兵庫県豊岡市の玄武洞ミュージアムでは、館内で宝石発掘ができる。施設が用意した石を探す方式なので、小さな子でも空振りしない。「宝石探しができる施設はないか」と関西で探すと、たいていテーマパークの一角に行き着く。砂に仕込んだ石を掘り当てる、子ども向けの遊びだ。それはそれで楽しい。ただ、玄武洞ミュージアムは、少し毛色が違う。
持ち帰れる宝石は3個まで。話のほうは、いくらでも持ち帰れる。宝石発掘の横には、二千五百点を超える本物の鉱物と化石が並ぶ。目の前の崖は「玄武岩」という名前が生まれた場所で、地球の磁場がひっくり返った時代があると、世界で最初に発表された場所でもある。
| 場所 | 兵庫県豊岡市赤石1362(国天然記念物・玄武洞公園の入口) |
|---|---|
| 駐車場 | あり(無料・普通車100台/公園と共通) |
| トイレ | あり(多目的トイレ・おむつ替え可) |
| 採集可否 | 館内の体験は「用意された石を探す」方式。屋外での野外採集ではない |
| 子ども向け | 向く(幼児3歳〜可・幼児のみの入館は不可) |
| 最終確認日 | 2026年9月 |
料金と開館時間は、記事末尾のスポット情報まとめにも置いた。

玄武洞ミュージアムはどこにあるか
場所は兵庫県豊岡市、城崎温泉のすぐ近くだ。国の天然記念物「玄武洞」の入口にあり、六角形をかたどった建物が目印になる。駐車場は無料で、普通車が100台ほど。公園とミュージアムで共通だ。
JR城崎温泉駅から全但バスで約10分、JR豊岡駅から約15分。対岸のJR玄武洞駅からは、ミュージアムが運航する渡し船で約7分だ。大阪や京都からは、電車で2時間あまりかかる。川を舟で渡って石を見に行く、という入り方は、ほかではなかなかできない。
何ができる——宝石発掘・化石発掘・ジオード割り・琥珀採集
体験メニューは幅広い。人気なのは宝石発掘と化石発掘で、見つけた石はそのまま持ち帰れる。ほかに、丸い石を割って中の結晶を出すジオード割り、琥珀を探す採集体験、誕生石を選ぶキーホルダー作り、地元の伝統工芸である杞柳細工のかご編みもある。
注意したいのは、この宝石発掘が「施設の用意した石を探す方式」だという点だ。川や海の野外採集とは違う。だから確実に持ち帰れる。そこを取り違えなければ、家族で行く体験としてよくできている。
兵庫まで来て、岩手の琥珀をすくう。コハク採集の琥珀は、久慈の産だ。ブラックライトで光るおまけ付き。本州を半分またいだ宝探しになる。本場の久慈で自分の手で掘る話は、岩手・久慈の琥珀掘りから読める。体験の料金は入館料と別で、石に関係するものは下の表のとおり。
| 体験 | 料金 | 所要時間 | 受付 |
|---|---|---|---|
| 宝石発掘 | 2,200円(3個持ち帰り) | 10〜15分 | 当日申込 |
| 化石発掘 | 2,200円 | 10〜15分 | 当日申込 |
| コハク採集(久慈産の琥珀) | 3,000円(小瓶つき) | 15〜20分 | 予約可・当日申込可 |
| ジオード割り | 3,300円〜 | 約15分 | 要予約・9:30の回のみ・小学4年生以上 |
| 誕生石キーホルダー | 1,800円 | 約15分 | 当日申込 |
休止中のメニューもある。関東から行って「今日はやっていません」では、笑えない。遠くから行く日は、出る前に確かめる。料金は2026年9月に見たものだ。

入館料とアクセスの実際
入館料は、大人(中学生以上)800円、小学生500円、幼児(3歳以上の未就学)400円。体験は入館料とは別にかかる。年間パスポートは大人2,000円で、3回行けば元が取れる。
開館は9時から17時。体験は12時から13時が休みで、宝石発掘と化石発掘は当日の申し込みだけだ。展示を先に見て、混みやすい昼すぎを外すと動きやすい。休館日があるので、遠くから向かう日は公式サイトかLINEで見ておく。前身の資料館から数えて、2026年で50年になる館だ。
宝石探しに来た崖が、地球の常識を書き換えた——玄武洞と松山基範
ミュージアムの前に広がる玄武洞は、約百六十万年前の溶岩が冷え固まるときにできた、六角形の柱の壁だ。
この崖が、地球科学の歴史を変えた。大正から昭和のはじめ、京都帝国大学の松山基範が、玄武洞の玄武岩に残る磁気を調べた。すると、磁石の向きが今とは逆で、南を指す岩があった。彼は、地球の磁場が過去に逆転したと考えた。
当時は、まず信じてもらえない説だった。それが後に、海底が広がりプレートが動く証拠のひとつになる。逆転の時代は、いまも彼の名で「松山逆磁極期」と呼ばれる。
松山は、玄武洞だけで決めたのではない。本州、九州、朝鮮、中国東北部の三十六か所で岩の磁化の向きを測り、三ページの論文にまとめた。題名は「日本、朝鮮、満州の玄武岩の磁化の向きについて」。どう読んでも、ただの測定報告だ。三ページで地球を裏返して、しばらく誰にも気づかれない。地味な仕事ほど、後から効く。
子どもが宝石を掘り当てて喜ぶその崖が、地球が裏返った証拠を残した場所だ。玄武洞ミュージアムのいちばんの見どころは、じつは展示ケースの中ではなく、窓の外にある。
松山の名前は、千葉の崖の上でいまも使われる
「松山逆磁極期」は、本人が名乗った名前ではない。亡くなったあとの論文が、そう呼んだ。では、磁場がいまの向きに戻ったのはいつか。およそ77万年前だ。その境目がいちばんよく残る地層が千葉県市原市にあり、2020年、そこから始まる時代が「チバニアン」と名付けられた。
豊岡の崖が「地球の磁場はひっくり返った」と言い、千葉の崖が「いつ戻ったか」を答えた。教科書では別々のページにある二つの崖が、一本の話でつながる。千葉の崖の側の話は、チバニアンと房総の石で続きを追える。
「玄武岩」という岩の名前も、この洞から生まれた
理科の教科書に出てくる「玄武岩」。この名前の出どころは、豊岡の一つの洞窟だ。
洞に名前を付けたのは、江戸の1807年、儒学者の柴野栗山だ。模様を中国の神獣「玄武」に見立てた。その名前を岩のほうに回したのが、地質学者の小藤文次郎だ。英語でバサルトと呼ぶ岩の日本名を、洞にちなんで「玄武岩」とした。1884年のこと。のちにこの岩で磁場の逆転を見つける松山基範も、同じ年に生まれた。出来すぎた話だ。
園内には、玄武洞のほかに青龍洞、白虎洞、南朱雀洞と北朱雀洞がある。天の四方を守る「四神」の、そろい踏みだ。そのうち玄武だけが岩の名前になり、教科書に載った。残りの三つは、洞の名前のまま。少し気の毒な気もする。
いま見える洞は、自然にあいた穴ではない。人が石を掘り進めた跡だ。柱の形に割れた岩は切り出しやすく、目の前の円山川で運び出せた。江戸時代には石切り場になり、切った石は石垣や庭石、建物の基礎、漬物石になった。採石は明治の終わりに止められた。
学問の名所の正体は、石切り場の跡だ。どこかの家の漬物石が、玄武岩の名付け親の親戚ということになる。
六角形の柱は、溶岩が冷えて縮んだひび割れ
蜂の巣のような六角形は、誰かが削った形ではない。円山川をはさんだ西の二見山の噴火で流れ出た溶岩が、冷えて固まるときに自分で割れた形だ。
理屈は、乾いた田んぼのひび割れと大差ない。固まった溶岩は、冷えていくうちにわずかに縮む。縮めば、ひびが入る。ひびは冷える面に直角に入りやすく、それが柱の向きを決める。違うのは、規模とかかった時間だけだ。
見上げたら、まず柱の角を数える。多いのは五角と六角だ。次に、柱を横に刻む割れ目を見る。この横の刻みは、よそではあまり見ないものらしい。同じ日本海側では、福井の東尋坊の六角形も、マグマが冷えて割れた柱の崖だ。
行けば私は、横の刻みを数えるだけで小一時間つぶす自信がある。宝石の袋より、たぶんそっちに夢中になる。
岩ができて百六十万年。海や川に削られて柱の壁が顔を出したのは、六千年ほど前だ。見られてきた時間のほうが、ずっと短い。
2022年には「世界の地質遺産100選」の最初の回にも入った。そういう崖なので、決まりは一つだけ書いておく。玄武洞は国の天然記念物で、山陰海岸国立公園の中だ。公園の岩も、落ちているかけらも持ち帰らない。石を持ち帰りたい日は、館の体験のほうで。
展示で見ておきたいもの
宝石発掘だけで帰るのはもったいない。二階の鉱物ゾーンには、世界一とされるアマゾナイトの群晶や、赤い菱マンガン鉱、砂漠のバラ、暗がりで光る蛍光鉱物が並ぶ。なぜ光るのかは、ブラックライトで光る石で先に読んでおくと、展示の前で足が止まる。たたくと澄んだ音の鳴るカンカン石もあり、音を出して確かめられる。
化石も見ごたえがある。昔のゾウ「ステゴドン」やティラノサウルスの全身骨格が立ち、本物のアンモナイトに触れられる展示もある。地元豊岡の伝統工芸で、皇室にも使われた杞柳細工のかごも紹介されている。見て、触れて、たたいて確かめる館だ。
よくある質問
Q. 玄武洞公園とミュージアムは別料金?
A. 別だ。ミュージアムの入館料と、玄武洞公園の観覧料(大人500円・学生300円)はそれぞれかかる。公園は五つの洞を巡るコースで、短いと15分、一周で30分ほどだ。
Q. 小さな子どもにも向く?
A. 向く。宝石発掘は空振りがなく、幼児も楽しめる。ただし幼児だけでの入館はできない。館内にはエレベーターと多目的トイレがある。
Q. 玄武洞公園に案内してくれる人はいる?
A. いる。公園のガイドが、玄武洞と青龍洞の二つの洞を30分ほどで案内してくれる。個人なら一人200円だ。横の刻みや磁石の話は、聞きながら見たほうが残る。
石好き次郎から
関西で「宝石探しができる場所」を聞かれると、たいていはテーマパークの発掘コーナーの話になる。玄武洞を挙げるのは、体験に本物の地質がくっついてくるからだ。
掘り終えた子どもを連れて崖の前に立てば、話は変わる。六角形の柱が、なぜここにこの形で並ぶのか。その問いのほうが、袋いっぱいの石より長く残る。
石は、拾うだけのものではない。どこから来て、何を証明したのかを知ると、同じ石が違って見える。玄武洞なら、宝石の袋を提げたまま、その崖の前に立てる。

スポット情報まとめ
| 場所 | 兵庫県豊岡市赤石1362(国天然記念物・玄武洞公園の入口) |
|---|---|
| 採れる石 | 宝石発掘・化石発掘・琥珀採集などの体験で持ち帰り可(施設が用意した石を探す方式) |
| 難易度 | 子ども・初心者向け |
| 料金 | 入館 大人800円・小学生500円・幼児400円/体験は別料金/玄武洞公園は別途 大人500円 |
| 営業 | 9:00〜17:00(体験は12:00〜13:00休み・休館日あり・要事前確認) |
| Googleマップ | 地図・経路を開く |
| 最終確認日 | 2026年9月 |
公式確認先
料金や開いている日、道の具合は変わる。下は、書くときに開いた公式のページだ。
玄武洞ミュージアム
玄武洞公園
玄武洞の地質と歴史
- 文化遺産オンライン:玄武洞(国指定天然記念物)
- 豊岡市観光公式サイト:玄武洞公園(命名・採石・松山博士)
- 玄武洞公園:地磁気の逆転
- 山陰海岸ジオパーク:国際的な重要性
- 産総研 地質ニュース:松山基範と地磁気逆転(2005年11月号)
- 千葉県:誕生!チバニアン
- 倉敷市立自然史博物館:柱状節理と岩石の冷却面
最終公式確認:2026年9月25日(体験料金・公園の観覧料とガイド)

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