香川で石を探す|サヌカイトの名所では拾えない。それでも「持って帰れる」場所がある

香川の風景(イメージ)

香川のサヌカイトは、名所ではどこも拾えない。それでも、石を持って帰れると、はっきり書かれた場所が一つだけある。高松市石の民俗資料館の「ストーンハンティング」だ。300円。

サヌカイトは、叩くと金属音が鳴る黒い安山岩で、世界でも産地がごく限られる。香川の石といえば、まずこれだ。

では、産地には行けるのか。国分台は陸上自衛隊の演習場、屋島と城山は国の史跡。代表産地をたどると、入れない山か、拾えない浜に行き着く。そのかわり香川には、手で拾える川と、見に行ける石の名所がある。順に書く。

目次

サヌカイトは、ドイツ人が名付けた

日本地質学会が2016年に選んだ「県の石」で、香川の岩石は讃岐石(古銅輝石安山岩)。主要産地は五色台だ。

命名の経緯が面白い。ナウマンがドイツに持ち帰った石を、ドイツの地質学者ヴァインシェンクが調べ、1891年に讃岐にちなんで Sanukit(英語名は sanukite)と名付けた。

日本の石に、日本の旧国名が付いた。それを付けたのはドイツ人で、場所はドイツだった。

和名は「讃岐岩」。叩くと「カーン、カーン」と金属のような音がして、心地よい余韻が残る。江戸時代のころから「馨石(けいせき)」とも呼ばれてきた。

なぜ金属音がするのか

石が楽器みたいに鳴るのは、何度聞いても面白い。理由は二つ。隙間がほとんど無いほど緻密なことと、針のような細かい結晶が一方向にそろって並んでいること。

年代は、だいたい1300万年前。瀬戸内で火山が盛んだった頃の石だ。

ルーペで見ると、黒い地の中に針のような小さな結晶が並ぶのが分かる。大きな斑晶がほとんど無く緻密なので、割ると鋭い縁ができる。

「サヌカイト」と「讃岐岩質安山岩」は別物だ

ここは間違えやすい。五色台のあたりの地層は、下から花崗岩、凝灰角れき岩、火山角れき岩、讃岐岩質安山岩(サヌカイトによく似た岩)と重なり、本物のサヌカイトは、そのいちばん上に乗る。

屋島や男木島の山頂は讃岐岩質安山岩(一部は玄武岩)で、サヌカイトそのものではない。似た岩が下、本物が上。山を見上げるときは、てっぺんを見る。

この重なり方がきれいに見えるのが、国分寺町の東奥から国分台の山頂へ上る遍路道沿いの崖だ。——だがその山の上は自衛隊の演習場。見る場所と入れない場所が、すぐ隣にある。

石好き次郎
石の名前を覚えるとき、似た名前が並ぶと厄介だ。サヌカイトと讃岐岩質安山岩は、地層の上下で別のものとして区別されている。売り場で「サヌカイト」と書いてあっても、どちらなのかは割れ口と音で見る。

3万年前から1700年前まで——98%がサヌカイトだった

香川の人は、約3万年前からこの石を使ってきた。そして弥生時代の終わり、約1700年前まで、刃物の材料として使い続けた。

瀬戸大橋の工事で発掘したら、その量が数字になった。与島西方遺跡で約13万点、羽佐島遺跡で約35万点の石器や破片が出て、その98%近くがサヌカイトだった。

地元にいい石があれば、遠くから運ぶ必要はない。遠くの山から石を運んだ土地もあるなか、香川は「自給できた側」だ。

それでも、岐阜県のあたりまで出ていった

自給しただけではない。坂出市の金山のサヌカイトは、中国・四国から東は岐阜県のあたりまで出土する(香川大学 瀬戸内圏研究センター)。船で瀬戸内を渡り、沿岸に広く散らばった石器の材料だ。

金山の山腹には、縄文時代の終わりから弥生時代の初めに掘られた露天の採掘坑まで見つかった。旧石器時代から弥生時代の終わりまで、金山は石を出し続けた山だ。

いまの金山に入っていいのかは、はっきりしない。史跡でもない。分からない山には、案内しない。眺めるのは地図の上だけにしておく。

サヌカイトと、島に残った大坂城の石の話は大阪城の石が香川の島に400年放置されているへ。

産地は、どこも拾えない

国分台——陸上自衛隊 国分台演習場

決まりの話は、この節にまとめる。個人の石拾いは、法律で禁止か許可制の場所でなければ大丈夫だ。困ったことに、名の知れたサヌカイトの産地ほど、そこに当たる。坂出市が産地に挙げる山は4つ。蓮光寺山、城山、金山、国分台。蓮光寺山の風化は「かつお節状」、国分台は「朽ち木状」と呼ばれる。

その国分台が、いまは陸上自衛隊の演習場だ。入れるのは許可を受けた放牧や採草の関係者だけで、実弾射撃の訓練もある。予定は四半期ごとに坂出市が知らせる。石を調べていて、射撃の予定表を読むことになるとは思わなかった。

石好き次郎
代表産地の標本は産総研の棚にあるのに、本家の山には行けない。行けない産地は石の世界にいくつもある。でも理由が「訓練中」というのは、さすがに珍しい。

屋島——指定範囲は海面100mまで

屋島は国の史跡で天然記念物だ。メサ(卓状台地)の典型として知られる。

指定の範囲は、半島部と、その先100メートルの海面まで。海の中まで入るので、屋島の浜の石も指定地の中だ。浜は眺めるだけにする。

約1400万年前の火山で溶岩が水平に流れ出し、そのあと周りと上が削られて、テーブルのような山が残った。

南嶺西斜面の遍路道沿いにある畳石は板状節理の露頭で、厚さ2〜5センチの板が積み重なったように見える。石を拾えない山で、石の積み方だけは見放題だ。

城山と、五色台

城山も国の史跡だ。サヌカイトの産地として五色台や金山と並んで名前が挙がる山が、まるごと指定地になる。

五色台は瀬戸内海国立公園の中だ。いちばん厳しい特別保護地区は香川の区域には無いが、特別地域で石を採るには許可が要る。どこが特別地域かを地図で追い切れなかったので、拾える場所とは書かない。山の上の五色台ビジターセンターは入館無料だ。

岩そのものが天然記念物——見に行く香川の岩

香川には、岩そのものが天然記念物になった場所がいくつもある。どれも拾う場所ではなく、見に行く場所だ。古い指定文が、そのまま読みどころになる。

円上島の球状ノーライト(観音寺市)——世界的ニ珍ラシキモノナリ

観音寺港の北西20キロの海上、無人の円上島にある。斜長石と紫蘇輝石が主のノーライトという深成岩に、白と紫の結晶が同心円に並んだ球が入る。菊の花のような模様で、地元では菊花石とも呼ばれる。球は2〜6センチほどだ。

指定文の原文がすごい。球の並び方を古い漢字とカタカナで長々と説明したあと、最後にこう言い切る。「世界的ニ珍ラシキモノナリ」。役所の文書が、ここまで胸を張るのは珍しい。

ただ、見に行く手段の案内は無い。定期船があるのは伊吹島までだ。ここは「読んで楽しむ天然記念物」になる。

鹿浦越のランプロファイヤ岩脈(東かがわ市)——黒白ノ幔幕

東かがわ市松原の海岸で、暗い色のランプロファイヤが白い花崗岩を貫き、二十本あまりの平行な岩脈をつくる。幅は5センチから2メートル。指定文は、遠くから眺めると「恰モ黒白ノ幔幕ヲ斜ニ曳キタルガ如ク」と書く。

ランプロファイヤ(煌斑岩)は、黒雲母や角閃石に富む暗い色の岩だ。白地に黒の縞は、80年以上前に指定文を書いた人にも、幕に見えたらしい。

ここは近づける。干潮のときは岩脈のそばまで歩いて行けて、駐車場(5台)と遊歩道もある。足元には気をつけたい。

黒い縞を端から一本ずつ数えていると、たぶん潮のほうが先に戻ってくる。

絹島および丸亀島(東かがわ市)——讃岐岩の柱状節理

東かがわ市の沖の絹島は讃岐岩の小島で、柱状節理が見事に発達し、波に削られてできた洞窟や割れ目が目立つ。隣の丸亀島も、大部分が讃岐岩だ。

県の石の残り二つ——珪線石とコダイアマモ

県の石の鉱物は珪線石。高い温度で安定する鉱物で、まんのう町の猫山には、かつて国内では珍しい珪線石の鉱山があった。

今の様子は分からない。名前だけ覚えて帰る鉱物だ。

県の石の化石はコダイアマモ、産地は阿讃山脈。後期白亜紀、およそ7千万年前の和泉層群から出る。

コダイアマモは、植物ではないらしい

この化石の話がいちばん面白い。学名は Archaeozostera。1931年に命名されたとき、今のアマモの仲間の祖先にあたる海草だと考えられた。形も「地下茎があり、二列互生に枝が出、枝には二列互生に葉が生える」(産総研)。確かに海草に見える。

ところがその後、アマモの仲間とは縁が無いことが分かってきた。いまは、海の底で泥を食べていた生き物の這い跡(生痕化石)だという見方が主流だ。植物だと思われていたものが、生き物の足跡だった。

この説の出どころも面白い。海外の古生物学者が来日したときに述べた見解だという。論文にはなっていない。口頭のひとことが、半世紀かけて主流になった。

川で拾うなら土器川——親指からピンポン玉の砂利の川

香川で国が直接管理する一級河川は、土器川だけだ。長さ33キロの、短い川だ。

上流は砂岩と泥岩が重なる和泉層群、中流は領家帯の花崗岩類で、どちらも風化がかなり進む。だから河原には、灰色の砂岩や泥岩の礫と、白っぽい花崗岩の礫が一本の川に混ざる。和泉層群は、コダイアマモが出る地層でもある。

風化の進んだ花崗岩は、握ると角がぼろぼろ崩れることがある。持って帰るなら、指で押しても崩れない、締まった一個を選ぶ。崩れる石は、家に着くころには砂に戻る。

川底はほとんどが砂利で、代表粒径は20〜40mm。親指の先からピンポン玉くらいの石が転がる川だ。

昭和の半ばに砂利を採りすぎて川底が下がり、業者の砂利採取は全面的に止められた。手で数個拾う話とは別だ。考え方は拾っていい石、置いて帰る石にまとめた。

河川敷に降りるなら、丸亀市垂水町の土器川生物公園が目印になる。駐車場と「かわら広場」があり、国の河川事務所の催しにも使われる場所だ。駐車場の台数は多くない。

香川の川の多くは讃岐山脈から出て、山では急に流れ、平野で一気にゆるんで扇状地をつくり、天井川になって瀬戸内海に入る。短くて、急いで、すぐ海。せっかちな川が多い県だ。

香川の地質は、骨組みだけならひとことで言える

土台は花崗岩と、白亜紀の和泉層群。そこに変成岩と、サヌカイトを含む火山の岩(讃岐層群)がまだらに乗る。それだけだ。

拾える場所は、ここだった

冒頭に書いた高松市石の民俗資料館の「ストーンハンティング」。高松市の案内はこうだ。「砂利の中に隠された天然石を探そう!見つけた天然石は持って帰れるよ。」

料金は300円、現金のみ。各回4人の先着順で、10時から15時までの6回。当日、資料館の窓口で申し込み、受付は午前9時から。電話予約はできない。土日祝は開館してすぐ埋まることがあるので、着いたら先に窓口へ行く。

うちも家族で、砂利の中から水晶を探す施設に行ったことがある。こういう宝探しは、子どもの食いつきが違う。大人は横で黙って見ているのが仕事だ。天然石を持ち帰れるなら、子ども連れには十分だ。

施設そのものも、石の館だ。高松市牟礼町牟礼1810。展示は「生活」「信仰」「文明」の3テーマで、石工用具の実物とジオラマで庵治の石の仕事を見せる。ここは牟礼、庵治石の産地の真ん中だ。

庵治石がなぜ高い石なのかは、庵治石の記事に書いた。稼働中の丁場は事業所で、見るなら石材会社の予約制ツアーという形になる(県の観光サイトに例が載る)。手軽なのは、この資料館だ。

島まで足を延ばすなら、小豆島の大坂城石垣石丁場跡がある。天狗岩丁場と八人石丁場は遊歩道があり、いつでも見学できる。山や海岸に、大坂城の石垣用に切り出された石が残り、10センチほどの矢穴や刻印が見える。六つの丁場で1,612個。四百年、船を待ちぼうけの石だ。

石好き次郎
名所ではどこも拾えないのに、最後に残った「拾える場所」が石工の町の資料館だった。香川らしい落ち方だと思う。

海から地質を見るクルーズもある

東かがわ市に「ジオサイトクルーズ」がある。引田漁港を出て、引田不整合、鹿浦越のランプロファイヤ岩脈、絹島を回って戻る約2時間。

島には上がらず、船から眺める。拾えない県は、見せ方のほうを工夫する。

見に行く前に——料金とルール

場所見られるもの料金など石の持ち帰り
石の民俗資料館「ストーンハンティング」(高松市牟礼町)砂利の中の天然石300円(現金のみ)/各回4人先着/当日窓口申込・電話不可/土日祝は早く埋まる○(持って帰れる)
土器川(丸亀市垂水町の土器川生物公園ほか)和泉層群の砂岩・泥岩と花崗岩の礫(親指〜ピンポン玉)生物公園に駐車場(台数は少なめ)○(手で数個)
高松市石の民俗資料館(本体)石工用具の実物とジオラマ一般300円・大学生200円・高校生以下無料/9:00-17:00/月曜休/駐車約60台×(展示)
小豆島 大坂城石垣石丁場跡矢穴や刻印のある残石天狗岩丁場・八人石丁場は遊歩道ありでいつでも見学可×(国史跡)
鹿浦越のランプロファイヤ岩脈(東かがわ市)20余条の黒白の平行岩脈駐車5台・遊歩道あり/干潮時に近づける×(国天然記念物)
屋島(高松市)メサ地形・畳石の板状節理—×(国史跡・天然記念物。浜も指定地)
絹島および丸亀島(東かがわ市)讃岐岩の柱状節理ジオサイトクルーズ 中学生以上4,000円・小学生2,000円(5〜9月末の土日祝・要予約)×(国天然記念物・船から見る)
五色台(高松市・坂出市)讃岐石の主要産地五色台ビジターセンターは入館無料/9:00-17:00/月曜休—(国立公園の中。拾う場所としては案内しない)
国分台(坂出市)朽ち木状風化のサヌカイト産地—×(自衛隊の演習場・立入禁止)

並べてみると、香川は「名所で拾えない県」だ。そのぶん、石を持ち帰れる資料館と、手で拾える土器川の値打ちが上がる。

香川の石探しでよくある質問

Q. サヌカイトを自分で拾える場所は? A. 香川の代表産地では無理だ。県外なら、大和川で拾える(大阪・兵庫の川に宝石はある?)。

Q. 香川の浜で石を拾ってもいい? A. 手で数個なら、咎められることはまずない。屋島の浜のような指定地だけは別だ。

Q. 持ち物は? A. 干潮の岩場と河原なら、まず滑りにくい靴だ。準備は行く前の入口で、ほかの県は都道府県から探すで見られる。

石好き次郎から

香川には行ったことがある。あらためて机の上でサヌカイトの産地を追うと、演習場か史跡か国立公園に行き着く。地図の上でも、ほぼ通せんぼだ。

拾えないのは残念だが、筋は通る。何万年ものあいだ、この石は刃物になり続けた。それだけ削られた山が、いま守られている。順番として、それは正しい。

そして、拾える場所が二つ残った。石工の町の資料館の砂利と、土器川の河原だ。一つでもあれば、その県は書く価値がある。二つあれば、行く価値もある。

中国・四国の他の県は中国・四国の海と川で宝探しに、地方から選ぶ入口は石拾いマップにある。

石好き次郎
「行ったら立入禁止だった」より、「行く前に分かった」のほうがずっといい。香川は、行く前に調べておく値打ちのある県だ。

公式確認先

書くときに確かめた公式のページを、行き先ごとに分けて置いておく。変わっていたら、こちらが正しい。

拾える・見に行ける場所

川と地質

サヌカイトと県の石

決まり

最終公式確認:2026年9月24日

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香川の次に四国を回るなら、愛媛だ。愛媛の石拾いでは、関川の変わった岩と別子の銅山の跡を歩く。
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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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