砂金のじゃま者だったプラチナ——北海道の砂白金と、いまも見つかる新鉱物

砂金と砂白金(イメージ)

砂金のじゃま者として捨てられていたのは、砂白金(さはっきん)だ。川底に金と一緒に沈む、銀灰色の重い粒。光らないので、金を探す人には用がなかった。ところが正体は、金より高くなることもあるプラチナ、白金族の金属だった。

日本のプラチナは、鉱山から掘り出されたのではない。北海道の川砂から、砂金のおまけとして出てきた。その粒が、いまも新しい鉱物を出し続ける。その話を書く。

目次

砂白金とは——川砂に沈む白金族の粒

砂白金は、プラチナを主とする白金族の金属が、川砂の中で粒になったものだ。プラチナを含むかんらん岩や蛇紋岩が崩れ、雨で流されて川底に沈む。重いので、金と同じ場所にたまる。砂金の川で一緒に見つかるのは、要するに重さが同じ組だからだ。

ただのプラチナではない——40種の白金族鉱物

北海道の砂白金からは、これまでに40種を超える白金族鉱物が確かめられている。自然プラチナ、自然オスミウム、自然イリジウム、自然ルテニウム。東京大学物性研究所の研究者は、アマチュアの鉱物愛好家と組んで、この粒を調べ続けてきた。見た目は地味な粒なのに、中身はやけににぎやかだ。

石好き次郎
金色の粒は、見た瞬間に分かる。銀灰色の粒は、顕微鏡にかけるまで正体が分からない。河原では、目立たないやつほど話がややこしい。

「じゃま者」から「宝」への逆転

砂白金が初めて確かめられたのは、明治の中ごろの北海道だ。最初は砂金に混じる不純物で、しばらくは捨てられていた。

転機は大正時代。万年筆のペン先の、いちばん先に付く硬い玉——ペンポイントの材料に、白金族の金属が使えると分かった。捨てていた粒が、急に拾う粒になる。石の値打ちは、使い道が見つかった瞬間に変わる。

採り尽くされた歴史と、辛うじて残った鉱床

値打ちが分かると、今度は採られすぎた。第二次世界大戦中、白金族は工業の触媒に欠かせないとされ、人を大勢集めて掘った。北海道の砂白金はほとんど採り尽くされ、研究用の試料すら手に入りにくくなった。捨てられるか、採り尽くされるか。ずいぶん極端な粒だ。

主な産地は上川管内の雨竜川流域(幌加内など)で、夕張・深川・小平・苫前なども古くから知られた。それでも、乱獲を免れた鉱床がどこかに残っていないか。研究チームは苫前を含む南北70キロ・東西30キロの範囲を探し、8か所から砂白金を採った。出遅れた土地ほど、宝が残る。

2022年、新鉱物「苫前鉱」が見つかった

話は昔で終わらない。2022年、東京大学の研究チームが、北海道苫前町の海岸で採集した砂白金から新種の鉱物を見つけ、「苫前鉱(とままえこう)」と名づけた。プラチナと銅が一対三で結びつく、それまで知られていなかった組成だ。

大きさは20マイクロメートル(1000分の20ミリ)ほど。肉眼ではまず見えない粒を、透過型電子顕微鏡で結晶構造まで解いた。昔はじゃま者だった砂の中から、21世紀になってもまだ新顔が出てくる。捨てていた側は、立つ瀬がない。

石好き次郎
私は、こういう話が好きだ。もう調べ尽くされたと思われた足元の砂から、新しい鉱物が出てくる。石の世界は、まだ全部が分かったわけではない。だから川へ通うのをやめられない。

砂白金は自分で拾えるのか

結論から言うと、砂白金を狙って採るのは、まず無理に近い。日本でプラチナを商売で採る人は、もうほとんどいない。いまは北海道の一部の川で、ごく少し見つかるくらいだ。粒は小さく、色は銀灰色。砂金でさえ目を凝らすのに、こちらはさらに地味だ。

砂金砂白金
色金色に輝く銀灰色で地味
見分け比較的わかりやすい非常に難しい
産出全国の川北海道の一部が中心
正体ほぼ金40種以上の白金族鉱物の集合

現実的には、北海道の砂金掘り体験から入るのがいい。ウソタンナイやペーチャン川などの体験施設で、ゆり板という伝統の道具が使える。砂金の川は日本の砂金の川で、体験できる場所は全国の砂金体験で探せる。皿の底に光らない重い粒が残ったら、捨てる前に一度だけ眺める。それで十分だ。

北海道で砂金を掘ったことはある。あのとき皿の底に残った灰色の粒を、私はたぶん、ただの砂として流した。知らないというのは、そういうことだ。

石好き次郎から

砂白金の話でいちばん好きなのは、「じゃま者だった」ところだ。捨てられ、ペン先になり、戦争に使われ、いまは研究の宝。そのあいだ、粒のほうは何ひとつ変わっていない。

変わったのは、人の都合と技術のほうだ。奈良の二上山のサファイアも、研磨材のガーネットを採るついでに見つかった。だから私は、いま値がつかない石も、簡単には捨てない。順番待ちの石は、文句を言わずに待ってくれる。

石好き次郎
苫前鉱の粒は20マイクロメートル。皿の上では、見えないもののほうがずっと多い。見えないと分かっていて振るのが、砂金掘りの妙なところだ。
石好き次郎のおすすめ
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見えないと分かっていて振る皿に、何が残るのか。パンニング皿の底に残るもので、金のほかの重い粒の正体を一つずつ確かめられる。次に灰色の粒が残ったら、流す前に名前を当ててみる。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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