
北海道・歴舟川は「日本最後の砂金河川」と呼ばれる川で、いまも自分の手で砂金を探せる。ただし2026年は、川に残る砂金がかなり少ない。
歴舟川(れきふねがわ)は、日高山脈のコイカクシュサツナイ岳から出て、北海道大樹町だけを流れて太平洋に注ぐ。全長64.7km。水質調査で過去に何度も日本一に選ばれてきた清流で、地元では昔から「宝の川」と呼ばれてきた。きれいな水と金。どちらの意味で呼ばれても、名前負けはしていない。
砂金採りの歴史は寛永12年(1635年)、町の海岸で始まったといわれる。約400年前だ。1日に100gも採れたというのは、昔の話だ。大きいものは1粒5g。昭和46年、最後の砂金師が引退した。川底の砂金のほうは、まだ引退していない。
| 場所 | 北海道大樹町・歴舟川(カムイコタン公園キャンプ場付近ほか) |
|---|---|
| 駐車場 | あり・約80台・無料(カムイコタン公園キャンプ場・町公式) |
| トイレ | 水洗トイレ2棟(キャンプ場内) |
| 採集可否 | 体験場での採集が基本。2026年は砂金量が少なく初心者は発見が難しいと大樹町が案内 |
| 子ども向け | ○ 小学生以上は大人と同じ体験可。幼児は保護者同伴が必要 |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
採れる石・料金・地図は、記事の終わりの「スポット情報まとめ」に一枚にした。
「日本最後」の意味——なぜ歴舟川だけ残ったのか
「日本最後」と呼ばれる背景には、明治の砂金ブームがある。北海道開拓期、日高・十勝では砂金採りが一種のゴールドラッシュになり、全国から人が集まった。150年たって、同じ川でまだ砂金が探せる。それだけで、ちょっとした事件だ。
歴舟川は、日高山脈を源とする二級河川だ。上流の日高山脈には金鉱脈(熱水金鉱床)があり、風化と侵食で生まれた砂金が川底へ運ばれ続けてきた。川が、いまも運ぶ側にいる。だからこちらも、探す側でいられる。
明治〜大正の北海道は、砂金に沸いた。空知川・十勝川・沙流川・尻別川。あちこちの川に採掘者が押し寄せた。けれど100年掘り続ければ、川にも底がある。採算の取れる砂金は、ほとんど採り尽くされた。それでもいま皿を振れる北海道の川は、北海道の3つの砂金スポットにある。
ただ、川が運ぶ量は年によってちがう。2026年のように、大雨のあとで砂金がぐっと減る年もある。「100年掘っても枯れない川」と呼びたくなるが、それは川に対して少し調子がよすぎる。
伝統の道具——「カッチャ」「ゆり板」とは何か
いまの砂金採りでは、プラスチック製のパンニング皿(黒色・直径30cm)が広く使われる。歴舟川では、伝統のゆり板を使える。道具が変わっても、川から金をすくう動きは同じだ。数百年前の人と同じ角度で腰を曲げている、と思えば、腰の痛みも少しは誇らしい。
カッチャは「唐鍬(とうぐわ)」の一種で、川底の砂礫を掘り起こすための道具だ。名前はアイヌ語から来たという説もある。柄の長さと刃の角度で効率が変わり、慣れた人は流れと深さに合わせて使い方を変える。どれだけ掘るかより、どこを掘るか。道具の名前より先に、そこを覚えたい。
ゆり板は、パンニング皿と同じ働きをする木の浅い板だ。金と砂の重さの差で、金だけを板に残す。木の色の上では金が見やすいと言われる。カッチャで掘り、ゆり板で揺る。明治の砂金師と同じ手順を、そのままなぞる。この川の砂金掘りの芯は、金より、この動作のほうにある。

体験プログラムと料金
砂金掘りは、大樹町が案内する。ただ、2026年は事情がちがった。令和7年の大雨の影響で川に残る砂金がかなり少なく、町自身が「慣れていない人が見つけるのは難しい」と案内した。インストラクター付きの体験は休止中で、再開は未定。動いていたのは道具レンタルだけで、それも9月27日で今年の受付を終えた。
採った砂金は持ち帰れる。量は自然まかせで、保証はない。それでも、粒がどれだけ小さくても、自分で川からすくった金は替えがきかない。お金に直せば微々たるもの。けれど小瓶に入れて傾けるたびに、あの川の水の冷たさまで一緒に戻ってくる。
| プラン | 内容 | 料金 | 予約 |
|---|---|---|---|
| インストラクター付き体験 | 2026年は休止中(再開時期未定) | — | — |
| 道具レンタルのみ(個人) | 道の駅コスモール大樹(7・8月はキャンプ場でも)でレンタルして自由に体験。2026年は6月20日〜9月27日(受付終了) | ゆり板500円・カッチャ500円(各税込) | 予約不要(9〜17時、道具は当日17時までに返却) |
| 砂金しおり作成 | 採取した砂金でしおりを作成(道の駅で受付) | 1枚300円 | 当日申込・17時まで |
借りられるのは道の駅コスモール大樹で、7・8月はカムイコタン公園キャンプ場でも貸し出しがあった。増水やヒグマの出没で、予告なく止まることもある。遠くから向かう日は、当日の朝に道の駅(01558-6-5220)へ電話を一本入れる。飛行機で来て空振りするのは、砂金0粒よりこたえる。
アクセスと基本情報
大樹町は「宇宙のまち」でもある。インターステラテクノロジズ(IST)のロケット打ち上げ基地がある。地球の奥から出てきた金と、地球の外へ出ていくロケット。向きが真逆なのが、なんだかおかしい。
大樹町へは、帯広駅(JR根室本線)から大樹町行きのバスで約1時間40分、車なら約1時間。起点は道の駅「コスモール大樹」が使いやすい。帯広〜様似を結ぶルートの中ほどにあって、北海道ドライブの途中に組み込める。
車なら、帯広・広尾自動車道の忠類大樹ICから国道236号を南へ約30分でカムイコタン公園キャンプ場。大樹町に鉄道は通っていない(旧国鉄広尾線は1987年に廃止)。帯広駅からのバスは本数が少ないので、車が現実的だ。
ベストシーズンと採集の条件
「雨の翌日は砂金が採れやすい」という経験則がある。2026年の歴舟川は、その逆を見せた。増水は砂金を足すとは限らない。持っていくこともある。増水直後の川はそもそも危ないので、無理に狙わず、施設の営業判断に従う。川の事情は、川のそばにいる人がいちばん知る。
ベストシーズンは7〜8月。水量・気温・晴れの3つがそろいやすく、道具レンタルもこの季節が中心になる。9月を過ぎると冷えてくる。朝夕はヒグマが動く時間だ。日が高いうちに川へ入り、日が高いうちに上がる。
砂金がたまりやすいのは、流れがゆるむカーブの内側と、川底に岩盤が出た場所の下流側。砂金の比重19.3は、ふつうの砂(2.5〜3.0)の7倍前後だから、流れが弱まるとすぐ沈む。白く泡立つ淵のすぐ下流も、昔からの狙い目だ。金は重い。重いものは、流れが楽な場所で休んでいる。
砂金採りの手順——「ゆり板」の使い方
ゆり板でいちばん大事なのは、ゆっくり、一定のリズムで揺らすこと。速く揺らすと、軽い砂と一緒に砂金まで流れる。金は重いので最後まで板の真ん中に残るが、揺らし方が荒いと行方不明になる。最初は1秒に1回くらいのゆっくりから。金色が見えたら、手を止めて確かめる。焦った手が、いちばん金を逃がす。皿を回す手つきの細かいところは、砂金の採り方で一手ずつ見られる。
目が慣れるまでには時間がかかる。最初の30分、何も見えなくてもあきらめない。黄色い光沢の粒を一度見つけると、そこからは砂の中でも目が勝手に金を探し始める。河原の石と同じで、見えるようになるまでが長い。見えるようになると、今度は見えない日のほうが不思議になる。
ゆり板の操作手順(5ステップ)
カッチャで川底の砂礫をかき取り、ゆり板に乗せる。大きな砂利をよけてから左右に揺らすと、砂鉄に混じって砂金がキラリと見える。前後左右に慎重に揺らして、砂鉄を減らしていく。仕上げは、水を少しかけて板の横を軽く叩く。不思議なことに砂鉄だけが叩いた側に寄り、砂金が残る。指を湿らせて砂金をそっと押さえ、容器に移す。
容器は自分で用意する(フィルムケースかガラスの小瓶。水が漏れないものが必須)。忘れたら道の駅で200円で買える。1回揺っても、何も出ないことのほうが多い。初めてなら、1日で数粒見つかれば上出来だ。0粒の日でも、腕と腰はきっちり疲れる。
ヒグマ対策——金より先に、クマ
北海道で外の採集をするなら、ヒグマ対策は省けない。歴舟川の流域は日高山脈のふもとで、ヒグマの多い地域だ。熊鈴は常に鳴らし、熊スプレーはすぐ取り出せる位置に下げ、複数人で動く。早朝と夕方は避ける。この4つが最低限になる。
熊スプレーは、持つだけでは足りない。使える距離(約3〜5m以内)、風向きの確かめ方、安全ピンの外し方。練習用で手順を体に入れておけるスプレーもある。腰に下げていても、使い方を知らなければ、ただの重たい缶だ。ハチやマダニまで含めた備えは、石拾いの現場にいる危険生物で。
インストラクター付きの体験が休止中なので、いまは安全も自分たちで見る前提になる。川に入る前に、ヒグマの出没情報を大樹町や北海道警察のページで確かめる。町は、歴舟川の奥地を「ヒグマの聖地」と呼んで、入らないよう求める。金より先に、クマの情報。この順番だけは逆にしない。

ナゲットの夢と、米粒の現実
歴舟川の砂金は、まれに「ナゲット(塊金)」が出ることで知られる。ふつうの砂金は砂粒ほど(0.1〜1mm)だが、ナゲットは数mm〜数cm。この川でも、最大で1粒5gの砂金が出たと伝わる。体験で会えるのは、ほぼ砂粒のほうだ。ただ、ナゲットが出た川で皿を揺ると思えば、手つきが少しだけ真剣になる。
砂金の値打ちは、産地の記録で変わる。「北海道歴舟川産・自己採集」と書き添えた砂金は、同じ品質でも産地不明のものより大事に扱われる。0.01gでも、どこの川の粒かは書いておく。産地を書くという石好きの習慣は、砂金でもいちばん効く。書かなかった粒は、一年もすれば、どこの川の粒だったか分からなくなる。
| 砂金の種類 | 特徴 | 市場価値 |
|---|---|---|
| 片状砂金(フレーク) | 薄く平たい金の欠片。最も多い形状 | 重さ×金価格(2026年7月時点で1g=2万円台前半・日々変動) |
| 粒状砂金(ナゲット) | 丸みを帯びた塊。希少で価値が高い | 重さ×金価格に、希少性が上乗せされる |
| 砂金しおり(加工品) | 採取した砂金を使ったしおり。道の駅で作成 | 300円(加工費) |
正直に書く。交通費を考えると、採算は全く合わない。明治の砂金師と同じ道具で、同じ川の金を探す。その手応えは、どこにも代わりがない。この川の砂金は、机の上で眺めるほうが似合う。
大樹町の宇宙港と晩成原生花園との1日コース
晩成原生花園(大樹町)は、エゾカンゾウやハマナスが咲く、太平洋沿いの原生花園だ。午前は川で金を探し、午後は海の浜を歩く。川が山から運んだものの、最後の行き先を見に行くことになる。
インターステラテクノロジズ(IST)の打ち上げ予定は、公式サイトで公開される。打ち上げの日に合わせれば、砂金採りとロケットの見物が一日でできる。皿の底の小さな粒を見ていた目で、空へ上がる火を見上げる。首の忙しい一日になる。
後志の島牧村(めのう)と組み合わせる手もある。ただし島牧から歴舟川までは、車で半日以上かかる。1日目に島牧でめのう、移動をはさんで、2日目に歴舟川で砂金。2泊3日あれば回れる。北海道の地図は、本州の感覚で眺めると距離で裏切られる。
石好き次郎から
日高山脈が削られ、川が運び、何万年もかけて川底に沈んだ金。その最後の数センチを、こちらは皿ですくう。何万年分の仕事の、いちばんおいしいところだけもらう。少し気が引ける。
表面の砂ではなく、岩盤まで掘る。割れ目に金が入る。20年石を拾ってきたが、砂金ほど「どこを掘るか」だけで結果が決まる相手はいない。
明治の1日100gは、もう昔話の数字になった。それでいい。欲しいのは量ではなく、この川の水で洗った一粒のほうだ。
水質で何度も日本一になった川だ。水が澄んでいて、砂金が採れなくても川底が見える。それだけで、来る理由は足りる。金は、澄んだ水のおまけくらいに思っておく。そのほうが、帰りの車が静かにならずにすむ。

スポット情報まとめ
| 採れる石 | 砂金 |
|---|---|
| 難易度 | 道具は初心者でも扱える。ただし2026年は砂金が少なく、見つけるのは難しい(指導員付き体験は休止中、道具レンタルのみ) |
| 料金 | 道具レンタル:ゆり板500円・カッチャ500円(各税込)/インストラクター付き体験は2026年休止中 |
| 営業 | 2026年は6月20日〜9月27日で受付終了・予約不要(9〜17時)。増水・ヒグマ出没時は予告なく中止の場合あり |
| 問い合わせ | 道の駅コスモール大樹・大樹町企画商工課 |
| Googleマップ | 地図・経路を開く |
| 最終確認日 | 2026年7月24日 |
公式確認先

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