
鳥取砂丘のおもしろさは、あの砂が全部、中国山地の花崗岩のなれの果てだということに尽きる。
花崗岩は雨風でぼろぼろになって「まさ土(真砂土)」になり、千代川(せんだいがわ)で日本海へ流れ出る。波が岸へ打ち上げ、北西の季節風が内陸へ吹き戻す。これを10万年くり返して、東西16km・南北2.4km・最大高低差90mの砂の山ができた。観光客が素足で歩くのは、山の残骸だ。
石の歴史を読んで、鳥取で石を拾ってみたくなったら鳥取砂丘の砂に宝石が光る?ガーネットと磁鉄鉱を観察へ。行き先は、そちらにまとめてある。
砂丘が生まれた仕組み——「山→川→海→風」の4段階
表にすると四段になる。どの段でも、軟らかい粒から先にふるい落とされる。最後まで残るのは、硬い石英と、重い粒だ。
| 段階 | 何が起きているか | 石の視点 |
|---|---|---|
| ①山で風化 | 中国山地の花崗岩が雨水・温度変化で「まさ土」に崩壊 | 岩→砂への変化。石英・長石・黒雲母に分解 |
| ②川で運搬 | 千代川が砂粒を日本海へ運ぶ | 流されながら粒が丸くなる・細かくなる |
| ③海で堆積 | 海流が砂を海岸に打ち上げて砂浜を形成 | 大きい粒は河口付近・小さい粒は沖合へ |
| ④風で移動 | 北西の季節風が海岸の砂を内陸へ吹き飛ばす | 10万年かけて砂が積み上がり砂丘が形成 |
砂粒の大きさは場所で違う。千代川の河口がいちばん粗く、内陸へ行くほど細かい。河口近くの砂は透明感があってきらきらし、内陸の砂は赤茶色がかる。風に飛ばされる距離が長いほど、粒が割れて傷つき汚れるからだという。粒の色と大きさを見れば、その砂がどれだけ旅をしてきたか見当がつく。
砂丘の砂のふるさとを見たいなら、千代川の河原だ。花崗岩、変成岩、砂岩、チャートの礫がまじる。上流の花崗岩が崩れて、砂丘の砂になる。砂になる前の姿を先に見ておくと、砂丘の一粒にも、元の岩の顔が浮かぶ。
砂丘の地形——風が作る「石の造形」
砂丘の地形は、どれも風と重力の作品だ。「風紋」は風が砂の表面に刻む波の縞で、風が吹いた直後にだけ現れ、次の風で消える。「砂簾(されん)」は、すり鉢の斜面を砂が流れ落ちるときにできる縦じま。「大すりばち」は40mのすり鉢状の大きな窪地。人間が同じものを作ろうとしても、まず無理だ。
浦富海岸(うらどめかいがん)は、花崗岩が波に削られた海岸だ。白っぽい岩の崖と小島が続く。砂粒ばかり見たあとだと、同じ花崗岩がまだ岩のまま立つ姿が、妙にうれしい。
白兎海岸は、古事記の因幡の白兎の舞台だ。花崗岩と砂岩の砂浜で、神話の時代と同じ場所に、同じ石がある。うさぎは散々な目にあったが、石は今も無事だ。

砂丘の砂をルーペで見ると——花崗岩の3鉱物
砂丘の砂は、10〜30倍のルーペでも中身が見分けられる。見えるのは、花崗岩をつくっていた石英・長石・雲母の粒だ。
| 鉱物 | 見た目 | 花崗岩での役割 |
|---|---|---|
| 石英(SiO₂) | 透明〜白・ガラス光沢・角張ることが多い | 花崗岩の30〜35%を占める主要鉱物 |
| 長石(KAlSi₃O₈など) | 白〜ピンク・不透明・平坦な劈開面が光る | 花崗岩の最大成分(40〜60%) |
| 黒雲母(K(Mg,Fe)₃Si₃AlO₁₀(OH)₂) | 黒〜茶黒・金属光沢・うすい板状 | 花崗岩に黒い斑点を作る鉱物 |
砂丘でルーペを目に当てている人は、まず見かけない。はたから見れば、落とし物を探す人だ。それでも、中国山地の花崗岩がここまで来た証拠は、自分の目で見たほうが早い。
山陰海岸ジオパーク——砂丘以外の石の見どころ
鳥取砂丘を含む山陰海岸は、山陰海岸ユネスコ世界ジオパークに入る。浦富海岸の海食崖や洞門は、遊覧船から見られる。砂丘では「三稜石(さんりょうせき)」が見つかることがある。同じ向きから砂を当てられ続けて、面が平らに磨かれた礫だ。ふつうは砂漠の石で、雨の多い日本では見つかる場所が限られる。
手に取りたくなったら、砂丘を出て川へ行く。西の日野川の河原には、大山の安山岩・玄武岩と、中国山地の花崗岩の礫がまじる。火山の石と、地下で冷えた石を一度に見比べられる。河口に近い皆生(かいけ)の浜も、白い砂に黒っぽい礫が転がる。砂丘で見るだけだった石を、ここでやっと拾える。
決まりはここにまとめる。砂丘の中心部は国の天然記念物(1955年)で、山陰海岸国立公園の特別保護地区(1963年)でもある。砂の持ち帰りは自然公園法で許されない。鳥取県のチラシにもはっきり書いてある。浦富海岸も国の名勝・天然記念物だ。千代川や日野川のふつうの河原、皆生の浜で数個拾うぶんには、構えなくていい。
砂丘の外にも、同じ山の石がいる
鳥取城の石垣には、地元の花崗岩と安山岩が使われている。大山の石か、中国山地の石か。石垣の前で考えはじめると、城の話がなかなか頭に入ってこない。
弓ヶ浜半島は、中海を砂州が仕切った砂堆(さんたい)地形だ。鳥取砂丘と同じ、石英の砂が集まる仕組みが小さな規模で起きている。砂丘を見たあとに行くと、縮尺違いの模型に見える。
| 地質・石 | 特徴 |
|---|---|
| 鳥取砂丘(石英砂) | 花崗岩→石英砂→砂丘という地質的変換の証拠 |
| 大山(だいせん) | 活火山・安山岩・玄武岩の成層火山 |
| 千代川流域 | 花崗岩・変成岩・古生代堆積岩礫 |
| 山陰海岸 | 玄武岩・砂岩の礫浜(山陰ジオパーク) |
| 因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)海岸 | 花崗岩・砂岩の砂浜 |
人形峠(岡山・鳥取の県境)は、1955年に日本で初めてウラン鉱床が見つかった場所だ。閃ウラン鉱(UO₂)が出る。近くの三朝温泉はラジウム温泉で名高い。地下の石が、湯の性格まで決めている。
鳥取は二十世紀梨の産地としても有名だ。その畑の土、真砂土や砂質の土も、花崗岩が風化したものになる。砂丘の砂と梨畑の土は、元をたどれば同じ山。梨をかじるときに思い出す話でもないが、知ってしまうと忘れられない。

砂丘の砂を、拾わずに見る
ここからは、砂の中の赤い粒の話だ。大勢の観光客が素足で歩く砂に、ガーネットがまじる。足の裏の下に宝石がある。ほとんど誰も気づかない。
観光地の砂に、宝石が混じる
ルーペで見えるのは、赤褐色の、米粒よりずっと小さな粒だ。宝石と呼ぶには小さすぎる。それでも、指輪に載るガーネットと同じ仲間の鉱物だ。値段はつかない。値段がつかないから、気楽に眺めていられる。
なぜ砂丘にガーネットが残るのか。砂金と同じ理屈だ。ガーネットは硬くて重い。軽い石英や長石が風に飛ばされたあとに、重い粒が居残る。砂丘のところどころに黒っぽい砂が帯になるのは、磁鉄鉱などの重い粒が寄り集まった所だ。赤い粒を探すなら、まずその帯を見る。
だから鳥取砂丘は、巨大なパンニング皿だ。私が川で皿を揺すってやることを、風と波は10万年かけてやってのけた。根気では、とても敵わない。
山が砕けて、砂になるまで
山が砂になるまでの話は、石の話の中でもかなり地味だ。地味なのに、結末だけは派手で、日本を代表する砂丘になる。
花崗岩が風化すると、長石と黒雲母が先に崩れ、硬い石英が残る。川でも海でも風でも、そのたびに軟らかい粒が脱落する。砂丘の砂の大半が石英なのは、ふるいに何度もかけられた残りだからだ。
砂丘の砂は、花崗岩の最後の生き残りだ。ただ、ルーペでのぞくと、透明な石英にまじって白い長石や黒い雲母の粒も見える。全部が消えたわけではない。逃げ遅れた粒も、ちゃんといる。
今も動いている、生きた砂
拾う石は、たいてい動きを止めた石だ。砂丘の砂は違う。風が吹けば表面に風紋が刻まれ、次の風で消える。すり鉢の斜面も、砂が流れ落ちて形を変える。昨日撮った写真が、今日はもう合わない。
その砂が、減ってきた。千代川の上流にダムや砂防の堰ができ、海へ届く砂が細ったことが理由の一つに挙げられる。入り込む草を抜く作業も続く。10万年かけて積もった山も、100年あれば痩せる。
よくある質問
Q. 砂丘の砂は、どう観察するといい?
ルーペと黒い紙を持っていく。黒い紙の上に少し広げると、粒の色と形がよく見える。見終わったら、砂はその場に戻す。
Q. 子どもと砂丘で楽しめる石遊びは?
磁石を砂に近づけるのがいちばん手軽だ。黒い砂鉄が飛びついてくる。それだけで子どもは喜ぶ。遊んだ砂鉄は、砂丘に返して帰る。
Q. 大山の石と、砂丘の砂は関係がある?
生まれは別だ。砂丘の砂は中国山地の花崗岩から来た。大山は火山で、安山岩などを出す。ただ、砂丘の地層には大山の火山灰の層がはさまる。生まれの違う二つが、そこで一度だけ重なる。
石好き次郎から
砂丘で海より足元を見るのが、石好きの悪い癖だ。足元の一粒は中国山地の花崗岩から来て、10万年かけてここに着き、いまも風に押されて動く。しかも持ち帰れない。だから余計に、じっと見る。持って帰れない石ほど、よく覚えている。


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