須佐ホルンフェルスの縞はどうできた——海底の砂泥をマグマが焼いた崖

夕暮れの海岸に迫る崖
石好き次郎
須佐の崖は、遠目には巨大な縞メノウが海から突き出しているように見える。だが、メノウのような透明感はどこにもない。縞は、まったく別の理由でできた。

須佐の縞は、海底に交互に積もった砂と泥の層が、あとから近づいたマグマの熱で焼かれてできた。黒い帯が泥、淡い灰色の帯が砂だった層だ。

「ホルンフェルス」は模様の名前ではなく、熱で作り変えられた岩の名前だ。縞模様の石全般の見分け方は河原の縞模様の石の見分け方にまとめた。河原の縞の石も、半分くらいは焼かれた側の親戚だ。

場所山口県萩市須佐高山(須佐湾)
採集可否不可(国指定天然記念物・名勝のジオサイト)
子ども向け○(ジオガイドツアーで地層観察・化石探し等の体験あり)
料金見学は無料。ガイドツアーは要問い合わせ
最終確認日2026年7月
目次

須佐の縞は何の縞なのか

メノウの縞は、鉱物が内側へ育った跡。須佐の縞は、海底に積もった順番そのもの。だから半透明ではなく、緻密で不透明な岩肌に、縞が焼き付いている。似ているのは、遠目の柄だけだ。

崖の高さは約12m。海から、いきなり立ち上がる崖だ。荒波を受ける昼と、西日で黄金色に染まる夕方とでは、同じ崖がまるで別の顔をする。

砂岩と泥岩が海底へ交互に積もった

須佐層群と呼ばれるこの地層は、約1500万年前(資料により1400万〜2000万年前)、日本海ができていく時期に、砂と泥が交互に海底へ積もってできた。

この時代、日本列島はまだユーラシア大陸の縁にくっついていた。約2000万年前から縁が引き裂かれ、間に海が広がり、約1500万年前ごろに日本海の拡大がほぼ終わる。須佐の砂と泥は、その引っ越しの途中の海底に積もった。崖の縞は、日本が島になりかけていたころの日記だ。

マグマの熱でホルンフェルスになった

その後、地下から高温の火成岩体(高山はんれい岩)が地層に貫入した。マグマ本体そのものではなく、その熱が周囲の砂泥互層を焼き、鉱物を再結晶させた。これが接触変成作用で、できた岩がホルンフェルスだ。

変成の強さは崖の場所によって違う

マグマ(高山はんれい岩)に近いほど強く焼かれ、遠いほど元の地層の顔を残す。縞がくっきり見える所は、焼かれ方が比較的やさしかった所だ。一つの崖の中に、焼き加減の違いが帯になって並ぶ。

強く焼かれた所では、泥岩の鉱物が分解して、紅柱石や菫青石が新しく育つことがある。菫青石は、京都・亀岡の桜石を作った鉱物でもある(石の中に桜が咲く——京都・亀岡の桜石)。同じ熱で、縞を残す岩と、新しい鉱物を育てる岩に分かれる。

須佐石——墓石になったマグマの塊

ホルンフェルスを作った張本人、高山はんれい岩にも名前がある。「須佐石」だ。黒く重い質感で、古くから墓石や石材に使われてきた。焼いた側も焼かれた側も、地名を背負って残った。片方だけ有名、にならなかったのがいい。

高山の磁石石とスサノオ伝説

高山の山頂付近には、方位磁針を狂わせるほど磁力を帯びた「磁石石」がある。磁鉄鉱を多く含むはんれい岩で、これも国の天然記念物だ。航海中に方角を見失ったスサノオが、船の磁石が高山を指したのを頼りに須佐湾へ入った、という伝承も残る。磁石が狂う山を目印にした、というのが少しおかしい。

須佐の近くのもう2つの奇岩——畳が淵と龍鱗郷

須佐から車で20分ほど内陸、田万川の谷には、柱状節理の名所もある。「畳が淵」は河床に亀甲状の岩が並び、「龍鱗郷」は六角形の玄武岩の柱が立ち並ぶ(県の天然記念物)。ホルンフェルスが「焼かれてできた縞」なら、こちらは「冷えて割れた柱」。同じ須佐の一日で、正反対のでき方が見比べられる。

畳が淵は駐車場から遊歩道を約7分、約180段の階段を降りると河床に出る。亀甲模様の敷石の間を清流が流れる。石段は滑りやすい。帰りの180段は、行きより長い。

アクセスと萩ジオパーク

萩市街から車で約40分。駐車場から遊歩道を徒歩8分ほどで崖の下に降りられる。須佐ホルンフェルスは「萩ジオパーク」(2018年に日本ジオパーク認定)の一部で、萩焼や城下町も、この土地の地質とつながる。

現地で縞、硬さ、節理を見る順番

見る順番はこうする。まず、黒い層と淡い層の厚さを比べる。厚さの違いは、積もった砂と泥の量の違いだ。次に、波で丸く削られた面と、新しく割れた面の色を見比べる。最後に、はんれい岩と焼かれた地層の境目を意識して歩く。境目に気づくと、崖が一本の話になる。

崖に近づくと、晴れていても波しぶきがかかる日がある。写真に夢中になると、足元と波を忘れる。撮るのは、少し下がってからにする。

肩書きより、縞の本数

須佐ホルンフェルスは日本の地質百選に選ばれ、国の名勝・天然記念物に指定された。肩書きはそれで足りる。「日本一」と書きたくなる気持ちは分かるが、縞を一本ずつ数えていれば、そんな言葉は要らなくなる。

須佐は活イカで知られる漁港の町でもある。崖を見たら、須佐漁港のあたりでイカを食べて帰る。地質と昼ごはんが、車で数分の距離にそろう。石を拾えない日の、いちばん正しい埋め合わせだ。

須佐ホルンフェルスに関するよくある質問

Q. 見学にどれくらい時間がかかる?
A. 往復だけなら短時間で済む。崖の前で何分使うかは、縞しだいだ。

石好き次郎
波に磨かれた面は、どこも同じ灰色に見える。割れたばかりの面を見つけると、縞が急にしゃべり出す。崖の前では、そっちを探す。

山口でもう一か所回るなら、行き先は山口の石拾いから選ぶ。

石好き次郎から

拾えない石の記事は、書いていて少しもどかしい。ポケットに入れて帰れない。その代わり、崖の縞を目で持って帰る。重さはゼロだが、忘れにくい。

須佐の縞は、海底に積もった順番を残したまま、マグマの熱で別の石になった。焼かれても、履歴書は書き換わらなかった。

石好き次郎
縞の厚さを数えているだけで、時間は勝手に過ぎる。数え終わったためしはない。

公式確認先

行き方や料金のもとにしたページを置いておく。変わっていたら、こちらが正しい。

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崖の縞は持って帰れないが、河原の縞なら拾える。縞のでき方から石の名前を絞る見方は、河原の縞模様の石は何かで。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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