島根県出雲市の花仙山。この丘の地層から掘り出されためのうが、縄文時代から日本中を旅した。
勾玉に加工され、北は北海道・南は九州まで運ばれた。三種の神器のひとつ・八坂瓊勾玉の素材とされるめのうの故郷がこの山だ。縄文人が6,000年前から価値を認めていた石が今も同じ地層から産出し、海岸に転がり、川を流れている。
そして愛媛県の関川には、200種類の鉱物が確認されている「変成岩のメッカ」がある。鉱物マニアの間では「言わずと知れた産地」として知られ、三波川変成岩が生み出す多種多様な鉱物が川底に転がっている。中国・四国は「石の聖地」が集中する地域だ。

中国・四国の石拾いスポット一覧
| スポット | 場所 | 見つかる石 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 花仙山・玉造周辺 | 島根県・松江市 | 出雲石(青めのう・碧玉)。三種の神器の故郷。残り50年分しかない希少産地 | ★★★ |
| 関川(せきがわ) | 愛媛県・四国中央市 | 200種類以上の変成岩鉱物。ガーネット・緑閃石・紅簾石片岩・エクロジャイト等 | ★★★ |
| マイントピア別子 | 愛媛県・新居浜市 | 砂金・水晶・アメジスト・ローズクォーツ等(体験施設)。東洋のマチュピチュも | ★☆☆(体験) |
| 眉山(びざん) | 徳島県・徳島市 | スペサルティンガーネット(橙色)。雲母含む石英片岩の中に産出 | ★★★ |
| 足摺岬周辺 | 高知県・土佐清水市 | 砂鉄・磁鉄鉱。足摺の山砂鉄は変成岩由来 | ★★☆ |
| 秋吉台 | 山口県・美祢市 | 石灰岩・化石(サンゴ・海百合等)。秋芳洞と合わせて石灰岩の世界を体験 | ★★☆ |
| 別子銅山跡周辺・銅山川 | 愛媛県・西条市〜新居浜市 | 銅関連鉱物・黄銅鉱・黄鉄鉱。別子銅山の鉱脈由来 | ★★★ |
① 島根・花仙山——三種の神器の石、残り50年
島根県松江市・玉造温泉の近くにある花仙山は、三種の神器「八坂瓊勾玉」の素材とされる出雲石(青めのう・碧玉)の産地だ。弥生時代から勾玉に使われてきたこの石は、古墳時代の科学分析で北は北海道函館から南は宮崎県まで全国の古墳から出土していることが確認されている。
2012年に約50年ぶりに採掘が行われた際に「あと50年ほど作り続けられる量が採れた」とされた——縄文から6,000年続いてきた産地が現代で終わるかもしれない。今の職人が作る出雲石の勾玉は、この時代に作られる最後の世代のものかもしれない。詳しくは→出雲めのうは三種の神器を作った
② 愛媛・関川——200種類の変成岩鉱物が集まる産地
愛媛県四国中央市・関川は「鉱物マニアの間では言わずと知れた変成岩のメッカ」だ。三波川(さんばがわ)変成岩帯を構成する岩石のほぼ全てが関川の河原で拾えると言われており、確認されている鉱物種は約200種類に達する。一本の川でこれほどの多様性は国内でも稀だ。
採集できる主な鉱物:ガーネット(アルマンディン)・緑閃石(アクチノライト)・紅簾石(ピエモンタイト)片岩・エクロジャイト・クロム鉄鉱・橄欖石・蛇紋石——変成岩の教科書が一冊の川だ。ガーネットは角閃片岩の中に径1mm〜2cmの多角形断面として見えており、適度に風化した岩を割ると菱形十二面体の結晶を単独で取り出せる。初心者には難しいが、知識を深めた石好きにとっては最高の産地だ。

③ 愛媛・マイントピア別子——砂金採り+東洋のマチュピチュ
愛媛県新居浜市の史跡・マイントピア別子は1690年から283年間採掘が続いた日本史上2位の産銅量を誇る別子銅山の跡地だ。砂金採り体験(中学生以上650円・30分)では砂金のほかアメジスト・水晶・ローズクォーツ・タイガーアイ・カーネリアンも採れる。標高750mには「東洋のマチュピチュ」と呼ばれる産業遺産廃墟(見学無料)も。詳しくは→マイントピア別子完全ガイド
④ 徳島・眉山——橙色のスペサルティンガーネット
徳島市のシンボル・眉山(びざん)の中腹では、スペサルティンガーネット(満礬柘榴石)が採集できる。雲母を多く含んだ石英片岩の中に入っており、光沢が強く黒っぽい色をした菱形十二面体の結晶が山道の地面で見つかる。スペサルティンはマンガンを主成分とする橙〜赤橙色のガーネットで、アルマンディン(赤色)とは異なる色合いを持つ——同じ「ガーネット」でもこれほど色と産状が変わることが面白い。
⑤ 山口・秋吉台——石灰岩が語る古生代の海
山口県美祢市の秋吉台(あきよしだい)は日本最大のカルスト台地で、約3億5,000万年前(古生代)の石灰岩が地表に露出している。この石灰岩はかつて熱帯の海に生息していたサンゴや海百合などの遺骸が堆積したものだ——「今は山口の山の上にある石が、3億5千万年前は熱帯の海底だった」という地球の歴史のスケールが実感できる場所だ。秋芳洞(あきよしどう)の鍾乳石も同じ石灰岩から生まれている。石灰岩の化石(サンゴ・海百合)の採集に興味がある場合は事前に美祢市への確認が必要だ。
よくある質問
Q. 関川(愛媛)はどうやってアクセスしますか?
JR予讃線・伊予三島駅から車で20〜30分。四国中央市は「紙の街」として知られる工業都市だが、市内を流れる銅山川・関川流域の変成岩帯は石好きの間では有名産地だ。初回は鉱物の知識をある程度持ってから行くことを推奨する——変成岩は識別難易度が高い。
Q. 出雲石の勾玉は今でも購入できますか?
松江市・玉造温泉周辺の「めのや」などの工芸店で購入可能だ。2012年の採掘分がある間は継続して制作されているが、採掘可能量が「残り50年分」とされており、今後さらに希少になる可能性がある。職人が手作業で研磨した本物の出雲石の勾玉は、宝石店では手に入らない産地の物語を持つ一品だ。
石好き次郎から
中国・四国は石の多様性という点で日本屈指の地域だ。三種の神器のめのう(島根)・200種類の変成岩(愛媛関川)・東洋のマチュピチュの砂金(愛媛別子)・橙色のガーネット(徳島眉山)・古生代の石灰岩(山口秋吉台)——これだけの多様な石の体験が詰まっている。四国・中国地方を旅するなら、「石の旅」として設計する価値が十分にある。


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