今金町の川は、地区ごとに顔が違う。虎石と呼ばれる碧玉が出る川、緑色の凝灰岩が出る川、大理石が出る川。北海道の石拾いといえば歴舟川の砂金か島牧のメノウだが、道南の内陸にもう一つ、地味で層の厚い町がある。派手さはない。そのぶん、飽きない。
今金町へのアクセス
北海道瀬棚郡今金町。道南の内陸で、後志利別川とその支流が町を貫く。函館からも札幌からも、現実的なのは車だ。函館バスの路線バスも通り、「今金」「花石」「美利河」と地区ごとにバス停がある。ただし本数は少ない。時刻表を見ずに動くと、河原より停留所に長くいることになる。
この記事では、町公式が「拾える」と案内する石を地区ごとに並べる。ついでに旧石器時代の話もする。2万年前の人が選んだ石と、今の川の石は、ちゃんと地続きだ。

町公式「きれいな石シリーズ」6種と、拾える地区
| 地区 | 石 | 特徴 |
|---|---|---|
| 美利河・奥美利河地区 | 碧玉(地元名:虎石) | 色調は黄・黒・青など多彩。庭石としても好まれる |
| 花石地区(鉱山跡・私有地は立入不可)〜美利河地区 | メノウ | 鉱山跡・私有地には入らない。拾うなら美利河地区の川の転石 |
| 美利河地区 | 緑色凝灰岩(地元名:ゼオライト) | 火山灰が固まった岩石。川底で見られる |
| 美利河・奥種川地区 | 結晶質石灰岩(大理石) | 石灰岩が地中のマグマの熱で変質したもの |
| 白石地区(オチャラッペ川支流) | 安山岩 | 溶岩が冷えて固まった火成岩 |
| 御影地区・種川地区(採取不可) | 花崗岩(御影石) | 庭石・墓石として古くから採掘。現在も採石場が稼働中で立入不可 |
町公式の6種のうち、花崗岩だけは別だ。御影・種川地区では今も採石場が動いていて、石はあるが、拾いに行く場所ではない。この記事でも採集の案内からは外す。
美利河・奥美利河の虎石
虎石は、正式には碧玉(ジャスパー)。玉髄の仲間で、美利河地区と、その上流の奥美利河地区の川で拾える。色は黄色だけでなく、黒も青も出る。濡れた河原では、そこだけ色が濃く沈んで見える。乾くと急に地味になる。
見分けの手がかりは二つ。光を通さない不透明さと、磨いたような滑らかな手ざわり。同じ玉髄の仲間のメノウは縞で見るが、虎石は塊全体の色ムラで見る。硬度は7前後。爪はもちろん、鉄でもなかなか傷がつかない。鉄が負けたところで、ただの茶色い石ではないと分かる。
花石から美利河のメノウ——鉱山として掘られた時代
花石という地名は、メノウや玉髄が「花のように美しく」河原に転がっていたことから来ているという。明治10年代から昭和50年代まで、ここでは装飾品の材料として石が掘られた。加工場や商店が並び、薄く切ったメノウをコースターやループタイの留め具に仕立てていた。地名に石が残る町は、だいたい石で食べていた町だ。
ただ、当時の鉱山跡や私有地には、今は入れない。拾うなら美利河地区の川で転石を探す。川のメノウは、山の塊が割れて流され、角を落としたものだ。白く曇った面の奥に、日にかざすと縞がうっすら透ける。見つけるコツは、色より透け具合。昔の地図を握って鉱山跡へ向かうより、川で一個ずつ日にかざす方が早い。
緑色凝灰岩とゼオライト、そして大理石
美利河地区の川底では、鮮やかな緑色の凝灰岩が目に入る。近くの長万部町国縫地区に、この岩石から浄化剤「ゼオライト」を取り出す工場があったため、地元ではゼオライトとも呼ぶ。石の名前が、製品の名前に負けた例だ。
美利河地区・奥種川地区の川では、結晶質石灰岩、つまり大理石も拾える。石灰岩が地中のマグマの熱で焼き直されたものだ。河原では白っぽく地味な顔をしている。割れ口を日に向けると、砂糖をまぶしたような細かい粒が光る。ナイフの先で簡単に傷がつくのも、虎石との見分けになる。地下で焼かれた過去は、その粒にだけ残る。

石と旧石器人——ピリカ遺跡とピリカ旧石器文化館
今から約2万年前、氷河期の今金町・美利河には、旧石器時代の人が暮らしていた。美利河ダムの工事に伴う土質調査で見つかったのが「ピリカ遺跡」だ。1994年に国の史跡になった。発掘で出た石器は11万点。河原で10個拾って満足している身としては、桁が違いすぎて笑うしかない。
旧石器人が石器に選んだ石は、8割以上が頁岩(泥が固まって薄く割れる石)で、メノウが1割弱。今の川で拾えるメノウと、同じ顔ぶれが混じる。北海道の黒曜石のように、遠くまで運ばれた石もある。いい石を選んで、担いで、割る。河原でリュックを重くしている私たちと、することはあまり変わらない。向こうは命がかかっていたが。
ピリカ旧石器文化館
遺跡の隣の文化館には、国の重要文化財に指定された石器が並ぶ。体験学習室の石器レプリカづくりは、申し込みなしで1個100円、20分ほど。本物の石を割る「石器づくり講座」は開催日が決まっていて、予約が要る。開くのは4月から11月で、月曜は休み。入館は無料だ。先に寄ると、河原の石が「材料」に見えてくる。
もう一つの歴史——美利河の砂金
後志利別川の上流には、10km以上にわたって砂金掘りの跡が残る。江戸時代前期に松前藩が掘り始めたとされ、美利河はその中心だった。ここの砂金は粒がとても細かく、「ぬか金」と呼ばれてきた。米ぬかの金。うまい名前をつけたものだ。道北と十勝の砂金の川は、北海道の川で金を探すに3本並べた。
明治20年代の後半には、砂金に代わってマンガンが掘られた。金、マンガン、虎石、メノウ、大理石。時代ごとに掘るものを替えながら、人がずっと入り続けてきた土地だ。
史跡区域の外では、有料の砂金掘り体験もある(5月〜9月、要問い合わせ)。石と金を一つの町で両方狙える。欲張りには都合のいい町だ。日本全国の砂金体験にも、他の産地をまとめた。
拾っていい場所と、ヒグマのこと
町公式の「拾える」は石の話で、川のどこへ入ってもいいという意味ではない。私有地・農地・採石場・工事区間・橋の周辺は避ける。花石地区の川は、採ってよいかを現地の表示で確かめる。史跡のピリカ遺跡の中では拾わない。決まりごとは、この段落だけ覚えておけば足りる。
北海道の川は、ヒグマの生息域と重なる。一人で沢に入らない。私も北海道の川には、できるだけ二人で行く。熊鈴やラジオなど音の出るものを持つ。増水したら近づかない。出かける直前に「ひぐまっぷ」など北海道の出没情報で、今金町まわりの目撃情報を見ておく。駐車場やトイレが分からない川も多いので、ピリカ旧石器文化館に先に聞いておくと話が早い。

よくある質問
Q. どの地区から回るのがいい?
A. 美利河地区だ。文化館に近く、虎石・緑色凝灰岩・大理石を同じ地区で探せる。迷ったらここ。
Q. 冬でも拾える?
A. 勧めない。川は雪の下で、文化館も12月から3月は閉まる。春から秋の町だ。
拾った石をどうするか
虎石も大理石も、まず水で洗って泥を落とす。虎石は磨くと色の境目がくっきり出る。手磨きのコツと手順を見ながら仕上げるといい。大理石は柔らかいぶん、傷もつきやすいが、磨くのも早い。地区と日付は必ずメモしておく。一年もたつと、どの川の石だったか本当に思い出せなくなる。
拾った石の洗い方にも、鉄分や泥の落とし方を詳しくまとめた。
石好き次郎から
2万年前の旧石器人は、歩いて石を探し、担いで運んだ。今の私たちは、車で数時間走ればその石が眠る川に立てる。ずいぶん楽になった。ただ、一個を選ぶ目の真剣さは、向こうのほうが上だったはずだ。
今金町は、水晶や翡翠のような派手な石が出る町ではない。地区の数だけ石の話がある町だ。虎石を1個ポケットに入れれば、町の歴史のかけらを一つ持ち帰ることになる。20年拾ってきて思う。こういう地味な町ほど、後から効いてくる。
公式確認先
石の案内や体験の中身、ヒグマの情報のもとにしたページを置いておく。変わっていたら、こちらが正しい。
- 史跡ピリカ遺跡 公式サイト
- 今金町公式|今金町のきれいな石シリーズ
- 史跡ピリカ遺跡公式|体験学習のごあんない
- 今金町教育委員会公式|北海道遺産「今金・美利河の金山遺跡」
- ひぐまっぷ|北海道ヒグマ出没情報(今金町含む)
最終公式確認:2026年7月30日

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