多摩川で砂金は採れるのか——上流・丹波川と甲州金、拾える場所と河川法

多摩川上流・丹波川の風景

多摩川で砂金は採れる。ただし上流だ。下流の河川敷をいくら揺っても、金は出ない。金があるのは、山梨との境に近い丹波川の一帯になる。

私のホームは多摩川だ。下流で石を拾い続けてきた。その同じ川の上流に金があると知って、丹波川まで行った。半日揺って、皿に残ったのは粉のような金が数粒。同じ川でも、上流と下流はまるで別の顔をしている。

簡単ではない。金は米粒よりも小さく、半日で数粒という日も普通だ。売って儲かる量ではない。それでも、この金には戦国の歴史がついている。

東京の街を流れる川の上流に金がある——そう聞くと意外に思うかもしれない。だが金は、街ではなく山から来る。多摩川の水源は、山梨の深い山だ。その山が、かつて金を含んでいた。

この記事では、多摩川のどこで砂金が採れるか、なぜ上流に金があるのか、採り方、そして河川法と国立公園の線引きまでを書く。多摩川の砂金は、遊びとしても、歴史としても面白い。

石好き次郎
ホームの多摩川を上流へたどって、丹波川に初めて立った日のことをよく覚えている。川幅は狭く、水は冷たく、流れの音まで違う。二十年通った川に、まだ知らない顔があった。
目次

多摩川で砂金が採れる場所——上流の丹波川

砂金が採れるのは、多摩川の上流部だ。奥多摩から山梨の丹波山村にかけての、丹波川と呼ばれるあたりになる。ここは源流に近く、山から崩れた金が川に入りやすい。下流の東京側では、金はまず出ない。多摩川全体の石拾いは多摩川で石を拾うにまとめた。

私は多摩川の下流で、二十年、石を拾ってきた。同じ川の上流に金があると知ったのは、ずっと後のことだ。一本の川に、これほど違う顔があると気づいてから、多摩川という川がもっと面白くなった。丹波川は水が澄み、底の石まで見える。下流のゆったりした流れとは、別の川のようだ。

エリア砂金特徴注意
上流(丹波川・奥多摩)出る源流に近い。粉金が中心国立公園の区域あり。要確認
中流(青梅〜羽村)ほぼ出ない石拾いには向く通常の河川ルール
下流(東京の河川敷)出ない散歩・観察向き採掘目的の場所ではない

表のとおり、砂金を狙うなら上流一択だ。ただし上流部は国立公園に含まれる区域があり、後で書くように採取に制限がある。「どこでも自由に掘れる」川ではない。それを先に書いておく。

丹波川へは、奥多摩湖の奥から国道411号で山梨側へ向かう。都心からは車で二時間ほどかかる。気軽な散歩ではなく、半日を使う遠出になる。そのぶん、人も少なく、川は静かだ。

なぜ多摩川の上流に金があるのか——甲州金と黒川金山

多摩川上流の金は、戦国時代の金山にさかのぼる。この一帯には、武田氏が採掘した金山があった。なかでも黒川金山は、甲州金を支えた代表的な金山として知られている。

甲州金は、戦国から江戸にかけて通用した金貨の一つだ。金の産地を持つことは、そのまま経済力になり、武田氏の力を支えた。多摩川上流で拾える金は、その歴史のいちばん川下にある。

金は、石英の脈に含まれることが多い。黒川金山の金も、白い石英の脈に伴っていた。その石英が砕けて沢に入り、金だけが重さで川底に残る。だから丹波川の砂には、白い石英のかけらと一緒に、細かい金が混じる。

砂金が上流に集中するのには理由がある。山で崩れた金は重く、遠くまでは流されない。だから源流に近い上流の川底に多く残り、下流へ行くほど薄くなる。多摩川で金が上流だけに出るのは、この重さのせいだ。

金山の金は、金を含んだ岩に眠っていた。その岩が長い年月で崩れ、沢を通って丹波川へ流れ込む。金は重いので、川底の砂に混じって少しずつ下流へ運ばれた。今、丹波川で拾える砂金は、その名残だ。

武田氏の金は、軍資金として使われたと伝わる。四百年以上前に人が掘った金の、掘り残しや洗い残しが、川に散って今も残っている。パンニングは、その歴史のかけらを一粒ずつ拾う作業になる。

金を掘ったのは、金山衆と呼ばれた技術者たちだった。彼らが山で金を追ったあと、取りこぼした金が沢へ流れ、川へ出た。私たちが丹波川で拾うのは、その取りこぼしだ。何百年もかけて、川がゆっくり下流へ運ぶ。人の手を離れた金を、今度は水が配る。

だから多摩川の砂金は、量では語れない。半日で数粒でも、その一粒は甲州金の歴史につながっている。金の重さより、背景の重さで拾う川だ。全国の砂金の川は日本で砂金が採れる川に並べた。

石好き次郎
石仲間のおじさんは、丹波川で「武田の金の残りを拾いに来た」と言っていた。半日で出たのは粉金が数粒。「信玄が良いところを先に取った」と真顔で言う。四百年前の相手に、本気で悔しがっていた。

砂金の採り方——多摩川での実際

道具は、揺り板かパン皿、砂をすくうスコップ、採った金を入れる小瓶。この三つで始められる。細かい道具の揃え方は石拾いの道具ガイドにまとめた。

狙うのは、流れが緩んで砂が溜まった場所だ。カーブの内側、大岩の下流、川底が段になった所。金は重いので、水の勢いが落ちる所に沈む。丹波川は水が澄んでいて底が見えるので、砂の溜まりを探しやすい。

特に狙い目は、速い瀬から淵に変わる境目だ。急な流れが緩むと、運ばれてきた金がそこで落ちる。淵の入口の砂を、表面だけでなく少し掘った下からすくうといい。下の砂ほど、古くから溜まった金が混じる。

砂をすくったら、水の中で皿を回して軽い砂を流す。金は底に残る。何度も繰り返して砂を減らし、最後に皿を止めてそっと傾ける。皿の縁に金色の細い帯が残れば当たりだ。

揺るときは、皿を水面すれすれで小刻みに回す。大きく揺らすと、軽い砂と一緒に金まで飛ぶ。水の中で砂を撫でるように、少しずつ縁から流す。腰を落として皿を安定させると、手元がぶれない。

一つの砂の溜まりを揺り切るのに、慣れても十分はかかる。焦って砂を減らすと、金まで流す。二、三時間かけて数か所を回るくらいの気持ちがいい。半日いて、皿の底に粉金が数粒。それが丹波川の普通だ。

重砂——黒い砂が金の合図

揺っていくと、皿の底に黒い砂が残る。これは砂鉄で、金と同じく重いので最後まで残る。この黒い砂を重砂と呼び、たまり始めたら金が近い合図になる。逆に黒い砂が出ない場所は、金も期待しにくい。

川で金まで見分けるのは難しい。だから私は重砂だけを袋に取って持ち帰る。家で乾かし、磁石を近づけると砂鉄はつき、金はつかない。砂鉄を抜いた残りをルーペで見る。川で急がず、家で仕上げる。

よくある間違い

黄鉄鉱を金と間違えることが多い。黄鉄鉱は角ばって光り、割れると銀色になる。砂金は角がなく、押しても割れず、曲がる。皿の中で光るものを見たら、まず形を見る。丸ければ金の可能性が高い。

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この記事を書いた人

石好き次郎

宝石の科学・歴史・市場を世界中の言語で調べてお届け

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