七沢と谷太郎川で石拾い。丹沢のセラドン石のふるさとを歩く

山あいの沢(イメージ)

七沢と谷太郎川で拾えるのは、丹沢の海底火山の灰と溶岩のかけらが固まった凝灰岩だ。狙いは、その中に青緑のセラドン石がにじんだ緑の凝灰岩。探すのは、大山の東のふもとの七沢と、清川村の煤ヶ谷を流れる谷太郎川の沢筋。濡らして、緑の立つ石を拾う。

丹沢の谷太郎川には、行ったことがある。相模川に下る緑の石の、ふるさとの一つにあたる谷だ。

ここでは、緑の石の「生まれたほう」を書く。下流の相模川で拾う話は、もう別に書いた。こちらは山の側。何が拾えて、どこから来て、どう歩くか。それから、ここの石がどこで相模川に入るかまで。

目次

七沢・谷太郎川で拾える石

丹沢の山をつくる凝灰岩や火山岩のなかまは、まとめて丹沢層群と呼ばれる。相模原市立博物館の説明だ。七沢と谷太郎川の河原に転がるのも、ほぼこの顔ぶれになる。灰色、緑がかった灰色、ときどき青緑。派手な色はない。

石色・見た目どこから来たか見分けの手がかり
セラドン石を含む緑色凝灰岩青緑〜緑。石の中に緑がにじむ、斑になる丹沢層群の不動尻層(地名は谷太郎川の上流)濡らすと緑がぐっと立つ。セラドン石そのものは柔らかい
七沢石(火山礫凝灰岩)灰〜緑がかった灰。粒の粗い肌丹沢層群の大沢層・谷太郎層2ミリから6.4センチほどの溶岩のかけらが、肌に粒で見える
細かい凝灰岩灰〜淡い緑。のっぺりした肌丹沢層群(火山灰が積もった層)粒が見えないほど細かい。軽くて、角が欠けやすい
火山岩(溶岩のかけら)暗い灰〜黒丹沢層群(海底火山の溶岩)重く、きめが細かい。凝灰岩より硬い
沸石白い小さな結晶七沢付近の凝灰岩のすき間ごくまれ。2〜3ミリほど。ルーペで見る

緑の混じる石を見つけたら、まず苔か石の色かを分ける。表だけの緑は、こすれば落ちる。石の中から出る緑は、濡れた面で奥まで続く。私は河原で、こすって確かめてきた。苔の緑は、指先に移る。石の緑は、こすっても残る。

灰色の石の大半は、凝灰岩のなかまだ。粒が見えれば七沢石(石材に切り出された粒の粗い凝灰岩)の側、見えなければ細かい凝灰岩の側。重くて硬い黒っぽい石は、溶岩のかけらを疑う。表に入らない石が出たら、色から川原で拾える石の種類一覧で引く。

セラドン石は、谷太郎川で出るのか

神奈川県立生命の星・地球博物館の資料は、県内の石材の産地を地図に並べる。その凡例で、セラドン石は「不動尻層の緑色凝灰岩」と書かれる。不動尻は、県の観光の案内では「谷太郎川の上流」にある。地層の名前に、この谷の奥の地名が付いている。

ただし、谷太郎川の河原でセラドン石が拾えると書いた資料には、今回当たれなかった。地層の名前と川の名前がつながるところまでは確かだ。そこから先は、自分の目で濡らして確かめるしかない。分からないことは、出るとも出ないとも書かない。

セラドン石は、海の底の火山で生まれた

丹沢は、もとは南の海の海底火山だった。フィリピン海プレートに乗って北へ進み、本州にぶつかって持ち上がった。神奈川県の資料は、その時期を約1700万年前の誕生、約500万年前の衝突と書く。

海の底で積もった火山灰と溶岩のかけらが、凝灰岩になった。その中で、黒っぽい火山の成分が水と長い時間をかけて反応し、緑の鉱物に変わる。それがセラドン石だ。成り立ちの細かい話と、下流で拾ったときの見分けは相模川で緑の石を探すに書いた。

石好き次郎
下流で拾った緑に迷ったら、山のほうの石に聞く。答えは、たいてい上流に置いてある。

七沢石——石切場のあった山

七沢の凝灰岩は、拾う石である前に、切り出す石だった。地球博物館の資料は、丹沢の東、厚木市七沢のあたりで採れる七沢石を、県内では比較的よく知られた石材として挙げる。

相模原市立博物館は、鐘ヶ嶽のまわりに残る石切場の跡と、七沢石で造られた鳥居や石の造り物を紹介する。七沢石は火山礫凝灰岩に分けられ、中の粒のほとんどは溶岩の破片だという。河原で拾う粗い肌の灰色の石と、鳥居の石は、同じ山の生まれになる。

七沢のあたりの凝灰岩には、玉ねぎの皮のようにはがれる風化がよく見られる、とも博物館は書く。崖や大きな岩の表が、丸く何枚もはがれる。河原で角の取れた石を拾う前に、まず山の岩の顔を見ておくと、石の中身の見当がつく。

ごくまれに、2〜3ミリほどの沸石が肉眼で見えることもあるという。白い小さな結晶だ。凝灰岩の割れ目やすき間をルーペでのぞく楽しみが、ここには一つ余分にある。

谷太郎川と七沢の河原の歩き方

ここは平野の広い河原ではない。山の中の沢だ。流れは細く、岩は大きく、河原は所々にしか開けない。降りられる場所で、短く拾って、早めに上がる。それくらいの気持ちで歩くのがちょうどいい。

沢の石は、角が残る。山を出てまだ遠くまで転がっていないからだ。緑の入り方も、丸く削られた下流の石より、割れ口で素直に見える。下流の丸い緑と並べると、同じ石の若いころと年寄りのころに見える。

川に入る前に、足場を先に確かめる。沢の石は、苔と水でぬめる。乗った瞬間に石が回る。両手が空く袋の持ち方にして、片手はいつでも岩をつかめるようにしておく。

沢の水は、空の色と関係なく増える

谷太郎川と、七沢を流れる玉川は、ダムを通らない川だ。谷太郎川は小鮎川の上流の沢で、宮ヶ瀬湖のある中津川とは別の筋になる。だから放流のサイレンは鳴らない。そのかわり、山に降った雨が、そのまま沢に下りてくる。

前の日に丹沢で雨が多かった日は、沢に降りない。水が濁る、流れの音が変わる、足元の石に枯れ枝が引っかかり始める。どれか一つでも来たら、石を置いて上がる。石は、次の休みにも同じ場所にいる。

ヤマビルとクマ

丹沢の湿った沢は、ヤマビルの住みかだ。神奈川県の資料では、活動期はおおむね春から秋で、特に6〜9月に多い。雨の中や雨上がりに動きが増え、3月や12月でも気温が20度を超える暖かい日は出てくる。足元から上がってくるので、靴と靴下に忌避剤を使い、裾を靴下に入れる。

ヤマビルのほか、夏の沢のブユやアブまで含めた備えは川原・海岸で刺す虫にまとめた。丹沢にはツキノワグマもいる。厚木市と清川村は、目撃の情報と注意を出している。出かける前に一度見ておく。沢では、ときどき音を立てて歩く。

冬の沢がいちばん静か

いちばん歩きやすいのは冬だ。ヤマビルがほとんど動かず、草も枯れて沢の石が見渡せる。水も澄んで、濡れた石の緑が浮く。ただし谷は日が短い。日陰の岩は朝のうち凍って、乾いた石より滑る。

冬は、日が高いうちに降りて、日が傾く前に上がる。手袋は外して石を触ることになるので、指先を休ませる時間も見ておく。冬の河原の装備と楽しみ方は冬の石拾いは、むしろ狙い目に書いた。

石好き次郎
ヒルの季節に、無理に沢へ行くことはない。石は冬でも同じ場所にいる。季節は、こちらが選べばいい。

七沢と谷太郎川の石は、どこで相模川に入るか

七沢の水は玉川になる。神奈川県によれば、玉川は七沢の大山のふもとに始まり、七沢川と日向川を合わせて厚木市の南を東へ流れ、戸田・酒井のあたりで相模川に入る。

谷太郎川の水は、小鮎川に入る。小鮎川は清川村の三峰山や辺室山のあたりに始まり、厚木の街を抜けて妻田のあたりで中津川に合流する。中津川は、金田のあたりで相模川に入る。

つまり七沢と谷太郎川の石が相模川に出るのは、厚木だ。相模原の高田橋は、それより上流にある。高田橋の河原の緑は、同じ丹沢でも、別の沢から下りてきた石だ。七沢の石の続きを下流で見るなら、厚木の河原に降りる。厚木の河原の様子は神奈川で石を探す週末旅に書いた。

上流と下流で、石の顔が変わる

山の沢では、石は大きく角ばる。緑は割れ口ではっきりし、灰色の凝灰岩が主役を張る。下るうちに、凝灰岩は柔らかいぶん早く削れて小さくなる。角が取れ、肌はなめらかになり、ほかの山から来た石に混じって数が薄まる。

だから下流で緑の石を拾うのは、砂利の中から少数派を探す遊びになる。上流では、凝灰岩そのものが主役だ。同じ石を二つの場所で拾うと、川が石に何をするかが手の中で分かる。縞の入った石が出たら、層か脈かを河原の縞模様の石は何かで分ける。

七沢・谷太郎川への行き方と、拾っていい場所

どちらも、本厚木からバスで入れる。七沢は温泉の里で、谷太郎川は清川村の煤ヶ谷の奥になる。バスは本数が少ない便もある。帰りの時刻を先に見てから出る。

行き先バスメモ
七沢・広沢寺温泉厚木バスセンター9番乗り場から「七沢温泉」行きで約35分、「広沢寺温泉入口」下車。広沢寺温泉まで徒歩約13分「広沢寺温泉」行き(約40分)もあるが本数が少ない。鐘ヶ嶽のふもと
谷太郎川・煤ヶ谷本厚木駅北口5番乗り場から「宮ヶ瀬」行き(上煤ケ谷行きも)で約40分、「煤ケ谷」下車谷太郎キャンプ場清川リバーランドは「煤ケ谷」から徒歩10分
不動尻(谷太郎川の上流)広沢寺温泉から林道を歩いて約1時間ゆるく長い上り坂。春はミツマタの群生地

車で行くなら、沢筋は止められる場所が限られる。路上には止めない。キャンプ場の駐車場や河原は、その施設の利用者のための場所だ。今回、谷太郎川で「ここから河原へ」と公に案内された降り口は確かめられなかった。降りるのは、施設や私有地を通らずに、道から無理なく降りられる所だけにする。

決まりは、ここにまとめる。厚木市と清川村の山側は、丹沢大山国定公園と県立丹沢大山自然公園にかかる。公園の特別地域で土石を採るには許可が要る。沢を奥へ詰めるほど、その範囲に近づく。どこが特別地域かは、県の「かながわの公園緑地マップ」の区域図で見られる。それ以外のふつうの河原で、手で数個を拾って咎められることは、まずない。

関東のほかの川と並べて行き先を選ぶなら、関東の石拾いスポット12選が入口になる。

拾った緑の石は、濡らして見る

家に帰ったら、まず水に沈める。沢で濡れていた緑は、乾くと白っぽく沈んで黙る。水に戻すと、また青緑が立つ。緑の石は、乾いた顔で判定しない。濡らした顔で決める。

セラドン石は柔らかい。強く磨くと、緑の部分から先に削れる。凝灰岩も粒が抜けやすく、磨いて化ける石ではない。この谷の石は、洗って、濡らして眺めるのがいちばん似合う。

それでも磨いてみたくなったら、硬い溶岩のかけらのほうで試す。手で磨く順番と道具は河原の石が宝石のように光る。手磨きのコツと手順に書いた。緑の凝灰岩は、そのまま棚に置く。

石好き次郎から

下流で拾う緑は、少数派だ。灰色の砂利の中に、ぽつんといる。だから見つけるとうれしい。山の側に来ると、緑は客ではなく地元の石になる。下流ほど目立たない。そのかわり、出どころがはっきりする。

ここに来る意味は、それだけではない。地層の名前に谷の奥の地名が付き、鳥居になった石と同じ山の石が、沢に転がる。石の名前と、場所の名前と、人が使った跡が、一つの谷にそろう。そういう谷は、多くない。

採集は、基本一人だ。沢の音しかしない谷で、灰色の石を一個ずつ濡らしていく。緑が立たなければ、戻す。立てば、もう一度こすって確かめる。地味な作業だ。下流で迷った緑の答え合わせは、結局、この地味な作業でしかできない。

石好き次郎
ここの緑は、下流で見るより少し荒っぽい。角が立って、割れ口が新しい。若い石は、正直だ。

公式確認先

七沢と谷太郎川の地質・川の流れ・行き方・決まり・生き物は、次の資料で確かめた。

最終確認:2026年10月10日

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山の側で緑の石の顔を覚えたら、今度は下流へ。丸くなって少数派になった緑を、広い河原で探す相模川で緑の石を探す。高田橋と丹沢のセラドン石へ。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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