川原・海岸で刺す虫。ブユ・アブ・ヌカカ・ヤマビルの違いと石拾いの虫よけ

水辺の虫(イメージ)

川原や海岸の石拾いで刺してくるのは、主にブユ(ブヨ)・アブ・ヌカカ・ヤマビルの4種だ。澄んだ渓流ならブユ、川沿いならアブ、海岸や河口ならヌカカ、湿った沢ならヤマビル。場所と時間で、顔ぶれが入れ替わる。

私は虫に詳しいわけではない。虫に負けて、石を拾わずに帰るのが嫌なだけだ。20年河原に通って、虫に勝ったことは一度もない。負けない程度の備え方なら、少しは分かる。

まず4種を一枚の表で比べる。そのあと虫ごとの癖、服装と虫よけ、刺されたあとの手当の順に書く。

目次

4種の違いを一枚の表で

虫いる場所多い時期・時間刺され方の特徴いちばん効く対策
ブユ(ブヨ)高原・山間の澄んだ渓流沿い朝夕に活発2〜4mm。咬まれても気づかず、半日ほどで赤く腫れて強くかゆい長ズボンと靴下でスネを隠す
アブ川沿い・水辺種類と地域で違う羽音を立てて寄ってきて、刺されたその場で痛むことが多い長袖・長ズボンと虫よけ。しつこければ場所を移す
ヌカカ海岸・河口・干拓地など(地域による)鳥取県西部では梅雨どき(5月中旬〜6月末)に大量に出る1〜2mmほどで姿が見えない。あとからかゆく、数日続くことも長袖と首元のタオルで隙間をふさぐ
ヤマビル湿った山あいの沢・獣道おおむね4〜11月。雨の日や雨あがり足元から這い上がる。痛みが少なく、離したあとも血が止まりにくい裾を靴下に入れ、足元に忌避剤

ヤマビルだけは昆虫ではなく、ヒルの仲間だ。ブユ・アブ・ヌカカは飛んでくる。ヤマビルは地面から来る。上を守るか、下を守るか。4種の分かれ目は、そこだけだ。

ブユ(ブヨ)——澄んだ渓流で、気づかないうちに咬む

ブユは小さなハエの仲間だ。地域によって「ブヨ」「ブト」とも呼ぶが、同じ虫を指す。体長は2〜4mm。吸血するのはメスで、産卵の栄養をとるためだ。

蚊のように針で刺すというより、皮膚を咬む。咬まれた跡に、小さな出血点が残ることがある。

ブユの幼虫は、水のきれいな山間の渓流で育つ。上流の澄んだ川は、チャートや変成岩のような良い石が転がる場所でもある。いい川ほど、ブユもいる。石好きにとっては、なかなか意地の悪い話だ。

やっかいなのは、咬まれた瞬間に気づかないことだ。石を探して下を向いていれば、スネを咬まれても分からない。半日ほどたって赤く腫れ、激しいかゆみが来る。帰り道か、翌朝か。気づいたときには、もう遅い。

掻き壊すと、跡がしこりになって長く残ることがある。かゆくても掻かずに冷やす。分かっていても掻く。そこまで含めて、ブユはしつこい。

腕を出したくなる日ほど、向こうも待ちかまえる。ブユは朝夕に活発だといわれるが、虫を避けようと、動く時間を真夏の昼へずらすのは勧めない。暑さのほうが危ない。

石好き次郎
ブユの咬み跡は、その日のうちは何も言わない。家に着いてから、急に存在を主張してくる。石は家で眺めるものだが、かゆみまで家についてこなくていい。

アブ——羽音を立てて寄ってきて、その場で痛い

川沿いで石を探していると、羽音を立てて寄ってくる虫がいる。その一つがアブだ。アブと呼ばれる虫は種類が多く、大きさも、出る時期や時間も、種類と地域で違う。

刺されると、赤い腫れ、かゆみ、痛みが出ることがある。ブユとの違いは、来かただ。アブは刺されたその場で「痛っ」となることが多い。ブユは帰ってから腫れてくる。同じ川の、同じ日に、両方いることもある。

アブの困るところは、素早くて、なかなか離れないことだ。一度追い払っても、また戻ってくる。手で払い続けているうちに、石を見る目がどんどん散っていく。

まとわりつきが止まないなら、場所を移す。石は逃げない。刺された痛みは何日か残る。

場所を譲るのは、負けではない。刺され続けて、足元の石が見えなくなるほうが、よほど負けだ。

ヌカカはどこにいる——海岸・河口の、見えない1mm

ヌカカがいるのは、海岸や河口、干拓地のまわりが多い。ただ種類が多く、どこにいるかは種類と地域で違う。「蚊はいなかったのに、帰ったら足がかゆい」。海や河口で石を探した日にそうなったら、犯人は見落とすほど小さいこの虫かもしれない。

ヌカカは、ハエの仲間の小さな虫だ。蚊と同じように、メスが人や家畜を刺して血を吸う。

網戸を通り抜ける大きさ

大きさは1〜2mm程度。網戸を簡単に通り抜け、服の中に潜り込むこともある。姿が見えないまま刺され、あとになってかゆみで気づく。咬まれると、腫れやかゆみが数日続く場合がある。

見えないのに、跡だけはしっかり残る。刺されたことは分かるのに、何に刺されたかが分からない。蚊とはそこが違う。

あとからかゆくなるのは、ブユも同じだ。手がかりは、どこで刺されたかになる。渓流のスネか、浜や河口の足首や首まわりか。場所を覚えておくだけで、相手の見当はつく。

鳥取県西部では「干拓虫」

鳥取県西部の境港市と米子市では、ヌカカの被害が古くから知られ、「干拓虫」とも呼ばれてきた。海岸や干拓地、雑草の茂る土地の周りが、その舞台だ。

米子市の案内では、弓浜のあたりで大量に出るのは梅雨どき、5月中旬から6月末だ。干拓の前から、ずっとそこにいた虫だという。名前のほうが、あとから来た。

ただし、これは鳥取県西部の話だ。別の土地では、種類も時期も違うことがある。全国の浜が同じ暦で動くわけではない。

それでも、風の止んだ朝夕の浜は、波打ち際を歩くには気持ちのいい時間だ。そこが、ヌカカの時間でもある。

1mmの相手には、隙間をふさぐ

防ぎ方は、まず長袖で肌の露出を減らすこと。ヌカカは服の隙間からも入るので、首元をタオルでふさぎ、袖口と裾の隙間も減らす。

露出する肌には虫よけを使う。浜では、手足だけでなく首まわりにも。

波打ち際でメノウを探すような浜歩きの日は、しゃがんでいる時間が長い。足首と首まわりは、思ったより無防備になる。

石好き次郎
海の虫は、顔を見せない。刺されたのは分かるのに、相手が分からない。かゆみで、その浜の記憶を上書きされるのは、どうにも悔しい。

ヤマビル——飛ばずに、足元から這い上がる

ヤマビルは昆虫ではない。ミミズやゴカイと同じ、環形動物の仲間だ。体長は2〜3cmほどで、伸びると5cmを超える。体の前と後ろに吸盤があり、尺取り虫のように進む。

人や動物が吐く二酸化炭素や体温を感じ取って近づき、下から這い上がってくる。飛んでは来ない。

咬むときに、血を固まりにくくする物質を出す。だから痛みを感じにくく、気づいたときには血が出ている。離したあとも、出血がしばらく続く。

多いのは、おおむね4〜11月。雨の日や雨あがり、湿度の高い日に活発になる。湿った草地や林、獣道、シカやイノシシの通る道が要注意だ。

雨あがりは、濡れた石の色がよく見える日でもある。ヤマビルにとっても、いい日だ。

神奈川県の丹沢のように被害の多い山域もあるが、どの山にも同じようにいるわけではない。人や野生動物に運ばれて、いる場所が広がる可能性も指摘されている。

防ぎ方は足元から。獣道を避け、整備された道を歩く。くるぶしまで覆う靴を履き、ズボンの裾を靴下に入れて隙間をなくす。靴・靴下・裾には、ヤマビル用の忌避剤を効かせる。

塩水やあら塩を足元に使う対策を案内している自治体もある。どれか一つで安心とは考えない。休むたびに、足元と体を見る。

湿った山あいの沢は、ヤマビルだけでなく、クマ・マムシ・ハチにも気を配る場所だ。そちらはクマ・マムシ・ハチの記事で。

服装と虫よけ——4種まとめて備える

4種に共通する備えは、肌を出さないことだ。長袖、長ズボン、足元を隠す靴下と靴。虫の名前を覚えるより、まずこれが効く。

そのうえで、厚く守る場所は行き先で変わる。渓流はスネ、浜は首元と袖口、湿った沢は足首。全部を完璧に固めるより、その日の相手に合わせて一か所を厚くする。

長袖と帽子。暑さとの両立

夏は必ず帽子をかぶる。虫のいる沢では、暑くても袖をまくらない。汗をかくのと、何日もかゆいのと。どちらがましかは、比べるまでもない。

ただし、真夏の長袖は熱がこもる。熱のこもりにくい素材を選び、休憩をとる。虫を防いで熱中症で倒れたら、元も子もない。暑さ指数の見方は熱中症の記事に書いた。

虫よけは、市販品とはっか油

虫よけは一本に決めていない。市販の忌避剤も使うし、はっか油も使う。ルーペを家用と現場用で分けるのと同じで、道具を一つの正解に絞らない。

市販の忌避剤の代表的な有効成分は、ディート(DEET)とイカリジンだ。イカリジンは年齢の制限がなく、小さな子どもにも使いやすい。ディートは製品や年齢によって使用回数の目安がある。

どちらも汗や水で落ちるので、外に長くいる日は塗り直す。塗る場所、回数、どの虫に効くかは、製品の表示を読んでから決める。

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石好き次郎の見立て
ブユやアブが本気で出る沢に入る日は、成分が書いてあるものを持っていく。ディートかイカリジンか、子どもに使うなら年齢の制限を製品の表示で確かめる。そこだけは気分で選ばない。

虫の少ない季節の、開けた河原なら、長袖と長ズボンで足りる日もある。

足元は水陸両用シューズ。長靴は履かない

私の足元は、水陸両用シューズだ。長靴は履かない。岩場の浅瀬に入るなら、濡れてもいい靴のほうが石を追える。

そのかわり、ブユのスネとヤマビルの足首は、靴下と裾で守る。靴の選び方は石拾いの靴の選び方へ。

刺されたら・咬まれたら

まず、その場から少し離れる。アブは戻ってくることがある。

多くの虫刺されは、掻き壊すと長引く。掻かずに冷やし、軽ければ市販のかゆみ止めを使う。何に刺されたか分からないときは、患部の写真を残しておくと、受診したときに役立つ。

腫れが大きく広がる、熱を持つ、なかなか引かない。そういうときは様子を見すぎず、皮膚科を受診する。小さな子どもや、かゆみ・腫れが強いときも、無理に我慢しない。

全身にじんましんが広がる、息が苦しい、意識がおかしい。こうした全身の症状が出たら、アナフィラキシーの可能性がある。119番通報を含めて、すぐに対応する。

ヤマビルに咬まれたとき

塩や消毒用アルコール、忌避剤をかけると、自分から離れる。指で取ってもいい。マダニと違い、無理に剥がしても口が皮膚に残ることはない。

離れたら、傷口を流水で洗い、消毒して絆創膏などで保護する。血が止まりにくいので、出血が続くときはガーゼなどで押さえる。かゆみには市販のかゆみ止めを使う。

症状が強い、長引く、化膿してきた。そういうときは皮膚科へ。ヤマビルそのものは毒を持つわけではない。血の量に驚くことはあるが、まずは落ち着く。

石好き次郎から

澄んだ渓流、波打ち際、湿った沢。虫のいる場所を並べると、そのまま石を拾いたい場所の一覧になる。虫を避けて通れば、いい石からも遠ざかる。

それでも虫が苦手なら、季節をずらす手もある。冬の石拾いは虫がいない。同じ河原が、まるで別の場所になる。

石好き次郎
刺された跡は、そのうち消える。拾った石は、棚に残る。割に合わない話ではない。

来年の夏も、たぶん長袖で河原に立つ。暑い、と言いながら。

公式確認先

虫刺されの予防と手当は日本皮膚科学会、ヤマビルの生態と手当は秦野市と千葉県の資料をもとにした。ヌカカの時期は、米子市の案内による地域の話だ。

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長袖で無事に帰ってきたら、その日の石を洗って乾かす。名前の当て方から保管までは拾った石を調べる方法で順に追える。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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