甲府の川に水晶は眠る?山梨の石探しスポットを巡る

山梨・甲府と荒川周辺の水晶採集風景

山梨の水晶は、いま拾うなら山ではなく河原にある。甲府の荒川(山宮河川公園)と笛吹川の砂利に、上流から流れ出た1〜3センチの欠片が今も混じる。山梨は江戸時代から山を掘り、その水晶で甲府は宝飾の街になった。水晶の県で、水晶はどこに落ちているのか。東京から日帰りで、確かめに行ける。

ただ、名前の知れた場所ほど拾えない。有名どころに行くと、たいてい見るだけで帰ることになる。

山梨の水晶を、場所で分けるとこうなる。拾うなら、山宮河川公園・荒川・笛吹川の河原。登って探すなら、金峰山周辺の水晶峠(日本式双晶・上級)。拾えないのが、昇仙峡と乙女鉱山。昇仙峡は、見て、買う場所だ。なぜ山ではなく河原なのかは、読み進めるうちに分かる。早川だけは、少し毛色が違う。

石好き次郎
水晶の県でも、河原で光る石のほとんどはただの石英だ。それを外れと思うなら、甲府の河原は向かない。石英の白も、同じ山から下りてきた石だ。
目次

山梨で石拾いができる場所一覧

スポット名採れる石難易度子ども向け
山宮河川公園(甲府市)水晶・石英・砂金初級◎ 家族連れ向き
荒川(甲府市)水晶・石英・花崗岩初級○ 子連れなら山宮のほうが向く
笛吹川(笛吹市・山梨市・基点:万力公園)水晶・めのう・赤碧玉中級○ 万力公園に駐車場・トイレ
早川(南巨摩郡)粘板岩・砂岩・凝灰岩(水晶は確かな記録なし)上級△ 上級の川
水晶峠(金峰山周辺)水晶・日本式双晶上級(登山)△
昇仙峡(甲府市)—(特別名勝・拾えない)観察○ 遊歩道の散策
乙女鉱山(山梨市)—(閉山・立入禁止)立入不可—

一か所目に迷ったら、山宮河川公園にする。甲府駅から車で15分ほどで、河原が広い。水晶と石英の区別を覚える練習なら、ここより向く河原を私は知らない。

昇仙峡と乙女鉱山では拾えない。なのに表に入れたのは、なぜそこに水晶が出たのかを知ると、河原でどこを探すか、見当がつくからだ。

全国の水晶産地は日本で水晶が拾える場所にまとめている。

山梨の地質——なぜ水晶が出るのか

山梨の水晶は、マグマの残りもので育った。花崗岩のペグマタイトから来る。県を貫く富士川(釜無川)は、日本三大急流の一つで、甲州の金の話にも顔を出す川だ。

ペグマタイトは、マグマが固まる最後の最後にできる。鍋の底に残った汁のようなもので、水と揮発成分が濃く溜まり、よく動く。だから結晶が大きく育つ。水晶、長石、雲母、トパーズ。晶洞という岩の中の空き部屋で、誰にも邪魔されずに伸びた。

金峰山と昇仙峡の周辺には、約1,500万年前に貫入した花崗岩体がある。その後、隆起と侵食で山が削られ、晶洞が露出して水晶が崩れ落ちた。荒川と笛吹川が、それを下流へ運んだ。だから河原で拾える。石は勝手に降りてくる。

早川は別だ。早川町の中を、日本列島を横切る大断層・糸静線が通る。

同じ県でも、地質が違えば河原の顔ぶれが変わる。甲府盆地の川は花崗岩の水晶を運び、早川は断層の町の黒っぽい石を運ぶ。一つの県で、二種類の河原が歩ける。

山宮河川公園——甲府で最も入りやすい河原

甲府市の山宮河川公園は、荒川の広い河原だ。甲府駅からタクシーで15分。この河原は、20年見てきた。この記事は山梨全体の入口で、山宮の一か所で水晶をどう探すかは、甲府・山宮の河原を歩いた一本で掘り下げた。

拾えるのは水晶の欠片だ。1〜3センチが多い。透明なのも、白く濁ったのも出る。大物を期待して来ると、肩透かしを食う。

河原が広く、家族連れが多い。水晶を握りしめて親のところへ走っていく子供を、何度も見た。

うちも子供を連れてくる。開始5分で「みて!」と石を持ってくる。たいていはただの砂利だ。本人はそれで満足で、帰るころにはポケットが石でパンパンになる。妻は来ない。5歳でも河原は遊べる。年齢ごとの連れ方は子供と川原で宝探しで分けた。

乾いた河原では、水晶も白い石に紛れる。見るのは、濡れた石だけでいい。乾いた石は、見なかったことにする。

水晶と石英の見分け方

水晶と石英は、中身が同じだ。どちらも二酸化ケイ素。違うのは、結晶の形が残るかどうか。それだけだ。

光る欠片を拾ったら、ルーペを当てる。六角柱の平らな面が1つでも残っていれば、水晶だ。角が丸くなっていても、面の名残は見える。

私が六角柱の面の残った水晶を初めて拾えたのは、河原に通って10回目だった。それまでの9回も、たぶん足元にはあった。見えていなかっただけだ。面を一度見つけると、次からは向こうから目に入ってくる。

先がとがれば、もう間違いない。錐面という、6枚の三角形でできた屋根だ。

石英は、塊のまま割れる。結晶面がない。白く不透明なものが多い。

ガラスと迷ったら、冷たさでも分かる。水晶は熱を逃がすのが速く、頬に当てるとひんやりする。河原で石を頬に当てる中年男はかなり怪しいが、現場では使える。

硬度は7。ナイフでは傷がつかない。逆に、ガラスに傷をつけられる。

石好き次郎
「今日は絶対に日本式双晶が出る」。荒川の土手を降りる前から、おじさんは言い切っていた。出たのは石英の塊ばかり。敗因は「水が多すぎた」だそうだ。前回の敗因は「水が少なすぎた」だった。ちょうどいい水の日は、まだ来ない。

荒川——甲府市街から歩いて行ける

昇仙峡を削った水が、そのまま甲府の街へ下りてくる。それが荒川だ。水晶も、上流のペグマタイトから一緒に下りてくる。

甲府駅から歩いて30分ほどの区間にも、河原に降りられる場所がある。ビルの見える河原で水晶を探すのは、ちょっと妙な気分だ。

ただ、数は少ない。確実さでは山宮河川公園に譲る。

大水のあとは石が入れ替わる。だからといって、雨上がりに飛び込まない。上流の雨と水位を見て、川が落ち着いてから歩く。新しく来た石は、水が引くまで待ってくれる。

笛吹川——水晶とめのうの両方が出る

笛吹川の名は、大水で流された母を笛を吹きながら探し、自分も川にのまれた若者の言い伝えから来ている。探しものに夢中で川に寄りすぎるな、と言われている気がする。甲府盆地の東を流れ、JR中央本線・石和温泉駅が近い。基点にするなら山梨市の万力公園で、無料の駐車場とトイレがある。

ここでは水晶のほか、めのうや赤碧玉も出ると言われる。荒川とは石の種類が違う。

上流の山の顔ぶれが違うからだ。荒川の上流はほぼ花崗岩だが、笛吹川には赤い石を出す山がまじる。めのうと赤碧玉がどの岩から来るのか、私は地質図の上でしか追えていない。それでも河原の顔は、荒川よりずっと赤い。

同じ日に荒川と笛吹川を回ると、川ごとの性格がはっきりする。午前は水晶の川、午後は赤い石の川。袋の中身が混ざるので、川ごとに袋を分けておく。

笛吹川で赤い石を見つけたら、まず濡らす。赤碧玉と赤いチャートは、もともと親戚のような石で、河原ではほとんど見分けがつかない。どちらも濡れると赤が深くなる。違いを探すなら透け方だ。日にかざして縁がうっすら透ければ、めのうに近い。まったく透けない詰まった赤は、碧玉と呼んでもチャートと呼んでも、まず外れではない。

名札の境目は、正直かなりあいまいだ。迷ったら、両方とも袋に入れればいい。家で並べて濡らせば、もう一度迷える。名札の迷いも、石拾いのうちだ。

帰りは石和温泉に寄れる。昭和36年、井戸から湯が勢いよく噴き出して川へ流れ、「青空温泉」と呼ばれた。川に湧いて、川へ流れた湯だ。川の石を探す人間とは、話が合う。

早川——糸静線の町の川

日本列島の継ぎ目を、立ったまま見られる川がある。早川だ。南アルプスの東を流れ、身延駅から車で60分ほど。断層の町の河原を歩いた話は、南アルプス・早川を歩くで読める。

ここで見たいのは、石より地面だ。新倉に「新倉の糸魚川―静岡構造線」がある。延長約250kmの大断層・糸静線が、典型的に見える露頭だ。国の天然記念物で、見学は自由。叩かず、採らず、見るだけにする。

西側は瀬戸川層群の黒い粘板岩で、古い地層。東側は中新世の凝灰岩のなかまで、新しい地層。その古いほうが、新しいほうの上にのし上がる。逆断層という。地面にも、押しの強い側がある。

早川の河原は、黒っぽい。粘板岩や砂岩、凝灰岩が多い川だ。乾くと地味な灰色だが、濡れると色が浮く。河原で素通りされるのは、たいてい乾いているときだ。

水晶が出るという確かな記録は、調べた範囲では見つからなかった。水晶目当てなら、荒川と笛吹川へ行く。早川は、断層を見に行く川だ。

道は険しい。渓流沿いは足場が悪い。ここは一人で入る川ではない。行く前に、道路と水位を見ておく。

水晶峠——日本式双晶の産地(上級)

ハートの形をした水晶が、山梨の山にある。金峰山の周辺、水晶峠と呼ばれる場所で、日本式双晶が出る。

日本式双晶は、2つの結晶が84度33分の角度で接合したものだ。平たいハートの形をしている。

名前は、日本産の大きな双晶が世界でよく知られたことから付いた。1900年以降、文献に「Japan law twin」と載るようになる。山梨の石が、国の名前を背負って教科書にいる。ちょっと胸を張りたくなる。乙女鉱山の一個が、なぜ国の名前で呼ばれるまでになったのか。その経緯は乙女鉱山が生んだハート型の水晶で追った。

ただし難易度は高い。登山になる。ズリの場所が分からないと、何も出ない。

装備が要る。登山靴、地図、水、食料。日帰りで行ける場所ではない場合もある。

白状すると、日本式双晶はまだ自力で拾えていない。見つからないうちは、やめる理由もない。

昇仙峡——採集はできないが、見る価値がある

昇仙峡には、私も行ったことがある。ここでは拾えない。国の特別名勝だ。

そのかわり、見上げる石がある。覚円峰。高さ180メートルほどの花崗岩で、名前は、その頂で修行した覚円という僧から来た。あの上で座禅を組む度胸は、私にはない。拾えない石の、いちばん大きいやつだ。

この花崗岩が、山梨の水晶を生んだ。同じ岩体から、荒川へ水晶が流れ出る。

昇仙峡の宝石店にも水晶が並ぶ。ただし多くは輸入品だ。山梨産と書いていなければ、店の人に聞けばいい。産地を聞かれて言葉に詰まる石は、店のほうも本当は置きたくない。聞かれて困らない店ほど、たいてい石もいい。山梨産と加工品の見分けどころは、昇仙峡で水晶を買う前にを先に読んでおくと迷わない。

拾う前に、いい水晶を一度じっくり見ておく。透明度と結晶面を目に入れておかないと、河原で比べるものがない。

乙女鉱山——閉山した水晶の産地

乙女鉱山は、花崗岩ペグマタイトの水晶を掘った鉱山だ。水晶は磨けば宝飾になり、工業では振動子や光学用の材料にも使われてきた。その山から大きな日本式双晶が出て、世界に名が知られた。掘り出した量より、一つの標本で名を残した山だ。

いまは閉山して、山には入れない。崩れかけた坑道に、石一個は代えられない。

標本なら、甲府に水晶のための建物がある。山梨大学の「水晶庫」だ。大正9年に寄贈された甲州の水晶を収めるため、昭和2年に建てられた標本室で、建物ごと国の登録有形文化財だ。水晶のために、家を一軒建てた人がいた。

拾った水晶をどうするか

持ち帰ったら、まず洗う。ブラシと水だ。使い古しの歯ブラシで足りる。

泥がこびりついていたら、一晩水に浸ける。それでも落ちなければ、爪楊枝で削る。金属は使わない。傷がつく。

洗剤は使わない。共存する鉱物が変色することがある。

乾かしたら、産地と採集日を書いておく。これを忘れると、一年後にはどこの石か自分でも分からなくなる。

保管は、一個ずつ透明な袋に分ける。水晶同士がぶつかると、先端が欠ける。河原を転がってきた石が、家の引き出しで欠けるのは、さすがに申し訳ない。

直射日光は避ける。アメジストは退色する。透明な水晶も、長期間なら変質する。

拾っていい場所・だめな場所

場所拾えるかわけ
山宮・荒川・笛吹川の河原拾える趣味で少し拾うぶんには手続きは要らない
昇仙峡拾えない国の特別名勝
乙女鉱山入れない閉山・立入禁止
水晶峠・金峰山周辺場所による秩父多摩甲斐国立公園。特別地域では持ち出せない
新倉の糸静線の露頭見るだけ国の天然記念物

表のとおり、ふつうの河原で趣味の石を少し拾うのは自由だ。決まりが厳しいのは、名前の知れた場所のほうになる。

私有地の河原もある。柵や看板があれば入らない。

季節と水量

狙い目は、10月から4月だ。渇水期で、川床が広く出る。石が見える。

夏は水量が多い。台風のあとは特に危険だ。増水した川には近づかない。

国土交通省の「川の防災情報」で、水位が見られる。出かける前に一度のぞくだけでいい。

冬の甲府盆地は、しっかり底冷えする。手がかじかむと、石を掴んでも感覚がなくなる。

必要な道具と服装

要るのは、軍手、袋、ルーペ(10倍)、濡れてもいい靴だ。河原の石を割る必要はないので、ハンマーは要らない。

ルーペは10倍のアクロマートを選ぶ。安すぎるものは、周辺がぼやける。

着替えは車に置いておく。河原では、濡れないつもりの日ほど濡れる。冬は特に冷える。

クマ・マムシ・スズメバチ・マダニへの備えは、記事の終わりの関連記事に置いた。5分で読める。石は逃げないが、ハチは向こうから来る。

山梨での石拾いに関するよくある質問

Q. 拾った水晶は売れる?
A. 頭の欠けていない3センチ超えなら、産地の記録付きで値がつくことはある。欠片は標本止まりだ。私は売るために拾っていない。欠片でも、山宮の一個は山宮の一個だ。

Q. 山梨の次はどこへ?
A. 長野の川上村。金峰山の北側で、同じ花崗岩の山から水晶が下りてくる。岐阜の木曽川も水晶の川だが、こちらは苗木花崗岩という別の岩体で、顔つきが違う。

石好き次郎
大雨や台風が過ぎてから山宮に降りると、見慣れた石がごっそり消えて、知らない顔が並ぶ。水晶も、そうやって上から降りてくる。河原の品出しは、川がやる。

山梨の川は、東京や神奈川から日帰りで行ける。関東で石を拾える場所を一通り歩いた人なら、次は甲府や富士川の河原だ。関東の河原が石の種類で遊ばせてくれるなら、山梨には水晶という看板がある。

石好き次郎から

山梨の水晶は、明治に一度、掘りすぎて叱られている。乱掘で水害が相次ぎ、取り締まりが厳しくなったのだ。それでも荒川と笛吹川では、今日も砂利に水晶が混じる。山が自分で出してくる分だけ、というのがちょうどいい。

石仲間のおじさんに言わせると、山梨は「信玄が良いところを先に取った」土地だそうだ。金山の話と水晶の話が、おじさんの中では同じ一つの話だ。訂正するほど、私も詳しくない。取り残しを拾うくらいが、ちょうど性に合う。

甲府の宝飾の街は、この水晶から始まった。地元の石は尽きて、研磨の技術が残った。今は輸入の原石を磨く。石がなくなっても、街は石を手放さなかった。水晶の県で、水晶はどこに落ちているのか。山ではない。山が手放した分だけ、川にいる。

石好き次郎
冬の山宮で、かじかんだ手から石を落としたことがある。どの石だったかは、もう分からない。落とした一個のぶん、次の冬もまた河原に降りる。

公式確認先

ここに並べたのは、書くときに確かめた公式のページだ。出かける前に一度開けば足りる。

最終公式確認:2026年7月23日

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山が手放した欠片を拾ったら、次はそれが水晶か石英かを決める番だ。河原の透明な石は水晶かで、洗い場で一個ずつ絞っていく。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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