瑞浪・土岐川で1,800万年前の貝化石を探す——博物館受付から始める野外学習地

瑞浪・土岐川で貝化石を探す野外学習のイメージ

瑞浪の土岐川で1,800万年前の貝化石を探すなら、まず瑞浪市化石博物館の受付で届出をして、決められた「野外学習地」に入る。それ以外の河原では採れない。海のない岐阜県で、海の貝を拾う。手順さえ踏めば、それができる。

場所は博物館の南へ1.5kmほどの土岐川の河川敷。約1,800万年前の地層が川べりに顔を出す。やることは、用紙に名前を書いて、立入証を首から下げるだけだ。

石好き次郎
展示ケースの中の化石は、完璧すぎて、かえって実感が薄い。河原の泥岩から自分の手で出した一個なら、同じ種類でも、きっと違って見える。
場所岐阜県瑞浪市・化石博物館南方約1.5kmの土岐川河川敷(指定野外学習地)
駐車場建物周辺になし。階段下の瑞浪市民公園駐車場を利用
トイレ化石博物館内にあり
採集可否可。ただし当日、博物館受付での届出と立入証の携帯が必要
子ども向け○ 小学生以下は保護者同伴。日陰がないため熱中症対策必須
最終確認日2026年7月
目次

土岐川のどこでも採集できるわけではない

決まりの話はここにまとめる。この一帯は「明世化石・瑞浪化石産地」という県と市の天然記念物で、区域の中では原則掘れない。例外が、博物館が決めた野外学習地の区間で、届出をすれば入れる。河原の別の場所でハンマーを出すことはできない。

最初に化石博物館で受付する

項目内容
場所化石博物館の南方約1.5km、土岐川河川敷の指定区間
地層の年代約1,800万年前
利用手順当日、博物館受付で立入届を記入。届出後に立入証が発行される
利用時間9:00〜16:00(受付は15:00まで)。移動時間を含めて2時間程度が目安
休止日博物館の休館日(月曜、月曜が祝日の場合は火曜、祝日の翌日、年末年始)は利用不可
天候条件雨天時・土岐川増水時は利用不可の場合あり。晴れていても増水で不可になることがある
対象小学生以下は保護者同伴
道具ハンマー(かなづち)・平タガネ・軍手・ゴーグルを持参。貸出・販売なし

見落としやすいのは時間だ。歩いて、着いて、道具を広げたら、叩ける時間は1時間半ほどしかない。一日がかりのつもりで行くと、拍子抜けする。1時間半で1cmの貝を探すと決めて行けば、ちょうどいい。

石好き次郎
届出と聞くと面倒に思える。だが名札を下げて入る河原は、裏を返せば、守られてきた河原だ。1,800万年前の海の底に、順番に入れてもらう。

1,800万年前の瑞浪に何がいたか

瑞浪の昔は、もう少し細かく分かる。約2,000万年前は湖で、植物の化石が出る。約1,800万年前は浅い海で、ビカリアが出る。約1,500万年前には深い海になり、深海の貝やウニが出る。ずいぶん大がかりな模様替えを済ませた土地だ。

そのビカリアは、トゲのある巻貝だ。マングローブの茂る、熱帯から亜熱帯の汽水域にすんでいたと考えられる。1,800万年前の瑞浪には、南の島のような海辺があったことになる。いまの冬の瑞浪からは、ちょっと想像しにくい。

野外学習地で出る主な化石は、ウソシジミ、イシカゲガイ、フジタバイ、ホタテガイなど。過去にはきれいなサメの歯や、大きなクジラの化石が出た例もあるという。期待はしていい。当てにはしないほうがいい。

サメの話を少しだけ。瑞浪からは50種類近いサメやエイの仲間の化石が出た。軟骨の魚なので、背骨やアゴは残りにくい。残るのは硬い歯だ。野外学習地の歯は1ミリから1センチ。歯を見れば種類が分かる。小さいが、名札付きの化石だ。

初心者が見つけやすい小さな貝化石

初心者が見つけやすいのは1cmほどの小さな貝だ。大物を掘り出そうとせず、転石の表面に浮かぶ筋を探す。ウソシジミは横に、イシカゲガイは縦に筋が走る。筋の向きを覚えるだけで、見分けの半分は済む。

フジタバイ、ホタテガイもよく出る。名前が分からなくても、まず「貝の形をした跡」を探せばいい。1cmの筋を探して、大人が河原に顔を近づける。はたから見ると、コンタクトレンズでも落とした人にしか見えない。

「月のおさがり」——お月様の落とし物と呼ばれた化石

瑞浪のビカリアには、変わった呼び名がある。「月のおさがり」。この「おさがり」は「おとしもの」、つまり糞のことだ。お月様の落とし物。上品に聞こえて、中身はなかなかの名前だ。

正体は、ビカリアの殻の中身だ。貝の内側に方解石などが沈み、地層が固まるあいだにオパールやメノウに置き換わった。殻がなくなり、中の形だけが残る。ガラスのような光沢と、乳白色の透明感。オパールとメノウの名前が出てくると、商いの癖で、どうしても耳が立つ。ここまで来ると、化石というより宝石の話だ。日本のオパールがほかにどこで出るかは、日本のオパールの産地で。

昔の人は、これが巻貝の中身だとは知らない。月から落ちてきたと考え、民話にしたり、拝んだりした。江戸時代には平賀源内も書物に書き留めた。これほどきれいな状態で出るのは、日本では瑞浪だけらしい。

1,800万年前のマングローブの貝が、江戸の人には月の落とし物に見えた。どちらも間違いではない気がする。見る人の知識が、石の名前を決める。

パレオパラドキシア——土岐川の河床から出た全身骨格

瑞浪の化石で、いちばん大きな話はこれだ。パレオパラドキシアという、絶滅した哺乳類がいる。1950年に隣の土岐市で見つかった骨格が、世界で最初の一体になった。実物は国立科学博物館にあり、瑞浪の博物館では復元骨格の複製が見られる。

2022年には、瑞浪市内の土岐川の河床で、パレオパラドキシア科の全身骨格が見つかった。頭から腰まで背骨がつながり、上下のあごがかみ合ったままの高齢の個体。2年ほどのクリーニングを経て、いまは常設展示されている。年寄りになるまで生きて、そのあと気の遠くなるほど長く、川底で待っていたわけだ。

同じ土岐川で、こちらは1cmの貝を探す。川は同じでも、出てくるものの桁が違う。だからといって、河原で大物を狙ってハンマーを振り回すのは筋違いだ。大物は、博物館で会えば足りる。

ハンマーを使う前に転石を見る

いきなり地層を叩かない。まず河原の転石を眺める。川の流れで勝手に割れて、貝の断面がのぞいている石がある。叩くのは、見つけてからでいい。割るときはゴーグルをして、周りに人がいないのを見てから振り下ろす。道具の基本は石拾いが変わる道具たちに。

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石好き次郎の見立て
私もハンマーは使う。泥岩の層を割るなら、片方が平たい刃になったフラット型が扱いやすい。平らな面で軽く叩いて割れ目をつくり、刃を層に沿って入れる。重さは、手に合うものを選ぶ。振る前に、ゴーグルを先にかける。

晴れても、川が太っていたら入れない

雨が上がっても、川が濁って速ければ入れない。博物館が開いていても、だ。上流で降った雨は、晴れた瑞浪にも遅れて届く。空ではなく、川を見て決める場所だ。

野外学習地には日陰が無い。夏は水を多めに持つ。体調が悪い日は行かないよう、博物館も案内している。増水の見分け方は晴れていても川は増水するに書いた。

過度な採集はしない

博物館は「最近、過度に化石を採集する方が見られる。そのような方には許可を出さないことがある」と書いている。1cmの貝を袋いっぱい持ち帰って、どうするのか。数個で、家の棚は十分にぎやかになる。

化石博物館へのアクセス

電車ならJR中央線・瑞浪駅から歩いて約30分、タクシーで約5分。車なら中央自動車道・瑞浪ICから約3分。河原の前に、まず博物館だ。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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