「チバニアン(Chibanian)」——地球の歴史の一時代が千葉県の地名で命名された。
2020年1月15日、国際地質科学連合(IUGS)が正式に承認した。77万4千年前から12万9千年前までの地質時代が「千葉時代」を意味するラテン語「チバニアン」と命名された——日本の地名が地質年代名に使われた史上初の快挙だ。地球の歴史117の時代区分のうちの1つに、千葉県市原市の地名が刻まれた。
なぜ千葉が選ばれたのか——答えは地層の中にある。市原市・養老川沿いの崖に露出する77万年前の地層には、地球史上最後の「地磁気の逆転」の痕跡が世界で最も明瞭に記録されているからだ。

地磁気の逆転とは——方位磁針のN極が南を向いていた時代
現在、方位磁針のN極は北を向く——地球が大きな磁石になっているためだ。この地球の磁場を「地磁気」という。しかし地球の長い歴史を見ると、地磁気のN極とS極が何度も入れ替わっていることがわかっている——「地磁気の逆転」だ。
最後の逆転は約77万年前。それ以前は「方位磁針のN極が南を向く」状態が続いていた。この逆転のメカニズムは現在も解明されていない——地球科学最大の謎の一つだ。
| 地磁気逆転の記録 | 詳細 |
|---|---|
| 最後の逆転時期 | 約77万年前(松山-ブリュンヌ逆転) |
| 逆転前の状態 | N極が南を向いていた |
| 逆転後(現在) | N極が北を向く |
| 逆転の所要時間 | 数千〜数万年かけてゆっくり変化 |
| 解明状況 | なぜ逆転するかは現在も未解明 |
なぜ千葉の地層が選ばれたのか
チバニアンの基準地となった「千葉セクション」(市原市・養老田淵地区)には、複数の奇跡的な条件が重なっていた。
①**地磁気逆転の記録が世界で最も明瞭**——地層に豊富に含まれる酸化鉄(Fe₂O₃)が磁場の向きを記録しており、77万年前の逆転の「前・中・後」が色の違いとして肉眼でも確認できるほど鮮明だ。②**堆積速度が速い**——房総半島の地層は日本の山地から土砂が盛んに海に流れ込んで堆積したため、細かい時期ごとの変化が詳細に記録されている。
③**深海底が陸上に露出している**——水深500〜1,000mの深海底が地殻変動で隆起して現在は崖として露出しており、目の前で直接観察できる。この3つが重なった場所は世界的に極めて珍しい。
白尾凝灰岩層——地層の境界を示す「時計」
地層の崖面には「白尾凝灰岩層(Byk-E)」と呼ばれる白い筋が斜めに走っている。これは77万年前に長野県の古御岳火山が噴火した際に降り積もった火山灰層だ——この白い筋が「チバニアン開始の境界」を示すマーカーだ。
2022年5月21日、地層の崖に「ゴールデンスパイク」——金色の小さな金属製標識——が正式に打ち込まれた。地質年代の境界を示す「世界で一か所だけの目印」で、チバニアンの始まりを示す地点に刻まれた。石好きとして「この金色の点が、地球の時間の区切りだ」という感覚は格別だ。

千葉の地層と化石——房総半島が「地学の宝庫」である理由
チバニアンの地層以外にも、千葉(房総半島)は地学的見どころが豊富だ。
| スポット | 地質的見どころ |
|---|---|
| 養老川流域・田淵地区(市原市) | チバニアン地層・ゴールデンスパイク。見学無料。土日は案内員あり |
| 鋸山(のこぎりやま・鋸南町) | 凝灰岩の採石場跡。房州石(ぼうしゅうせき)の切り出し跡が圧巻 |
| 布良海岸(館山市) | 遠洋の海底堆積物がチャートになった地層。黒い縞模様が美しい |
| 木下貝層(きおろしかいそう・印西市) | 約12万年前の温暖期に内湾だったことを示す貝化石の層。貝化石が密集 |
鋸山の「房州石(ぼうしゅうせき)」——千葉県産の凝灰岩で、軽くて加工しやすいため江戸時代から東京(江戸)の建築材料として広く使われた。日本橋・東京駅・浜離宮などの近代建造物にも使用された——チバニアンの地層があるのと同じ房総半島から、建築文化も生まれた。
よくある質問
Q. チバニアンの地層を見学できますか?
千葉県市原市・養老田淵地区の「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」は一般公開されている(見学無料)。土日は案内員が説明してくれる日もある。最寄り駅はJR内房線・五井駅から小湊鉄道乗り換え・月崎駅下車(徒歩約15分)。駐車場あり。2022年に設置されたゴールデンスパイクも見学可能。
Q. 「地質年代」に日本の地名がつくのはなぜ珍しいのですか?
地球の歴史117の時代区分はほとんどがヨーロッパの地名・地層に由来する(カンブリア紀=ウェールズのラテン語名、ジュラ紀=フランス・スイスのジュラ山脈など)。アジアの地名が採用されたのはチバニアンが初めてだ。競合したイタリアの2地点を抑えて認定されたことで、地球科学での日本の研究水準が世界に示された。
石好き次郎から
「地球の時代の区切りが千葉の崖にある」——この事実が信じられなかった。しかし養老川沿いの崖に立って、赤・黄・緑の杭と白い火山灰の筋を見たとき——「この石の中に地球の磁場の記録がある」という事実が体で分かった。石は情報を持っている。77万年分の地球の歴史を読む鍵が、千葉の地層の中にある。


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