石川県で石を探す|能登の海岸・手取川・白山の地質観察スポットと採集ルール

海岸の岩場と礫のイメージ

石川県で石を探すなら、行き先は能登の海岸・白山山系・手取川の三つ。ただし能登には、2024年の能登半島地震の影響が今も残る。同じ県の中でも、行き先によって事情がまるで違う。

この記事は、石川県で「今どこに行けるか」を整理する入口だ。金沢の金箔と能登の地質は、ここでは深追いせず、それぞれの記事へ送る。

北陸4県の全体像は北陸4県の海岸と川原へに、全国の地方別入口は地方から選ぶ石拾いマップにまとめている。石川から他県へ広げるなら、そちらが早い。

石好き次郎
地図で見ると、石川は細長い。北の能登の珪藻土と、南の白山の化石壁では、できた時代が一億年以上ずれる。県境の内側だけで、時間旅行ができる。

石川は、たくさん拾える県ではない。そのかわり、石の話が異常に濃い。日本の地質学はこの県で始まり、恐竜の時代の地層が残り、百万年以上前の貝が色を保ったまま石になった。

目次

石川県、エリア早見表

エリア内容今の状況
能登半島(奥能登:珠洲・輪島・能登町・穴水/隣接:志賀・七尾)海岸の地質観察2024年地震の影響が残る。復旧状況は地域差が大きい
能登島・志賀町周辺海岸の地質観察復旧は進むが、七尾・志賀も被害は大きく、場所ごとに差がある
白山古生代変成岩・花崗岩・新生代安山岩登山・観察地。日本三名山の一つ
手取川河原の地質観察個人少量は自由使用が基本(白山の保護区・私有地は別)
金沢周辺金箔の歴史・地質観察金箔体験施設あり

能登半島——今、行けるところと復旧中のところ

2024年1月の能登半島地震で、奥能登(珠洲市・輪島市・能登町・穴水町の2市2町)は大きな被害を受け、今も復旧が続く。隣の志賀町・七尾市も含め、道路や施設の様子は場所ごとに違う。石は何年でも待つ。先に調べるのは道のほうだ。

道路は石川県公式:能登半島地震・道路情報、観光はほっと石川旅ねっと:能登の現状に、今の様子が出る。石の話は、そのあとでいい。

珪藻土の崖や奇岩、地震のあとの海岸の変わり方は、能登半島の地質を歩くで一本にした。

能登の石は、暮らしの道具にもなってきた。珠洲では、大昔の珪藻がたまった珪藻土を坑道から切り出し、七輪を作る。切り出しの技は珠洲にしか残らず、2022年に市の無形民俗文化財になった。拾う石ではなく、火を入れる石。その作り手も地震で大きな被害を受け、再開の状況は事業者ごとに違う。

県の石が二つ、能登にある

石川の県の石は三つある。そのうち、岩石の珪藻土と、鉱物の霰石(あられいし)の二つが能登から出た。残る化石の大桑層だけが金沢だ。県の石にしては、ずいぶん半島びいきの配り方になった。

能登の珪藻土は、珪藻という小さな藻の殻が、数えきれないほど積もってできた泥岩だ。埋蔵量は日本一。足もとの地層を、そのまま台所へ持ってきたような話だ。

霰石のほうは、能登町恋路(こいじ)の玄武岩の気泡の中で育った、薄紅色の六角柱の結晶だ。恋路海岸から見附島までの浜は「えんむすビーチ」と呼ばれる。縁結びの浜の岩の中に、桃色の結晶。話ができすぎだが、選んだのは地質学会だ。

見附島——珪藻泥岩でできた「軍艦島」

珠洲市宝立町の浜の先に立つ見附島は、珪藻泥岩の地層でできた小島だ。軍艦に似た形から、「軍艦島」とも呼ばれてきた。全長162.5メートル。この小数点に、測った人のまじめさが出る。県の天然記念物と名勝でもある。

その軍艦が、2024年の地震で南東側の半分を失った。もともと、やわらかい岩が風化と浸食で削られてできた島だ。削られてできた島が、揺れでまた削られた。石の側から見れば、いつもの仕事の続きなのかもしれない。

地震で海岸が陸になった

同じ地震で、能登の北側の海岸が持ち上がった。輪島市の皆月湾のあたりでは約4メートル上がり、海だった所が幅200メートルほど陸になった。

西から北の海岸を合わせると、陸になった範囲は4平方キロあまり。能登の海岸段丘は、こうした隆起のくり返しでできたらしい。

地質の本なら「数十万年かけて」と一行で済ませる出来事の、その一回分が、2024年の元日に起きた。面白い、とは軽々しく言えない。ただ、能登の段丘の写真を見る目は、もう前と同じではいられない。

白山と手取川——複雑な地質を持つ内陸エリア

白山は、古生代の変成岩・花崗岩と、新生代の安山岩が重なる複雑な山だ。日本三名山のひとつで、一つの山で複数の地質時代が見られる。手取川はその白山を水源とする川で、上流から運ばれたいろいろな岩が河原に並ぶ。山に登らなくても、山のかけらは河原まで降りてくる。

白山市の全域は、白山手取川ユネスコ世界ジオパークに認定されている。その核が手取川中流の桑島化石壁だ。約1億3千万年前、恐竜が生きた時代の地層が、川の侵食で高さ20〜30メートルの崖として露出する。ここは日本の地質学発祥の地と呼ばれる。

ただし化石壁そのものは国の天然記念物で、石は採れない。掘りたいなら、近くの白山恐竜パーク白峰へ。予約なしで参加できる化石発掘体験があり、手取層群の石を自分で割って中を確かめられる。見るのは化石壁、割るのは恐竜パーク。これで迷わない。

桑島化石壁から出たもの

明治の初め、ドイツのラインが白山に登る途中、桑島で植物の化石を採った。これを調べた論文が、日本の古生物学の始まりになる。旅の途中の外国人が持ち帰った葉っぱだ。壁が国の天然記念物になったときも、主役は恐竜ではなく、年輪まで見える立ったままの木の化石だった。

恐竜が出たのは1986年。肉食恐竜の歯で、「カガリュウ」と呼ばれた。その後も植物食の「シマリュウ」、翼竜、哺乳類のハクサノドン、トカゲやヘビに近い仲間と続く。いちばん多いのは、実はカメの甲羅だ。土地の名前を背負った恐竜には、妙に親しみがわく。

白山恐竜パーク白峰で化石を割る

白山恐竜パーク白峰は、同じ白山市桑島にある。館内には、全長28メートルのディプロドクスの骨格レプリカが立つ。これを前にしたら、化石を割りに来たことを一瞬忘れそうだ。

外の化石発見広場では、化石を含む地元の石をハンマーで割る。ハンマー、ゴーグル、軍手は借りられる。出やすいのは植物や貝で、ソテツやシダの仲間の葉が多い。見つけたものは、スタッフが見てくれる。

料金は、広場と館内のセットで大人850円・小中高生400円。別々にも入れる。9時から16時30分(入館は16時まで)、月曜休み(祝日なら翌日)。対象は小学生以上で、1〜3年生は保護者と一緒に。

気をつけたいのは季節だ。11月下旬から4月下旬までは冬期休館で、雪の白峰では割れない。車なら白山ICから国道157号を南へ約80分、バスなら加賀白山バスの「桑島」で降りる。

恐竜の歯を当てる人は、まずいない。出るのはたいてい葉っぱだ。ただ、その葉は1億3千万年、誰にも見られずに石の中にいた。ハンマーを振った本人が、最初の目撃者になる。

金沢周辺——金箔の歴史

金沢は、国内の金箔の約99%を作る街だ。といっても、金沢の河原で金が拾えるわけではない。金は外から来て、ここで一万分の一ミリほどまで叩き延ばされる。この街で見るべきは、石より、叩く手のほうだ。

金箔が箔になるまでの話は、金沢の金箔と職人の手に書いた。

金沢は金箔だけの街ではない。市街を流れる犀川の河床、大桑町のあたりには大桑層という地層が顔を出す。約170万〜80万年前の海の底で、250種もの貝の化石が見つかる。貝殻は色を残したまま石になり、今の貝と見分けがつかないほどだ。

ただし山科町の大桑層化石産地は国の天然記念物で、採集はできない。ここは掘る場所ではなく、百万年以上前の海を見に行く場所だ。ポケットは空のままでいい。

加賀・小松——2300年、石とともに暮らしてきた町

金沢から南へ下った小松市は、石の町だ。弥生の玉づくりから2300年ほど、石を掘り、削り、使い続けてきた。その話が「珠玉と歩む物語」として、日本遺産になった。

那谷・菩提・滝ヶ原の碧玉

碧玉は、弥生から古墳時代にかけて、玉の材料になった石だ。良い碧玉がとれた場所は全国で4か所しかなく、小松の碧玉はきめの細かさと量で抜きん出ていた。那谷・菩提・滝ヶ原の一帯で掘られ、九州まで運ばれた。商いの場で碧玉を手に取るときも、最初に見るのはきめの細かさだ。弥生の人と、見る場所が同じ。同じころ、出雲の花仙山でも碧玉が玉になった。その話は花仙山の青メノウで。

弥生の人は、その碧玉で管玉を作った。直径2ミリの円柱に磨き、石の針で1ミリの穴をあける。2300年前に、ルーペも無しでだ。八日市地方遺跡からは、その石鋸や石針まで出て、国の重要文化財になった。

産地の滝ケ原碧玉原産地遺跡は、今は山林の中の遺跡で、拾いに行く場所ではない。本物の管玉と道具は、小松市埋蔵文化財センターで見る。入館は無料で、9時から17時(入館は16時30分まで)、水曜休み。勾玉づくりなどの古代体験もある。

滝ヶ原石と観音下石——今も切り出す石

滝ヶ原石は、火山灰がたまって緑色に変わった凝灰岩だ。青みがかって水に強く、加工しやすい。鳥居や家の土台、城の石垣に使われ、今も切り出しが続く。

滝ヶ原の里には、明治の終わりから昭和の初めに架けたアーチ型の石橋が残る。里山自然学校こまつ滝ヶ原の案内で、石切り場と石橋を歩く60分コースがある(1人500円、1週間前までに申し込み)。ふだんは入れない本山石切場も見られる。ふだん入れない、と書かれると弱い。

観音下石は、温かみのある黄色の石で、湿気に強い。国会議事堂にも使われた。議事堂の前を通る人で、あれが小松の石だと知る人は何人いるだろう。私も、調べるまで知らなかった。

山の奥には、昭和46年まで動いた尾小屋鉱山がある。県立の尾小屋鉱山資料館は鉱物を並べ、165メートルほどの坑道を歩ける。石好きには、ちょうどいい長さの寄り道だ。一般500円で高校生以下は無料、12月1日から3月24日は冬期休館。九谷焼の陶石を掘った花坂の陶石山も、日本遺産の一部だ。

碧玉、凝灰岩、銅、陶石。掘る石を替えながら、2300年を石と暮らしてきた町だ。拾える石は少ない。見る石なら、一日では足りない。

石川の石スポット早見表

ここまでの場所を一つの表にした。右の列は、石を拾ったり割ったりしてよいかどうかだ。料金と休みは変わるので、出かける前に最後の「公式確認先」で見ておく。

場所見られるもの料金など拾う・割る
白山恐竜パーク白峰(白山市桑島)手取層群の化石・恐竜の展示・化石発掘体験入館 大人520円/体験 大人550円/セット 大人850円/月曜休・冬期休館(11月下旬〜4月下旬)○(体験の広場で割る)
桑島化石壁(白山市桑島)約1億3千万年前の地層の崖—×(国の天然記念物)
手取川の河原白山から運ばれた岩—○(一般の河川で個人が少し)
見附島(珠洲市宝立町)珪藻泥岩の島・地震で南東側半分が崩れた—×(県の天然記念物・名勝)
恋路海岸(能登町)県の石・霰石の産地(玄武岩の気泡の中)駐車場 約20台—(結晶は岩の中)
平床貝層(珠洲市正院町)貝化石の地層—×(県の天然記念物)
犀川の大桑層(金沢市)約170万〜80万年前の貝化石—×(山科の産地は国の天然記念物)
小松市埋蔵文化財センター碧玉の管玉・玉づくりの道具無料/水曜休×(展示)
那谷・菩提・滝ヶ原の碧玉産地(小松市)弥生の碧玉の原産地—×(遺跡・山林)
滝ヶ原の石切り場と石橋(小松市)凝灰岩の丁場・アーチ石橋ガイド60分 1人500円/1週間前までに申し込み×(稼働中の石切り場)
尾小屋鉱山資料館(小松市)鉱物の展示・坑道約165m一般500円・高校生以下無料/水曜休・冬期休館(12月1日〜3月24日)×(展示)

拾える場所と、見るだけの場所

石川は、見て面白い場所が多いわりに、拾ってよいとはっきり言える場所は限られる。拾わないのは、天然記念物(桑島化石壁・山科の大桑層化石産地・見附島・平床貝層)、白山国立公園や能登半島国定公園の特別地域、遺跡、稼働中の石切り場、私有地。手取川のようなふつうの川で、個人が少し拾うぶんには止められていない。

その上で、拾ってよい場所で石を手にしたら、正体は見分けられる。川原なら川原で拾える石の種類一覧、海岸なら海岸で拾える石の種類一覧が手がかりになる。石川の石も、まずは形と手ざわりから。名前は、そのあとでいい。

石好き次郎
河原の石は、名前が分からなくても持ち帰っていい。ただ、拾った場所だけは覚えておく。手取川の石か、浜の石か。それだけで、名札の半分は書けている。

よくある質問

Q. 金沢で石拾い体験はできる?

石拾いというより、金箔貼り体験が中心だ。石を自分で割りたいなら、白山市の白峰まで足をのばす。

石好き次郎から

石川は、拾える石の量で勝つ県ではない。そのかわり、見に行く理由なら山ほどある。七輪の珪藻土、弥生の管玉、国会議事堂の黄色い石。どれも、拾わずに持ち帰れる話だ。

震災の影響が残る今は、行ける場所から無理なく歩けばいい。行ける所へ行くこと自体が、能登への応援になる。

石好き次郎
石川は、拾うより確かめに行きたい県だ。恐竜の時代の地層を、いつか自分の手で割ってみたい。白峰なら、その「いつか」が予約なしでかなう。

公式確認先

料金・休館日・地震のあとの様子は変わる。この記事の数字は、次の公式ページで確かめて書いた。

石好き次郎のおすすめ
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白峰で割る手取層群は、県境を越えて福井の勝山にも顔を出す。1億2千万年前の石を割る。白峰で一つ割ったら、隣の県の石も割ってみたくなる。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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