「GIA証明書」は偽造できる——権威ある鑑定書が偽物市場で流通している

「GIA証明書」は偽造の写真
石好き次郎
鑑定書は、偽物が作られるほど信用されている。番号を照合すれば分かる。ただ、そこまでやる人は多くない。だから偽物は、なくならない。

GIAの鑑定書は、偽造される。番号を公式サイトで引き、紙と石が同じものかを自分で突き合わせれば、大半は見抜ける。この記事の答えは、それで全部だ。あとは、なぜそれで足りるのかの話になる。

いちばん手の込んだ例はこうだ。天然ダイヤのGIAレポート番号を、合成ダイヤに刻んで売る。GIA自身も、そうした石が持ち込まれたことを報告し、注意を呼びかけてきた。

GIA(米国宝石学院)の紙は、宝石の世界でいちばん信用される紙の一つだ。信用される紙ほど、真似される。本物には固有のレポート番号があり、GIAのサイトで照合できる。

ダイヤモンドの書類は「グレーディングレポート」と呼ばれ、4C(カラット・カラー・クラリティ・カット)と蛍光性が細かく書かれる。番号はガードルにレーザーで刻まれることが多い。

偽造のやり方は、だいたい3つだ。①実在する別の石のレポートを流用する。②数字やグレードを書き換えてスキャンする。③一から作る。いちばん厄介なのは①だ。番号が本物だから、照合では何も引っかからない。

目次

詐欺の手口——「完璧なコピー」の作り方

手順は3段階。まず、天然ダイヤを鑑定した本物のレポートを手に入れる。盗難、紛失、中古市場。入口はいくらでもある。次に、CVD合成ダイヤを、その天然ダイヤと同じ重さ・カット・寸法に削る。

最後に、盗んだ番号をレーザーで合成ダイヤのガードルに刻む。本物の紙と、番号を刻んだ合成石。見た目には、完璧な組み合わせがそろう。紙だけ眺めている人には、まず見抜けない。

安すぎる値札と、研磨の町

ネットの卸売サイトでは、合成ダイヤに本物のGIA番号を組み合わせて売る業者が、繰り返し指摘されてきた。本物なら桁が違うはずのダイヤが、驚くほど安い値段で並ぶ。値札のほうが、先に正直だった。

インドのスーラットは、ダイヤ研磨の大きな町だ。まっとうな研磨業と疑わしい業者が、同じ町にいる。業界団体も、鑑定書の偽造を業界の課題として警告してきた。

「GIA」に一文字だけ似た機関

偽造されるのは、GIAの紙だけではない。GIAに似た名前の機関も増えた。よく名前が挙がるのが「GRA」だ。実体のはっきりしない機関が、GIAそっくりの略称で証明書を出す。一文字の違いは、急いで買う人の目をすり抜ける。

モアッサナイト(人工石)に「GRA」の証明書を付けて、ダイヤのように売る例が目立つ。正規の機関(IGI・GRS・AGLなど)に似た略称を名乗る機関は、ほかにもある。聞いたことのない3文字は、まず疑っていい。

GIAの照合で分かること、分からないこと

GIAのサイトで番号を入れれば、レポートの内容が出てくる。ただし分かるのは「その番号のレポートがあるか」だけで、「手元の石がその石か」までは分からない。紙を付け替える手口は、ちょうどこの穴を突く。

偽の紙は、どこの国にもある

偽の紙は、特定の国の話ではない。タイや中国の宝石市場でも、偽造の証明書や、処理を隠した販売が報じられてきた。ネット通販が、それを国の外へ運ぶ。

英語圏の掲示板にも、「買った石のGIA番号を検索したら、別の石のレポートだった」という書き込みが上がる。検索したから気づけた。検索しなかった人は、今も知らないままだ。

合成エメラルドが「判定できない」時代があった

ダイヤだけの話でもない。1940年代にアメリカのチャタムが商業生産を始めた合成エメラルドは、専門家でも天然と区別できなかった時期がある。成分も硬さも、天然とほとんど変わらないからだ。いまの決め手は、顕微鏡で見る包有物だ。合成が上手になるほど、紙の重みは増し、偽の紙も増える。

石好き次郎
証明書がないと信じない人と、証明書があっても信じない人がいる。石を見る目が確かなのは、たいてい後者だ。紙より先に、石を見るから。

GIA鑑定書の真贋確認——石好きのチェックリスト

確認方法難易度効果
GIAウェブサイト照合簡単基本的な偽造を検出
鑑別書の物理的検証中級印刷・紙質・透かし確認
石と鑑別書の一致確認上級最重要・ルーペでガードル刻印確認
第三者鑑別機関の再鑑定専門家最も確実・追加費用が必要

紙は、安く刷れる

安いプリンターとスキャナーがあれば、見た目のそれらしい紙は刷れてしまう。ネット通販で、その紙が国をまたいで届く。紙の出来で真贋を見るのは、もうやめたほうがいい。

レポート番号の照合と刻印確認

GIAのレポート番号は、ダイヤのガードル(腰の部分)にレーザーで刻まれることが多い。10倍ルーペで「GIA」の文字と番号を探す。見つかったら、その番号をGIAのサイトの照合(Report Check)と突き合わせる。誰でも無料で使える。ルーペの刻印と、画面の番号。この二段が基本になる。

正規証明書のセキュリティ機能

正規の紙には、特殊紙・マイクロ印刷・ホログラムなどの仕掛けがある。ただ、本物を見慣れていないと比べようがない。正直に言えば、紙の手触りで見破れる自信は、私にもない。

いちばん堅いのは、二重の確認だ。信頼できる売り手から買い、受け取ったら第三者の鑑別機関(AGTジェムラボラトリー・中央宝石研究所など)で見てもらう。費用はかかる。ただ、石の値段が上がるほど、その費用は小さく見えてくる。

紙が本物でも、石が別物なら意味がない。石が本物でも、紙の中身が盛られていれば、それも詐欺だ。石と紙は、別々に疑う。

合成ダイヤは化学組成も結晶構造も天然と同じで、専用の機器がなければ区別できない。ただ、GIAの書類には天然か合成かがはっきり書かれる。「GIAの紙があるのに合成だった」なら、紙が偽物か、紙と石が別物か、こちらの読み違いかを疑う。

色石の産地鑑別なら、GRS(スイス)やSSEF(スイス)、AGL(米国)の名前もよく挙がる。「Kashmir」「Mogok」「Muzo」と産地が書かれるような石では、どこの紙かが値段を左右する。

GIA以外の信頼できる鑑別機関

日本国内なら、中央宝石研究所(CGL)、全国宝石学協会、AGTジェムラボラトリーの名がよく挙がる。

結局いちばん効くのは、石と紙を同時に確かめることだ。問うのは「紙が本物か」だけではない。「この紙は、この石のために出されたのか」だ。

色石には刻印がない。だから、紙に書かれた重さ・寸法・インクルージョンのスケッチを、実物と並べて見比べる。手間はかかる。ほかに道はない。

日本で気をつけたいのは、フリマアプリ(メルカリ・ラクマ)やSNSでの直接取引だ。

手口は三つ。「ラボグロウンを天然として売る」「安い石に高い評価の紙を付ける」「聞いたことのない機関の証明書」。個人どうしの取引は、あとから返品の話がしにくい。高い石なら、買う前に番号を引く。私なら、それまで購入ボタンは押さない。

有色宝石の紙なら、産地や処理の有無が「Heated(加熱)」などの言葉で書かれる。どこを読めばいいかが分かると、「本物かどうか」の先、「この紙が何を約束しているか」まで読める。紙は道具であって、お守りではない。

石を買う側として偽造鑑別書から身を守る

信用の厚い紙でも、偽造される。私は鑑別書の付いた石を仕入れては、客に手渡してきた。そのうち、紙が本物かより先に、紙と石が同じものかを見る癖がついた。その目で、買う側の守り方を書いておく。

「証明書があるから安心」を疑う

紙があるかないかで決めない。見るのは「どの機関の、何が書いてある紙か」だ。証明書は、安心の印ではない。確かめ始める場所にすぎない。

番号照合という最強の防御

主な機関は、公式サイトで番号を照合できる。番号を引いて、書いてある内容と合うかを見る。番号が出てこない。中身が違う。そうなったら、その紙は信じない。

信じていいのは、公式に照合できる機関だけだ。悪い売り手がいちばん喜ぶのは、その一手間を省く客だ。

見分ける手順と、紙の読み方

本物のGIA鑑定書を見分ける手順

まずレポート番号を、GIAのサイトの「Report Check」に入れる。画面の内容と手元の紙を、一行ずつ見比べる。カラットや評価が違えば、改ざんを疑う。番号そのものが出てこなければ、偽造だ。

ホログラムやマイクロ印刷は、脇役だ。番号照合・刻印照合・現物確認。この三つを自分の手でやれば、偽造書類の大半は見抜ける。

内包物の位置図で石を特定する

GIAの鑑定書には、内包物の位置を描いた図(クラリティ・プロット)が載る。内包物の散らばり方は、石ごとに違う指紋のようなものだ。刻印のない石でも、図と現物を並べれば、紙と石が同じかどうかが分かる。

デジタル版のレポートも増えた。番号を入れれば、内容と画像が見られる。高い石を中古で買うなら、売り手に番号を聞いて、その場で引く。番号を言い渋る売り手なら、それが答えだ。

「鑑定書」と「鑑別書」は別物

日本では二つの書類が混ざりやすい。鑑定書はダイヤの品質(4C)を格付けする書類で、GIAのダイヤのレポートはこちら。鑑別書は、天然か合成か、加熱などの処理があるかを判定する書類で、色石ではこちらが主役だ。

だから、ルビーやサファイアで「GIAの鑑定書はありますか」と聞くと、話が少しずれる。色石で確かめたいのは、鑑別書のほうだ。本物の紙を持っていても、種類が違えば安心の根拠にならない。

書類をなくしても、番号が残っていれば内容にたどり着ける。石とは別に、番号だけは控えておく。

鑑定書のない石は避けるべきか。金額しだいだ。数千円の小さな石なら、なくても困らないことが多い。高い石やネットで買う石なら、紙の有無があとのもめごとを大きく左右する。

石好き次郎から

GIAの紙まで偽造される時代になった。裏を返せば、石より紙を見て買う人が、それだけ多いということだ。

番号を引くのは、15秒で終わる。その15秒を惜しむ人から、偽物をつかまされていく。

鑑別書は、石の身分証明書に似ている。ただ、写真付きの身分証でも、差し出した本人が別人ということはある。最後にものを言うのは、紙ではなく石を見る目だ。その目は、石をたくさん見ることでしか育たない。

石好き次郎
自分が拾った石には、鑑定書がない。誰も証明してくれない。それでも、どこで拾って、どう見分けたかは20年分説明できる。
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石を見る目は、たくさん見ることでしか育たない。ガラスの向こうに本物が並ぶ館は、全国の鉱物・化石博物館43選から選べる。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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