荒川中流で拾うなら、かわせみ河原だ。三波川変成帯の結晶片岩が、河原にごろごろ転がっている。長瀞で見た石と、同じ地質の石を自分の手で拾える川だ。
ただし、隣には「玉淀」という景勝地がある。ここは見る場所であって、拾う場所ではない。石拾いは、その少し先のかわせみ河原に受け皿がある。この線引きを知らずに行くと、良い場所を素通りしてしまう。
拾い方は難しくない。河原を歩いて、片理のある石を探すだけだ。埼玉県立川の博物館が河原に面して立ち、鉢形城跡がすぐ上にある。石だけでなく、歴史も厚い河原になる。
この記事では、かわせみ河原で何が採れるか、玉淀との違い、なぜここで結晶片岩が採れるのか、そしてこの河原にまつわる物語までを書く。

かわせみ河原で拾えるもの——結晶片岩
かわせみ河原は、三波川変成帯という古い地層の上にある。この帯の岩は、長い年月をかけて熱と圧力を受け、薄く層状に割れる性質を持つようになった。これを結晶片岩と呼ぶ。長瀞の岩畳と同じ仲間だ。
| 採れるもの | 見た目 | 特徴 |
|---|---|---|
| 緑色片岩 | 緑がかった灰色。薄く層状 | 片理面が光を反射してつやが出る |
| 紅簾石片岩 | ピンクから赤紫の縞 | 長瀞でも知られる色物。数は少ない |
| チャート | 灰〜白。硬く緻密 | 片理はなく、丸みを帯びる |
本命は結晶片岩だ。板のように薄く割れる石を見つけたら、それが片岩の仲間になる。中でも紅簾石片岩は色が目を引くが、数は多くない。まずは緑色片岩の層状の質感を覚えるところから始めるといい。
手に取ると、片岩は普通の丸い石と触感が違う。指でなぞると、層の段差がかすかに分かる。この手ざわりを一度覚えると、河原を歩くだけで、片岩とそうでない石の区別がつくようになる。
「玉淀」とかわせみ河原は違う——見る場所と拾う場所
玉淀は、昭和十年に指定された埼玉県指定名勝だ。荒川の流域沿岸およそ三キロにわたる渓谷が、その指定範囲になる。長瀞と同じ構図で、この渓谷部は景色を見る場所であって、石を持ち帰る場所ではない。
名勝に指定されるのは、その景観を後の世代に残すためだ。渓谷の岩肌や淵の色は、多くの人が見るために守られている。だから、この区域で石を持ち帰るのは避ける。景色を楽しむ場所と、石を拾う場所は、分けて考える。
石拾いの受け皿になるのは、玉淀大橋の付近に広がるかわせみ河原だ。名勝指定の区域とは別の、開けた河原になる。ここでなら、河原の石を拾って持ち帰ることができる。
この違いを知らずに玉淀の渓谷部だけを歩くと、景色は見られても石は拾えない。逆に、かわせみ河原まで足を伸ばせば、長瀞と同じ地質の石に、自分の手で出会える。行く前に、この二つを分けて覚えておくといい。

なぜ結晶片岩が採れるのか——三波川変成帯と長瀞のつながり
三波川変成帯は、関東から四国まで帯状に続く、日本を代表する変成岩の地層だ。もとは海底の岩だったものが、プレートの動きに巻き込まれ、地下深くで熱と圧力を受けて姿を変えた。それが結晶片岩になる。
長瀞の岩畳も、荒川中流のこの一帯も、同じ三波川変成帯の上にある。荒川が上流から結晶片岩を削り、下流へ運ぶ。かわせみ河原は、その途中で石が溜まる場所の一つだ。
だから、長瀞で結晶片岩を見て「拾ってみたい」と思った人には、かわせみ河原がちょうどいい。岩畳の歩き方は長瀞の単体記事に書いた。同じ地質の続きが、少し下流の、拾える河原にある。

アクセスと河原の実際
かわせみ河原へは、秩父鉄道の鉢形駅から徒歩でおよそ二十分。車なら、関越自動車道の花園インターチェンジから国道百四十号でおよそ十分の距離になる。埼玉全体の採集地は埼玉で石を拾える場所にまとめた。
河原は町が河川の占用許可を受けて管理しており、利用料が発生する。金額は時期で変わることがあるようなので、訪問前に現地の案内や町の公式サイトで確認するのが確実だ。トイレは河原から少し離れた場所にあり、水場も一つある。
この利用料は、環境美化のための協力費という位置づけになる。河原を整備し、ゴミを管理する費用にあてられる。無料で開放された河原ではなく、町と利用者が一緒に維持している河原だと考えるといい。
地盤がやわらかい場所があり、車で河原に入る際はスタックに注意する。夏はバーベキュー客で混雑するので、石拾い目的なら朝の早い時間が落ち着いて過ごせる。
物語のある河原——鉢形城跡と川の博物館
かわせみ河原の上には、鉢形城跡がある。戦国時代の城跡で、荒川と深沢川に挟まれた高台に築かれた。河原から見上げると、この土地が城の守りにどう使われたかが実感できる。
鉢形城は、断崖と川を天然の堀として利用した城だった。荒川が城の北を守り、深沢川が東を守る。石を拾いながら見上げるこの崖こそ、かつての防御線だったと思うと、ただの河原歩きが少し違って見える。
河原に面して、埼玉県立川の博物館、通称かわはくが立っている。荒川そのものをテーマにした博物館で、石拾いの前後に立ち寄ると、この川の成り立ちがよく分かる。全国の石の博物館は博物館まとめに載せた。二〇二六年の夏から秋には、埼玉県産の新種化石プロチェニセラス・ヤジマイの展示も開かれている(九月下旬まで)。
この一帯では、玉淀駅を集合場所にした砂金採り体験のイベントも開かれてきた。二〇二五年、二〇二六年と続けて案内が出ており、単発の企画ではないようだ。予約制で、開催日や集合場所は回によって変わるので、参加するなら最新の案内を確認する。石拾いとは別の角度から、この川の砂と向き合う機会になる。全国の砂金の産地は砂金の川まとめに載せている。
玉淀には、宮沢賢治の歌碑もある。一九一六年、賢治が秩父方面への地質調査の途中でこの地を訪れ、歌を残したと伝わる。石を拾いに来た河原に、文学者の足跡も重なる。
結晶片岩の見分け方
河原には、片岩以外の石も多い。見分けの一番の近道は、石を裏返して割れ口を見ることだ。片理面と呼ばれる、薄い層が重なった面が見えたら、それが結晶片岩の証拠になる。
見分ける3つのポイント
- 層——割れ口に薄い層が重なって見える。丸い石にはない特徴
- つや——片理面が光を反射して、絹のような光沢を持つ
- 色——緑色片岩は緑がかった灰色、紅簾石片岩はピンク〜赤紫
よくある間違い
普通のチャートや砂岩を、片岩と間違えることがある。片岩は必ず層状に割れる。丸みを帯びて層が見えない石は、片岩ではないことが多い。割れた断面を確かめる癖をつけると、間違いが減る。
拾った結晶片岩をどうするか
結晶片岩は、ブラシと水で洗えば十分だ。層状の構造は薄く割れやすいので、強くこすらない。乾かすと、緑や紅の色が少し落ち着くので、色を楽しみたいなら濡らして眺めるといい。
紅簾石片岩のような色の濃い石は、磨くとつやが増す。ただし層状の性質上、磨きすぎると割れることがあるので、無理はしない。産地はかわせみ河原、採集日を書いて残せば、標本として十分になる。
荒川中流で石拾いをする際の注意事項
名勝指定区域を守る
玉淀の渓谷部は県指定名勝で、景観を守るための区域だ。石拾いはかわせみ河原の範囲で行い、指定区域内には立ち入らない。案内表示があれば、それに従う。
地盤と車の注意
河原には地盤がやわらかい場所がある。車で乗り入れる際は、案内された場所以外に入らない。歩いて探す分には問題ないが、足元がぬかるんでいないかは確認する。
水量と季節
増水時や雨の後は、水が濁り危険も増す。晴れて水量が落ち着いた日を選ぶ。夏はバーベキュー客で混雑するので、静かに石を探すなら朝がいい。
荒川中流での石拾いに関するよくある質問
玉淀でも石拾いはできますか
できない。玉淀は県指定名勝の渓谷部で、景観を守る区域になる。石拾いは、その先に広がるかわせみ河原で行う。二つは別の場所だと覚えておくといい。
初心者や子供でも拾えますか
拾える。河原を歩いて、層状の石を探すだけなので、道具も技術もいらない。すぐ隣に川の博物館があるので、石拾いと合わせて学びの時間にもなる。
駐車場や利用料はどうなっていますか
河原は町が管理し、利用料が発生する。金額は時期で変わることがあるので、訪問前に現地や町の公式サイトで確認するのが確実だ。
長瀞と何が違いますか
同じ三波川変成帯の結晶片岩が採れるという点では共通している。長瀞は景勝地としての性格が強く、かわせみ河原はより気軽に石を拾える河原になる。長瀞で見た石を、ここで拾うという楽しみ方ができる。
紅簾石片岩は必ず見つかりますか
数は多くない。緑色片岩に比べると当たりが少ない石だ。まずは緑色片岩で層状の質感に目を慣らし、その中からピンクや赤紫の色を探すつもりで歩くといい。
一人で行っても大丈夫ですか
河原は開けていて、比較的行きやすい。ただし地盤のやわらかい場所や水際には注意する。行き先と帰る時間を伝えておけば、一人でも落ち着いて拾える。
川の博物館は石拾いの前後どちらに寄るのがいいですか
先に寄ると、荒川の成り立ちを知ってから河原に立てるので、石の見方が変わる。後に寄ると、拾った石が博物館の展示とどうつながるかを確かめられる。どちらでも楽しめる。
いつ行くのがいいですか
水量が落ち着く春から秋がいい。夏はバーベキュー客で混雑するので、石拾い中心なら朝の早い時間か、平日を選ぶと落ち着いて過ごせる。増水後は避ける。
砂金採り体験のイベントにも参加できますか
できる。玉淀駅集合の予約制イベントとして案内が出ることがある。石拾いとは別に申し込みが必要で、開催日や定員は回によって変わるので、参加したいときは最新の告知を確認するといい。
石好き次郎から
結晶片岩は、地下深くで熱と圧力を受けた岩だ。もとは海底の堆積物や火山岩だったものが、長い年月をかけて薄い層状の構造に姿を変える。かわせみ河原の一枚は、そうした変化の記録そのものだ。
長瀞ほど有名ではないが、同じ石がここにも眠る。数で言えば、緑色片岩は多く、紅簾石片岩は少ない。だからこそ、色の濃い一枚を見つけたときの手応えが違う。
私も最初は、玉淀の景色だけを見て満足していた。もう少し歩けば河原があると知ってから、この土地の見方が変わった。景色と、拾える石と、城跡と、博物館。一つの場所に、これだけ重なっている川はそう多くない。
かわせみ河原は、派手な産地ではない。だが、長瀞から続く地質の物語を、自分の手で確かめられる河原だ。景色を見るだけで帰らず、少し先まで歩く価値がある。

スポット情報まとめ
| 場所 | 埼玉県寄居町・かわせみ河原(玉淀大橋付近) |
|---|---|
| 採れるもの | 結晶片岩(緑色片岩・紅簾石片岩) |
| 難易度 | 低い |
| 駐車場 | 河川占用エリアあり・利用料は時期変動のため要確認 |
| トイレ | あり(河原から少し離れた場所) |
| 子ども向け | 向く(川の博物館が隣接) |
| 料金 | 河原利用料が発生(金額は要確認) |
| 採集可否 | かわせみ河原は可。玉淀の県指定名勝区域は不可(景観保護区域) |
| Googleマップ | 地図・経路を開く |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
公式確認先
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