群馬の川原で宝探し。神流川・吾妻川・烏川の石

川原と石のイメージ
石好き次郎
神流川の深緑のチャートは、川の水で洗うと、蝋を塗ったような光沢が出る。20年拾っていても、濡れたチャートの色には毎回、少しだけ得をした気分になる。

群馬で石を拾うなら、まず神流川だ。変成岩・チャート・砂岩が拾える。この川の上流、神流町の岩肌には、日本で最初に見つかった恐竜の足跡が残る。ここがまだ水辺の砂浜だったころ、大きいのと小さいのが歩いた跡だ。群馬で石拾い、と聞いてもぴんとこない人には、先にこの話をする。足跡の残る山から流れてくる川で、石が拾える。

神流川は、群馬と埼玉の県境を流れる。埼玉の長瀞と同じ地質帯で、ガーネットや結晶片岩に当たることもある。関東の北西の角にある、地味だが顔ぶれの濃い川だ。

ひとつだけ、拾わない場所がある。ダムの真下の三波石峡だ。国の名勝で天然記念物、石の採取は禁止。名前の付いた巨石が並ぶ谷なのに、ダムができてから川に水が流れなくなった。銘石はアカとほこりで黒ずみ、流れが戻ったのは32年後だった。石にも、水が要る。拾うのは、そこから十分離れた中下流の河原だけにする。

三波石は、緑の地に白い筋が走る石だ。結晶片岩に石英や方解石の白い脈が入り、庭石として名が通ってきた。下流の河原で、緑に白い線の入った小石を見つけたら、それは峡谷の銘石の親戚にあたる。持ち帰っていいのは、河原の小石のほうだけだ。

神流川だけではない。吾妻川では砂岩・チャート・安山岩、利根川の中流では礫岩・砂岩が拾える。草津温泉のまわりは拾う場所ではないが、湯の花が育つ現場は見られる。

変成岩、チャート、砂岩、火山岩。群馬は石の種類が多い。東京から電車でも車でも2時間圏内に主なスポットがそろうので、日帰りで足りる。

目次

山の川は、石の教科書だ

長瀞で覚えた結晶片岩が、県境を越えた神流川の砂利にも混じる。山の地質が、そのまま河原に出る。地図の上の地質帯が、足元でつながる。

名前を覚えた石を、別の川で見つける。「あ、これ知ってる」と声が出る。石を見る目は、この小さな再会の積み重ねで育つ。

派手な石は出ない。そのかわり、石と顔なじみになれる。私には、そのほうがありがたい。

群馬で石拾いができる場所一覧

県内の主なスポットを、難易度とアクセスで並べた。神流川は埼玉との県境にあるので、長瀞と同じ日に回す手もある。電車だけで動く日は、烏川にする。

スポット名採れる石アクセス料金難易度
神流川(多野郡神流町・藤岡市)変成岩・チャート・砂岩・石英JR新町駅・群馬藤岡駅からバス無料初級
烏川(高崎市・藤岡市)砂岩・チャート・礫岩・石英JR高崎線・高崎駅無料初級
吾妻川(東吾妻町・中之条町)砂岩・安山岩・チャート・石英JR吾妻線・中之条駅無料初級
利根川中流(沼田市・渋川市)礫岩・砂岩・チャート・安山岩JR上越線・渋川駅無料初級
赤城山周辺(前橋市)安山岩・溶岩・火山岩JR両毛線・前橋駅無料初級
草津温泉周辺(吾妻郡草津町)観察のみJR吾妻線・長野原草津口駅無料観察

群馬の地質——なぜ神流川で変成岩・チャートが採れるのか

関東から九州まで続く地質帯の名前が、群馬の小さな川から来ている。神流川に群馬側から流れ込む、三波川だ。地図で探すと、拍子抜けするほど細い。三波川変成帯。長瀞の結晶片岩も、神流川の緑の石も、この帯の生まれになる。

海の底にたまった岩が、地下深くへ引きずり込まれる。高い圧力と低い温度で押しつぶされ、板を重ねたような結晶片岩になる。地下15〜30キロまで潜って戻ってきた石が、神流川では足元の砂利だ。ずいぶん遠回りをしてきた。

北へ上がると、河原の色が変わる。浅間山・榛名山・草津白根山から来た安山岩や溶岩、凝灰岩が増えて、灰色から黒っぽい石が目立つ。安山岩を割ると、白い粒がごま塩のように散る。砂岩や礫岩も混じるので、一つの河原で火山と海の両方を拾うことになる。

草津温泉のまわりは、強い酸性の火山地帯だ。硫黄の結晶や湯の花(硫黄化合物)が、温泉水から出てくる。草津温泉の鉱物については草津温泉の鉱物ガイドに詳しくまとめている。

並びは、南に変成岩帯、中部に堆積岩帯、北に火山帯。南から北へ移るだけで、河原の石が入れ替わる。

長瀞では岩畳の上から眺めるだけだった石が、神流川では足元で踏まれている。ここでは手に取って、裏返して、濡らして見られる。同じ帯の石でも、手に乗るかどうかで覚え方がまるで違う。目で覚えた石は忘れるが、指で覚えた石は残る。

神流川——群馬最大の採集地

私なら、群馬で最初に歩く川として神流川を挙げる。行ったとき、まず水がきれいだった。何を拾ったかより先に、それを覚えている。神流川は三波川帯という変成岩の地帯を流れ、緑がかった結晶片岩やチャートが拾える。

神流川は神流町から藤岡市へ下る。途中の鬼石という町の名前は、山に住んだ鬼が投げた石が落ちた土地、という言い伝えから来たらしい。石の川の町に、石の名前。できすぎた話だが、嫌いではない。

神流川の主役はチャートだ。乾いた河原では白く粉をふいたように見えて、赤も緑もくすんでいる。水に沈んだ石を見るか、手ですくって濡らす。とたんに赤・緑・黒・白が起きてくる。川で転がされて艶の出た玉石に、縞のくっきりした変成岩も混じる。並べると、地味な石ほど見栄えがする。

河原に降りて最初に目に入るのは、平べったい緑の石だ。結晶片岩は板のように割れるので、川で転がされても丸くならない。せんべいのような形で、砂利の上に寝ている。チャートは板にならず、ころんとした塊のまま転がる。形を見るだけで、半分は見分けがつく。

神流川では、化石に当たることもある。神流町のあたりには白亜紀の地層があり、川沿いの地層からは、貝や植物の化石も出る。化石らしきものを拾ったら、神流町の「恐竜センター」で見てもらえる。月曜は休館で、12月から3月末までは木曜も休みになる。センターでは化石さがしの体験も開かれる(神流町恐竜センターの化石さがし体験)。

恐竜の足跡は、神流町神ヶ原の岩にある。1985年に恐竜のものと公表され、いまは町の天然記念物で、県も「瀬林の漣痕」の名で天然記念物にしている。こちらは拾う石ではなく、見に行く石だ。河原の石に飽きたら、足跡のほうを見上げればいい。

電車なら、JR高崎線の新町駅か八高線の群馬藤岡駅から、日本中央バスの奥多野線で山へ入る。恐竜センターの前にも停まる。本数が少ないので、帰りの時刻を先に見ておく。車なら関越道の藤岡ICで降り、国道462号で神流川をさかのぼる。

神流川には下久保ダムがあり、ダム湖の神流湖をはさんで川の顔が変わる。上流の神流町、恐竜センターのある中里のあたりは山あいの川で、降りやすい河原がある。ダムの真下は三波石峡なので素通りし、鬼石から下流の開けた河原で砂利だまりを探す。変成岩・チャート・砂岩が一か所でそろうのは、こういう流れのゆるむ場所だ。

川の石は、下るほど小さく丸くなる。上流の中里のあたりほど角の残った石が多く、鬼石から下では卵くらいの玉石が増える。丸くなった石は色が見やすく、手にもなじむ。色をそろえたい日は下流、割れ口の新しい石を見たい日は上流。同じ川でも、立つ場所で拾う石の性格が変わる。

砂利だまりは、川が曲がる内側にできる。流れがゆるんで、運ばれてきた石がそこで降ろされる。上流側の端に大きめの石、下流側に細かい砂。その境目あたりが、色のそろったチャートを拾いやすい。しゃがむ場所を先に決めてから、石を見る。逆の順番でやると、一日がやけに短い。

神流川は、季節と水の具合で顔が変わる。夏(7〜8月)、晴れが続いたころは川床が広く出て、石が見やすい。春(3〜5月)は雪解けで水が多く、向かない。秋(9〜10月)は台風のあとで水量が変わりやすい。増水が引き、河川情報で安全を確かめてから行く。

拾ったチャートには、産地と採集日を書いておく。赤・緑・黒を色ごとに並べると、それだけで神流川の地質の見取り図になる。同じ河原で、色がここまでそろう。一回歩けば、袋がひとつ重くなる。

赤いチャートは、磨くと化ける。耐水ペーパーで番手を上げていくと、河原で濡れていたときの赤が、乾いても消えなくなる。硬度7なので時間はかかる。片岩にガーネットの粒が入っていれば、平らに磨いたところに赤い点が浮く。寒くなって川が遠くなる季節の、ちょうどいい手仕事だ。

神流川で採れる石の見分け方

チャートの見分け方。赤・緑・黒・白のどれか。表面に蝋のような艶。モース硬度7で、爪では傷がつかない。砂岩と迷ったら、表面を指でなでてみる。ざらつけば砂岩だ。

色の理由も、拾う楽しみになる。赤は細かい酸化鉄、黒は有機物、緑は緑泥石などの混ざり物だ。同じ海の底でも、積もったときの具合で色が分かれた。赤と黒が一つの石の中で縞になったものは、海の様子が途中で変わった跡になる。

変成岩は、縞で見分ける。灰色から緑灰色の地に、薄い層を重ねたような縞(片理)が走る。縞に沿って薄くはがれるのも癖だ。赤褐色の小さな粒が点々と入っていれば、ガーネットかもしれない。

迷う石には、無理に名前をつけない。チャートか石英か、砂岩か片岩か。家に帰っても決まらない石が、毎回いくつか出る。名前が決まらない石ほど、次の川へ行く理由になる。分からないまま持って帰るのも、石拾いのうちだ。

石英は白〜乳白色で、半透明のガラス光沢。砂岩はざらざらで、茶〜灰色。礫岩は小石が砂で固まった岩で、断面が面白い模様になる。神流川では、これが全部足元に混じる。一日歩けば、目が鍛えられる。

石好き次郎
変成岩を探しているのに、チャートばかり手に乗る。そんなときは、小さな支流の合流点を覗く。流れのぶつかる場所に、石は集まる。縞の入った石が固まるのは、たいていそういう所だ。

烏川・吾妻川——電車でアクセスできる採集地

車がない日でも、群馬の河原はあきらめなくていい。烏川と吾妻川には、駅やバスから近づける公園や河川空間がある。河原へ降りる場所は、公園の案内や立入の表示、水位を見て決める。思い立った日に行ける川があるのは、ありがたい。

烏川(高崎市〜藤岡市)は利根川の支流だ。砂岩・チャート・礫岩・石英が拾える。高崎駅から自転車で行ける距離に河原があり、電車派にはいちばん向いている。上野から高崎までは、新幹線なら1時間かからない。

烏川の河原は、神流川より灰色が勝って見える。上流が浅間山に近い山なので、灰色の安山岩が多い。そのあいだに、チャートの赤や黒が点々と落ちている。灰色の海で色を探す川だ。目が慣れると、赤い一個が向こうから目に入ってくるようになる。

烏川の河川敷は整備されていて、石の種類は神流川より少ない。砂岩とチャートの見分けを練習するには、ちょうどいい。下流の新町なら、JR新町駅の北口から歩いて15分ほどで新町烏川運動場に出る。隣の烏川ピクニック野草広場には、トイレと水道がある。河原から上がって手を洗える場所があるのは、地味に助かる。

烏川は、高崎の街歩きと組み合わせやすい。高崎白衣大観音、群馬音楽センター、高崎城址公園。午前は河原、午後は街。石に興味のない同行者にも、午後の予定ができる。

吾妻川(東吾妻町〜中之条町)は、JR吾妻線に沿って流れる川だ。砂岩・安山岩・チャートが拾える。中之条駅で降りて、自転車で川沿いへ出る。少し上流の東吾妻町には道の駅あがつま峡があり、日帰りの温泉もある。すぐそばの吾妻峡の渓谷は、拾う場所ではなく眺める場所だ。

吾妻川は、かつて「死の川」と呼ばれた。草津白根山のほうから強い酸性の水が流れ込み、魚が棲めなかった。いまは上流で石灰石の粉を毎日溶かし、中和してから流す。1964年に始まった、世界で初めての川の中和だ。胃薬を飲み続ける川と思うと、少し親しみがわく。河原には、火山から来た安山岩や溶岩のかけらが混じる。

石好き次郎
渋川には、私も行ったことがある。渋川の利根川は、礫岩の灰色が続く河原だ。色のある一個を探すなら、帰る前にもう一つ砂利だまりを覗く。割に合わない河原ほど、一個の色が目に残る。

利根川・赤城山周辺——多様な石が採れる選択肢

利根川は、群馬を大きく流れる川だ。赤城山のまわりでは、火山の石も混じる。川が大きい分、石は散らばる。狙いを絞りにくい川だと思って行けば、腹は立たない。利根川そのものの話は、利根川で石を拾うに書いた。

沼田から渋川にかけての中流は、礫岩・砂岩・チャート・安山岩。川幅が広く、河原も降りやすい。渋川は関越自動車道・渋川伊香保ICから近い。

赤城山は、歩きながら石を見る山だ。群馬を代表する火山で、山腹や山麓に安山岩・溶岩・スコリア(穴だらけの火山のかけら)が出る。前橋駅からバスで登山口まで上がれる。登山道の外へは入れない区域もあるので、石は道ばたの露頭と山麓の河原で見る。

赤城山のスコリアは、まず軽さに驚く。穴だらけで、見た目よりずっと軽い。同じ安山岩でも、穴の多さで重さがまるで違う。手のひらで比べるのがいちばん早い。

利根川の渋川〜沼田は、石の種類より気軽さの川だ。整備された河川公園があり、家族でも入りやすい。種類は少なめだが、川に磨かれた礫岩や安山岩の玉石は、並べると絵になる。渋川の伊香保温泉と組み合わせるのが定番だ。

草津温泉周辺——採集より観察の場所

草津温泉の周辺は、石を拾うより、火山と温泉が作る地質を観察する場所だ。強い酸性の温泉が、独特の地形を生んでいる。私は石拾いの帰りに温泉へ寄るのが好きだ。草津まで足を伸ばして、歩いた一日の締めに湯へ入るのも、群馬らしい旅になる。

湯畑では、木の樋を流れる湯の底に、黄色い湯の花がたまる。鉱物が今まさにできる場所を、柵の外から眺められる。湯の花は、土産物屋の棚に並ぶ。拾うものではなく、買うものだ。

石好き次郎
チャートを1個ずつ手に取って、水で濡らす。それだけの作業が、何時間でもできる。河原に誰もいなければ、なおいい。採集は、そういう時間だ。

群馬で拾う前に——場所・水量・道具

拾っていい場所、拾わない場所

ふつうの河原で、個人が手で少し拾うぶんは問題ない。拾わないのは三か所。神流川の三波石峡と、吾妻川の吾妻峡(どちらも国の名勝)、それに草津の湯畑のまわりだ。商売のために大量に持ち出すのは、話が別になる。

季節と水量

増水しやすいのは台風の多い9〜10月。吾妻川の上流には草津の強い酸性の水が流れ込む区間があるので、岸の様子を見てから入る。冬(12〜2月)は上流部が凍ることがある。積雪と凍結は出る前に調べておく。

必要な道具

基本の道具は軍手・バケツ・白い皿・ルーペ・着替え。白い皿は、チャートと変成岩の見分けに効く。神流川は砂利が多く歩きやすいが、支流との合流部には足場の悪い場所がある。

隣県では埼玉の長瀞や栃木の那珂川も好相性だ。

川原で拾った石が何なのか気になったら、川原で拾える石の種類一覧で色や模様から見分けられる。

石好き次郎から

地図の上で帯をたどると、三波川という同じ名前が、西へ四国、九州まで続いていく。全部の川に立てるわけではない。それでも神流川の緑の石を一個ポケットに入れておくと、ほかの川で似た顔に会ったとき、すぐに気づける。

草津には、拾いに行くのではなく、地球を見に行く。湯畑の硫黄が岩に付いて、黄色い結晶になる。億年単位で繰り返されてきた鉱物づくりの、今日の分だ。同じ湯畑でも、温泉客とは見ている場所が違う。たぶん、向こうのほうが正しい。

群馬・埼玉・栃木と関東の河原を回ってきて思うのは、群馬の石の幅だ。神流川のチャートは深海の記録で、浅間山の溶岩は今の火山。一つの県の河原に、億年単位の差が並ぶ。神流川のチャート、吾妻川の安山岩、烏川の砂岩。三つ並べるだけで、群馬の地質が机の上に出る。20年拾ってきても、群馬ではまだ知らない顔の石に会う。

神流川で、赤いチャートを一つ拾う。深海に積もった放散虫の殻が固まった、2億年前の海のかけらだ。上流の岩肌に残る恐竜の足跡より、まだ古い。拾わない理由がない。

公式確認先

料金や開いている日、道の具合は変わる。下は、書くときに開いた公式のページだ。

赤城山

吾妻川

烏川

神流川

最終公式確認:2026年7月23日

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神流川の赤いチャートを覚えたら、遠い川で同じ赤に会いに行く。四万十川で石を拾うは、清流の底に赤いチャートと緑の蛇紋岩が沈む川だ。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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