
河原のキラキラする石は、たいてい金ではない。金色の正体は、ほとんどが雲母か黄鉄鉱だ。光り方も一種類ではない。雲母は角度を変えると消える。黄鉄鉱は角ばった面で光る。石英は無色の面で日を返す。自然金だけが、傾けても黄色を残す。
キラキラは値札ではない。結晶の面と光の関係だ。ハズレ扱いされがちな雲母も、薄い層が一枚ずつ光を返す鉱物として見ると、花崗岩をつくる立派な一員に見えてくる。本物の砂金を皿で採る話は砂金の採り方に書いた。
金色に見える粒をその場で金と決めない
金は重いので、パンニング皿の底に残りやすい。とはいえ、光り方だけで決めると、あとでがっかりする。
河原でキラキラが集まるのは、流れがゆるむ場所だ。カーブの内側、大きな石の下流側、水が引いたあとの砂の筋。日が差すと、そこだけ砂が金色にまたたく。しゃがんで指でつまむと、粒は思ったより薄く、濡れた指先にそのまま貼りつく。それが雲母の手触りだ。
雲母・黄鉄鉱・黄銅鉱・石英・磁鉄鉱・自然金の比較
| 候補 | 光り方 | 形 | 簡易観察 |
|---|---|---|---|
| 雲母 | 角度で強く光り、薄片で消える | 薄い板状 | 爪や針で薄くはがれる場合がある |
| 黄鉄鉱 | 金属光沢が強い | 立方体・角ばった粒 | 硬く脆く、金のように潰れにくい |
| 黄銅鉱 | 真鍮色〜金色の金属光沢 | 不規則粒が多い | 金より脆く、黄鉄鉱より軟らかい。暗色の条痕が手掛かり |
| 石英 | 無色〜白い面が反射 | 不規則な粒 | 金色そのものではない |
| 磁鉄鉱 | 黒い金属光沢 | 黒い粒 | 磁石に反応する |
| 自然金 | 黄色が角度で消えにくい | 丸み・薄片状 | 重く、延びたり潰れたりしやすい |

なぜ金はパンニング皿の底に残るのか
自然金の比重は約19.3。石英(比重2.65前後)の7倍以上、黄鉄鉱(比重5前後)と比べても4倍近く重い。皿を水の中で揺すると、軽い石英や泥は流れ出て、重い鉱物だけが底に残る。ただ、残るのは金だけではない。磁鉄鉱もジルコンも同じように底に集まる。皿は色ではなく重さで選り分けている。底で光ったからといって、金とは限らない。底に残る顔ぶれは、パンニング皿の底に残るもので一つずつ見られる。
雲母が薄く割れる理由
雲母は層状ケイ酸塩の仲間だ。原子が薄いシートになって、何枚も積み重なる。シートどうしのつながりが弱いので、爪や針でも一枚ずつはがれる。この完全な劈開(決まった方向にきれいに割れる性質)が、光ったり消えたりする正体だ。本のページに近い。めくれるから、光る。
角度、形、重さ、変形、磁石で見る順番
①角度を変えて残るか消えるか
まず石を傾けてみる。金色が残るか、消えるか。雲母は角度が変わると光が逃げやすい。金は傾けても黄色が居座る。道具のいらない、最初の一手だ。
②形・重さ・変形・磁石
次に形。薄い板なら雲母、立方体のような角があれば黄鉄鉱を疑う。手に載せて重さを見る。同じ大きさなら金の方が重い。先の尖ったもので軽く押す。金は延びる。黄鉄鉱と黄銅鉱は脆く割れる。最後に磁石。磁鉄鉱ならはっきり反応する。この順で試すと、候補はちゃんと減っていく。減っていくだけで、たいてい金には届かない。
黄銅鉱には、もう一つ手がかりがある。古い粒は、表面が青や紫ににじむ。孔雀の羽のような色が浮いていたら、金ではない。金はさびない。何年たっても、黄色のままだ。
皿の振り方や産地の話は、別の記事に回した。見分け方を先に知っておくと、河原でぬか喜びする回数が減る。ゼロにはならない。見分けられるようになって最初に増えるのは、「金ではなかった」と分かる回数だ。
黄鉄鉱がフールズゴールドと呼ばれる理由
黄鉄鉱は硫化鉄の結晶だ。自然のままで、定規で引いたような立方体になることがある。真鍮のような光が金にまぎらわしく、19世紀のゴールドラッシュでは多くの採掘者が金と間違えた。それで「フールズゴールド(愚者の金)」と呼ばれた。愚か者だったのは、石ではなく人のほうだ。
河原のキラキラする石に関するよくある質問
Q. 磁石だけで金かどうか分かる?
分からない。磁石で外せるのは磁鉄鉱だけだ。金も黄鉄鉱も黄銅鉱も磁石には付かないので、この一手では決まらない。
Q. 磁鉄鉱はなぜ磁石にくっつく?
鉄を多く含み、結晶そのものが磁石に強く引かれる性質を持つからだ。天然の磁石になった塊もある。河原の黒い砂(砂鉄)の多くがこれで、磁石を近づけると、ひげのように立ち上がって付いてくる。集めて遊ぶなら、砂鉄を集めて調べる手順がそのまま使える。
石好き次郎から
冒頭の雲母のおかげで、光り方の違いだけは体が覚えた。皿の底で何かが光ったら、まず傾ける。喜ぶのは、そのあとでいい。
石の売り買いの場を長く見てきたが、そこで黄鉄鉱の立方体は、金の偽物ではなく立派な標本として並ぶ。偽物扱いされるのは、河原の皿の上だけだ。
値段より光り方を見るようになったのは、光る理由を知ってからだ。傾けても消えない黄色、押すと延びる柔らかさ。見るところが増えると、河原で立ち止まる時間も増えた。採集歴は20年になるが、一日に歩く距離はちっとも伸びない。
河原で光るものは、たいてい値段とは関係ない。結晶の面が、たまたま太陽のほうを向いただけだ。それで毎回手が止まるのだから、こちらも安いものだ。


見分け方の裏づけに使った資料
見分け方の裏は、下の資料で取った。
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