打石」の正体だ。古代から火をおこすために使われてきた石が、多摩川の河原に今も普通に転がる。

多摩川には砥石として使える流紋岩もある。古い地図では「砥山」という名の山が奥多摩にあり、かつてここで砥石が採れていた。その砕片が今も川を下り続けている。河原の石一つひとつに、生活の道具として使われた歴史が埋め込まれている。

多摩川は、1本で3つの川だ——上流・中流・下流の読み方

多摩川は全長138キロ。山の渓谷から始まり、礫の河原を経て、潮の混ざる河口で終わる。★同じ名前でも、上流・中流・下流ではほとんど別の川だ。どこで拾うかを決める前に、この3区分を頭に入れると迷わなくなる。上流の雨で下流の水位が動くことも、河原の増水と撤退判断で知っておきたい。

上流(奥多摩〜青梅)——石の生まれる場所

奥多摩の山地は、チャートや石灰岩、砂岩でできた古い付加体の岩盤だ。日原の鍾乳洞は石灰岩の証拠で、河原に転がる赤や緑のチャートの故郷もこの山になる。多摩川の石の多様さは、上流のこの地質が親だ。

ただし上流部の渓谷は、秩父多摩甲斐国立公園の区域にかかる。★拾うより「石の生まれる場所を見る」区間だと考えた方がいい。もし河原に降りるなら、その場所が公園区域か、規制のある区分かを先に確認する。

御岳渓谷のような景勝地は、歩いて岩を見るだけで十分に価値がある。巨岩と急流——中流で拾う石の「削られる前の姿」がここにある。

上流の金——武田の金山と、多摩川の砂金

そして、金の話をする。多摩川の源流部——山梨県丹波山村を流れる丹波川の上流には、武田信玄の軍資金を支えたと伝わる黒川金山があった。金山跡の谷は、今も丹波川に注いでいる。

だから多摩川水系には、砂金が流れている。愛好家の採取記録が流域ごとに残り、テレビが「多摩川で砂金探し」を特集したこともある。粉のような金だが、本物だ。武田の金と、同じ山から来た金になる。単体の深掘りは多摩川の砂金に書いた。

★ただし夢は見ないこと。採れるのは「粉金」で、専門家が見て大きめの粒でも数十円にしかならない。皿ですくう趣味の範囲は河川の自由使用と解釈されるのが一般的だが、場所ごとの規制は事前に確認する。増水時は絶対に入らない。

私も皿を振ったことがある。黒い砂の底に、動かない金色の点がひとつ残ったとき、金額の話はどうでもよくなった。パンニングを体験から学ぶなら、武茂川(栃木)の砂金採りが近道だ。

中流(羽村堰〜二子玉川)——石拾いの主戦場

羽村の堰から二子玉川あたりまでが、石拾いの本番だ。山を出た川は勾配が緩み、運んできた礫をここで下ろす。★河原に石が積もる理由は、この勾配の変化にある。

この記事で紹介する是政橋も、立川も、二子玉川も、実は全部この中流に入る。答えが中流に集中するのは偶然ではなく、川の物理だ。赤いチャート、白い石英、縞の石——色から探すなら綺麗な石図鑑が中流の相棒になる。

羽村の堰は1653年、玉川兄弟が玉川上水のために築いた取水口でもある。江戸の水道の始点と、石拾いの始点が同じ場所——私はここから下流へ向かって歩くコースが好きだ。

下流(ガス橋〜河口)——石の終わる場所

二子玉川を過ぎて下ると、川は潮の影響を受け始め、河原の礫は砂と泥に変わっていく。★正直に書くと、下流は石拾いの川ではない。石はここで旅を終えて、海の砂になる。

それでも河口まで歩く価値はある。山で生まれ、中流で拾われ、河口で砂になる——手の中のチャートの一生を、1本の川で見届けられる。拾った1個を磨いて仕上げると、その一生が机の上に残る。

是政橋下——電車で行ける多摩川石拾いの定番スポット

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石好き次郎

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