関川の河原で珍しい変成岩に出会う——愛媛県四国中央市の地質と観察会

愛媛・関川の河原と変成岩のイメージ

愛媛県四国中央市の関川には、地下深くまで潜って地上へ戻ってきた海の底の岩が、ふつうに転がる。赤いざくろ石、緑の角閃岩、地下深くでできたエクロジャイト。顔ぶれの違う変成岩が、一つの河原にこれだけ集まる。名前を聞いただけで、少しそわそわする。愛媛県全体の石・地質スポットは愛媛で石を探すにまとめている。

緑の粒は、ひすいの親戚。上流の山のかんらん岩は、製鉄所の炉の内側になった。そんな話も、この記事で順に書く。入口として一番確実なのは、愛媛県総合科学博物館の自然観察会だ。石の名前を、その場で詳しい人に聞ける。

石好き次郎
関川では、赤い粒が目に入ったら、まず足を止める。拾うかどうかは、そのあとで決めればいい。石のほうは何千万年も待ったのだから、こちらの数秒くらい待ってくれる。
場所愛媛県四国中央市土居町・関川河原
駐車場専用駐車場の案内は見当たらない。電車なら伊予土居駅から歩ける
トイレ河原にある前提にしない。駅で済ませておく
採集可否河原の転石を手で拾うのは自由。私有地・工事区間には入らない。最初の一回は観察会が確実
子ども向け公式観察会は小学生以上・保護者同伴で参加可
最終確認日2026年7月

採れる石と料金は、記事の最後の表にまとめた。

目次

関川はどこにあるか

関川は、愛媛県四国中央市(旧・土居町)を流れる川だ。上流に東赤石山(標高1,706m)を擁する赤石山系から発し、瀬戸内海へ注ぐ。予讃線の伊予土居駅・関川駅が最寄りで、四国中央市の中心部からも近い。

「関川」という名前の川は、全国にいくつもある。新潟の上越を流れる関川のほうが、川としてはずっと大きい。鉱物採集地として知られるのは、この愛媛県四国中央市の関川だ。地図で検索するときは、市の名前まで入れておく。入れ忘れると、画面が日本海側へ飛ぶ。

駅から歩ける河原に、地下数十キロの石が落ちている。少し古い資料(1998年)だが、採集地はJR予讃線の伊予土居駅から北へ約1km、河川敷のテニスコートのあたりだ。電車を降りて十五分も歩けば、地底深くまで潜った石の横に立てる。移動の手間と石の深さが、まるで釣り合わない。

なぜここに珍しい岩石が集まるのか

関川が流れる一帯は、三波川変成帯という地質帯にあたる。関東から九州まで帯状に続く、日本を代表する広域変成帯の一つだ。低温・高圧の環境で姿を変えた岩石が、この帯に沿って並ぶ。端から端まで同じ仲間の石が続いていると思うと、少し気が遠くなる。

名前は、四国ではなく関東から来た。「三波川」は、埼玉と群馬の県境を流れる神流川に、群馬県側から合流する川の名だ。愛媛の河原の石を、群馬の小さな川の名前で呼ぶ。地質の名前には、ときどきこういう遠回りがある。その神流川で拾える石は、群馬の神流川のほうで見られる。名前のふるさとの隣を流れる川だ。

上流の東赤石山のまわりには、東赤石かんらん岩体と、五良津(いらづ)緑簾石角閃岩体という、二つの珍しい岩のかたまりがある。三波川帯の中でも、いちばん深くまで沈んだ石が出る場所だ。エクロジャイト(榴輝岩)や、ざくろ石角閃岩。河原で赤と緑がやけに派手な石を拾ったら、たいていこの山の子だ。

どれくらい深く、いつの話か。エクロジャイトができるのは、地下40キロより深い高圧の場所だ。三波川帯の深い石は、およそ9000万年前に、そこまで沈んでいた。恐竜が歩いていた時代に地底にいた石が、いま河原で足に当たる。蹴飛ばしてから気づくと、少し申し訳ない。

上流で崩れたこれらの岩石が、川に運ばれて下流の河原に溜まる。山に登って露頭を探さなくても、河原を歩くだけでいろいろな変成岩に会える。川が、山の標本を下まで配達してくれるわけだ。河原で石拾いができるのは、だいたいこの仕組みのおかげだ。

石好き次郎
乾いた石の上のざくろ石は、茶色にくすんで見える。水際で濡らすと、赤がもどる。迷った石は、水まで連れていく。河原の鑑定は、だいたい水がやってくれる。

河原で見つかる主な岩石・鉱物

名称特徴
アルマンディンざくろ石角閃片岩の中に赤い多角形の結晶として産出。関川を代表する鉱物
柘榴石角閃岩ざくろ石と角閃石が大規模に集まった岩石。造岩鉱物の角閃石がここまで目立つのは珍しい
紅簾石片岩紅色の紅簾石を含む片岩。関川では特に鮮やかな発色の標本が出ることがある
エクロジャイト(榴輝岩)赤いざくろ石と緑の輝石(オンファス輝石)からなる高圧変成岩。地下深くで形成された石
碧玉(ジャスパー)不透明な玉髄の一種。関川では赤みの強い個体が知られる

どれも、三波川変成岩類という同じ一族だ。一族のくせに、色も顔つきもまるでそろわない。関川のざくろ石を全国の赤い粒と比べるなら、日本のガーネット産地が早い。

見分けの手がかり——赤い粒とエクロジャイトの緑

赤い粒が集まって見える石は、たいていアルマンディンざくろ石が入った角閃片岩だ。緑と赤が入り混じった重たい石なら、エクロジャイトの可能性がある。どちらも見た目が派手で、初めてでも見分けやすい。地味な石の多い河原で、ここの石は珍しく自己主張が強い。

エクロジャイト——緑の粒は、ひすいの親戚

愛媛の「県の石」は、東赤石山周辺のエクロジャイトだ。日本地質学会が都道府県ごとに選んだものだ。ふつうはぽつぽつとしか出ないこの石が、東赤石山のまわりでは数平方キロの広さで分布する。関川は、その県の石が河原に下りてくる川でもある。県の代表が、河原にふつうに転がる。ずいぶん気さくな県の石だ。

エクロジャイトは、ひすいの成分を含む輝石(オンファス輝石)と、ざくろ石でできた岩だ。赤と緑のまだらの、緑の側が、ひすいの親戚というわけだ。

ただし、糸魚川の翡翠と同じ石ではない。翡翠の主役はひすい輝石で、関川の緑はオンファス輝石。同じ輝石の仲間でも、別の鉱物だ。河原で緑の粒を見つけても、「翡翠が出た」とは言わない。緑の石に翡翠の名札を付けたくなる気持ちは、よく分かる。分かるから、付けない。

エクロジャイトは重い。比重は3.4ほどある。河原のふつうの石より、三割近く重い。見た目は地味でも、手のひらは正直だ。

ざくろ石と、長く伸びる緑の柱

最初に目が行くのは、赤い粒だ。関川でいちばん見つけやすい、ざくろ石(鉄ばんざくろ石)だ。角閃岩の中に入る赤い結晶で、多くは径1cmくらい。

もう一つが、アクチノ閃石。長い柱の形をした緑の鉱物で、白い滑石といっしょに出ると大きく育ち、長さ5cmを超えることもある。赤い粒ばかり追いかけていると、この緑の柱を見落とす。

東赤石山——かんらん岩の山と、溶鉱炉のレンガ

関川の石の出どころ、東赤石山には、もう一つの顔がある。鉱山だった。北側の斜面の中腹に、赤石鉱山という採掘場があった。

掘っていたのは、はじめはクロムの鉱石。のちに、その母岩のダナイト(ダン橄欖岩)が主役になった。鉱床が見つかったのは明治の終わりで、昭和61年まで掘られた。明治から、昭和もほとんど終わるころまで。山ひとつと、ずいぶん長く付き合った鉱山だ。

使い道は、八幡製鉄の溶鉱炉に使う耐火レンガ。掘った石は、中腹から麓の集落まで約7kmの架空索道で下ろし、トラックで新居浜港へ運んだ。山の石を、ロープで空中から下ろす。考えた人も、運ばれた石も、なかなか大胆だ。

関川の河原で拾う石の親にあたる山の石が、製鉄所の炉の内側にもなっていた。地下深くの熱をくぐった石が、今度は人の作った炎に耐える役に回ったわけだ。石の人生は、思ったより忙しい。

愛媛県総合科学博物館の自然観察会

愛媛県総合科学博物館は、「関川の岩石・鉱物」という自然観察会を開いてきた。例年秋頃に、現地集合・現地解散の形だ。

項目内容(過去開催実績)
場所関川河原(四国中央市)※現地集合
対象小学生以上(小学生は保護者同伴・保護者の申込みも必要)
定員35名程度
参加費150円
準備物野外活動に適した服装、軍手
講師大学の研究者(回により異なる)

参加者はハンマーで石を割り、配られた写真や標本と見比べながら、講師や学芸員に何の岩石か教えてもらう。答え合わせがその場でできるのは、観察会ならではだ。開催日や申込方法は回ごとに変わるので、博物館の公式サイトのイベント情報を見ておく。

一人で関川の河原を歩くなら

県の博物館が毎年のように観察会を開くほど、関川は鉱物の多い河原だ。一人でも、歩けば何かしら赤い粒に会える。

決まりの話は、ここで一度だけ書く。ふつうの河原で、転がる石を手で拾うのを止める法律はない。入らないのは、私有地と工事の区間、橋の下まわりだ。ハンマーを使うなら河原の転石だけにして、岸の岩は叩かない。

石好き次郎
決まりより先に気にするのは、水かさだ。山から海まで短い川は、上で降った雨がすぐ下りてくる。足元の石より、上流の空を見る。

増水とハンマーの破片

河原は、増水すると足元が一気に崩れる。ハンマーで石を割るときはゴーグルをつけ、周りに人がいないのを見てから振り下ろす。破片は、思ったより遠くまで飛ぶ。

危険生物への備えは石拾いの現場にいる危険生物、道具の基本は石拾いが変わる道具たちで足りる。

よくある質問

Q. 子どもと一緒に行ける?
観察会は小学生以上で、小学生は保護者と一緒に申し込む。個人で河原を歩くなら、増水と足場を考えて、未就学児には向かない。

Q. ハンマーがなくても楽しめる?
転石の表面を見るだけでも、赤いざくろ石の粒は見つかる。割ると新しい断面が見られるが、必須ではない。割らずに眺めて帰る一日も、それはそれでいい。

石好き次郎から

関川の河原は、遠目にはただの灰色だ。近づくと、灰色の中に緑の片岩が混じり、その中にぽつんと赤がいる。赤を見つけたら、しゃがむ。しゃがむと、隣にもう一つ赤がある。そうやって、気づくと同じ場所から動けなくなる。

粒一つで、その石が地下で何をくぐってきたかが分かる。見た目は派手なのに、話は地味に深い。重たい石ほど、話も長い。

私はまだ観察会に参加したことがない。河原には立ったが、講師の横で歩いたことはない。だから、この記事は「行けば分かること」より「調べれば分かること」に絞って書いた。観察会に出たら、また書き直す。

派手な産地ではない。観光地でもない。ただ、一つの河原でこれだけ種類の違う変成岩に会える場所は、日本でも数えるほどだ。この記事を書きながら、いちばん河原に戻りたくなったのは、たぶん私自身だ。

石好き次郎
地図で東赤石山から関川の流路をたどってみた。山から海まで、たった十数キロ。その短い距離を、何千万年分の圧力をくぐった石が転がり下りてくる。

スポット情報まとめ

場所愛媛県四国中央市土居町・関川河原
採れる石アルマンディンざくろ石・柘榴石角閃岩・紅簾石片岩・エクロジャイト・碧玉
難易度中級者向け(見分けに知識が要る)
料金河原は無料。観察会は150円程度(過去の実績)
Googleマップ地図・経路を開く
最終確認日2026年7月

公式確認先

行き方や料金のもとにしたページを置いておく。変わっていたら、こちらが正しい。

最終公式確認:2026年9月25日

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海を渡った徳島にも、同じ三波川帯の石がいる。徳島の紅簾石片岩と阿波の青石は、吉野川の河原で緑の片岩を拾い、眉山で赤紫の石のふるさとを見上げる話だ。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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