笹洞鉱山は、自由に石を拾える場所ではない。ガイドが同行するツアーに予約して参加する、運営された鉱山跡だ。岐阜県下呂市金山町。目当ての石は蛍石——紫外線を当てると青く光る石だ。
集合場所から片道約20分、緩やかな林道を歩いて現地に入る。川辺で約1時間20分発掘し、坑道内でブラックライトによる観察も約15分ある。往復の移動を含めると、全体でおよそ3時間半のツアーになる。宝石探し施設の「その場で掘って終わり」とは違う、山行に近い体験だ。

笹洞鉱山ツアーは自由採集ではない
鉱山は私有地で、運営会社がガイド付きツアーとしてのみ体験を提供している。個人で立ち入って採集することはできない。参加には事前予約が必須で、公式の予約ページから申し込む。予約は開催月の約2か月前から受付が始まり、開始タイミングは公式Instagramで告知される。人気が高く、受付開始直後に埋まることも珍しくない。
料金・予約・参加条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| シーズン | 3月〜10月末 |
| 時間 | 午前の部 8:30〜12:00頃/午後の部 13:00〜16:30頃(いずれか選択) |
| 料金 | 高校生以上5,000円・4歳〜中学生2,500円 |
| 対象年齢 | 4歳以上。子どもだけの参加は不可 |
| 規模 | 1回あたり約6組、1組最大6人、原則1組1台で来場 |
| 持ち帰り | 1人にバケツ1個(約1kg分)。母岩は別枠で1個まで持ち帰り可 |
| 支払い | 現金・クレジットカード・QRコード決済に対応 |
予約開始日時は公式サイト・Instagramで告知される。行きたい月がある場合は、開始直後にアクセスできるよう準備しておくといい。行きたい日が埋まっていても、直前に空きが出ることがある。持ち物の基本は石拾いが変わる道具たちも参考になるが、掘削道具の持ち込みは林道保護のため禁止されている点だけ先に押さえておきたい。
蛍石を探す3時間半の流れ
集合場所は「菅田集学校」(旧菅田小学校)の2階・旧理科室だ。受付を済ませ、道具をレンタルしたら、車で移動する。そこから緩やかな傾斜の林道を、徒歩約20分歩いて現場に向かう。木々に囲まれた道で、日陰が多い。
現場に着いたら、川辺でザルとスコップを使って蛍石を探す。発掘時間は約1時間20分。その後、坑道内でブラックライトを使い、光る鉱石を観察する時間が約15分ある——この坑道見学は辞退して、発掘を続けることもできる。移動を含めた全体で、およそ3時間半のプログラムだ。

長靴、手袋、長袖長ズボンが必要な理由
川辺での発掘なので、長靴か同等の防護、濡れてもいい服、手袋が必須になる。掘削道具の持ち込みは禁止されていて、ザルやスコップなど、主催者が用意したものを使う。
足元にはマムシの危険がある。長ズボンと長靴、またはゲーターは必ず身につける。危険生物への備えは石拾いの現場にいる危険生物にもまとめた。夏場、金山町は気温36度を超える日もある。ヒルは天気が良い日にはあまり出ないというが、暑さ対策の方を優先した方がいい。水分と塩分を多めに用意しておく。
UVライトは何に使うか
蛍石は紫外線を当てると光る性質を持つ。坑道内の観察に使うUVライトは、現地でレンタルできる(1本500円)。持っていれば自前のものも使えるが、初めてならレンタルで十分だ。
雨の日を「好条件」と思い込まない
雨の方が石を探しやすいという説明を見かけることがあるが、この記事ではそれを勧めない。雨天でもツアーは原則実施されるが、荒天時は中止になる。増水、足元の滑りやすさ、冷えのリスクは、晴れの日より確実に上がる。安全に楽しめるかどうかは、当日の判断に委ねられる。
蛍石とは何か
蛍石はフローライトとも呼ばれる。立方体に割れる性質(劈開)を持ち、紫外線を当てると光る個体があることで知られる。ただし、すべての蛍石が同じ色・同じ強さで光るわけではない。ツアーで見つかるのは、白っぽいものや緑色のものが多く、紫色は珍しいとされる。紫色の蛍石は、光る個体が少ないとも言われる。
主成分はフッ化カルシウム。純粋な結晶は無色透明で、実は光らない。不純物として微量の希土類元素が含まれているからこそ、紫外線を当てたときに発光する。「蛍石」という名前は、暗い場所で火にくべるとパチパチと音を立てて蛍のように光ることに由来するという。
現地の説明では、蛍石の結晶が先にでき、その周りにメノウが固まったものが多いという。
鉄鋼を支えた鉱山の歴史
この一帯は、昭和15〜16年頃からマンガン鉱山として採掘されていた。笹洞鉱山という会社の鉱山開発担当者が、坑道の中で蛍石の鉱脈を発見したのが始まりだという。採掘権はその後、松下鉱山に移り、昭和30年から本格的な採掘が始まった。
採掘された蛍石は、鉄を溶かす温度を下げる融剤として使われた。愛知県春日井市の大同鋼業(現・大同特殊鋼)などへ出荷され、戦後の製鉄業を支えた石の一つだったという。ピーク時には、日本国内で産出される蛍石の大半がこの一帯からだった、とも言われる。昭和46年、鉱脈が細くなって採掘量が減り、閉山した。今、ツアーで歩く谷は、かつて多くの人が働いていた現場でもある。
菅田集学校への行き方と駐車場
集合場所は菅田集学校(岐阜県下呂市金山町菅田桐洞117)。駐車は集学校の体育館側を使う。トイレも集学校内にある。早く着きすぎても、周辺にトイレがない点は覚えておきたい。
公共交通は選択肢が限られる。飛騨金山駅からの旧路線バスは廃止されており、今は予約制のデマンドバスがあるが、日曜は運休する。送迎の可否は時間帯によって条件が異なるため、電車で向かう場合は、参加枠を決める前に交通手段を先に確定させておいた方がいい。車での来場が現実的だ。

見つけた蛍石を家で観察する
母岩は別枠で1個まで
蛍石の結晶が別の岩にくっついたまま見つかることがある。これを母岩と呼ぶ。バケツの容量とは別に、母岩は1個まで持ち帰ることができる。大きな母岩に当たれば、それだけで記念になる一品だ。
蛍石は柔らかい石なので、洗うときは水と歯ブラシで十分だ。ゴシゴシ擦らず、優しく汚れを落とす。取れにくい黒い汚れは、鉱石が浸かる量のハイターにしばらく浸けておくと落ちやすくなる。半日から丸1日が目安だ。
自宅にブラックライトがあれば、暗い部屋で光り方を確かめられる。同じ蛍石でも、個体によって光の強さや色が違う。持ち帰った石を並べて見比べると、現地では気づかなかった違いに気づくことがある。他の石の磨き方は手磨きのコツと手順にもまとめた。
よくある質問
Q. 4歳児を連れて行けますか?
参加条件は4歳以上で、子どもだけでの参加は不可。約2kmの林道を歩く体力が前提になるため、抱っこやベビーカーでの移動が必要な年齢では負担が大きい。
Q. 必ず蛍石が見つかりますか?
公式でも確約はされていない。ただしガイド付きで探すため、個人の自由採集より見つけやすいとされる。発掘時間は約1時間20分と決まっている。
Q. 雨の日は中止になりますか?
原則実施されるが、危険なほどの荒天時は中止になる。雨天が「狙い目」というわけではなく、増水や足元のリスクが上がる点に注意する。
Q. 自分の道具を持ち込めますか?
掘削道具の持ち込みは禁止されている。ザルやスコップなど、主催者が用意したものを使う。UVライトのみ、持参可能でレンタル(500円)もある。
石好き次郎から
普段、私は自然の川や海岸で石を探す。予約もガイドも要らない。だが笹洞鉱山は違う場所だ。私有地の鉱山跡に、運営が道を作り、安全を管理して、初めての人でも入れるようにしている。
自由に採れる場所と、管理された場所と、どちらが優れているという話ではない。蛍石という、紫外線で光る性質を持つ石は、そもそも自由に採れる場所がほとんどない。だから、ここに行く価値がある。
約1kgという持ち帰りの上限も、悪いルールだとは思わない。誰かが管理して、量を決めているから、次に来る人の分も残る。次の予約が数ヶ月先まで埋まっているのは、それだけ支持されている証拠だ。
坑道でブラックライトを消したときの暗さと、点けたときの青い光の対比——あの瞬間だけは、他のどの採集地でも味わえない。

公式確認先
予約方法・料金・持ち物のルールは変わることがある。訪問前に公式サイトで最新情報を確認するのが確実だ。
最終公式確認:2026年7月30日

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