水が数万年かけて石を彫る。振草渓谷のポットホール

振草渓谷のポットホールと蔦の渕——愛知・東栄町

ポットホールは、川床の割れ目に入った小石が、水流でぐるぐる回り続けて岩を削った穴だ。削れた分だけ深くなり、気の遠くなる回数をくり返して、丸い穴になる。愛知・東栄町の振草渓谷には、それが花崗岩の川床に点々とある。

振草には行ったことがある。大千瀬川で水晶が採れる、という話を見かけることがあるが、裏付けは見つからなかった。この谷の見どころは、石を拾うことより、水と小石が掘った穴のほうにある。

石好き次郎
水晶が出ると聞けば、石好きの足は勝手に向く。振草で足を止めさせるのは、水晶ではなく、川床の丸い穴のほうだ。
目次

大千瀬川・振草渓谷とは——東栄町を流れる天竜川の支流

大千瀬川(おおちせがわ)は、愛知県北設楽郡東栄町に源を発し、東へ流れて静岡県浜松市天竜区へ抜ける。天竜川水系の支流で、上流部は振草川とも呼ばれる。

川は本郷の市街地を抜けると、国道473号に沿って「振草渓谷」に入る。川床は領家変成帯の花崗岩だ。この硬い岩に、穴が開く。

振草渓谷のポットホール——愛知県指定天然記念物

花崗岩の川床に、小石が回って掘った丸い穴が点々とある。ポットホール(甌穴)だ。東栄町では煮え渕(にえぶち)・預り渕(あずかりぶち)・釜淵(かまぶち)の3つがよく知られる。

煮え渕と預り渕は1988年、愛知県指定天然記念物になった。釜淵は支流の柿野川にあり、「三段滝」とも呼ばれる。数センチから数メートルまで、大きさも形もひとつずつ違う。同じ水が掘って、同じ穴は一つもない。

天然記念物の区域では、石も砂利も持ち出せない。穴を削らない、中の石も持ち帰らない。見て、写真に撮って、置いていく。

石好き次郎
煮え渕を覗き込むと、丸くえぐれた岩の底が、緑がかった水を通して見える。何年かけてこの形になったのか、私には見当もつかない。

蔦の渕——奥三河のナイアガラ

本郷の市街地の東端にある蔦の渕(つたのふち)は、地元で「奥三河のナイアガラ」と呼ばれる。滝の上は硬い安山岩、滝壺側は柔らかい泥岩。硬さの違う岩が違う速さで削れる「差別侵食」で、落差約10メートルの滝ができた。ナイアガラは言いすぎだが、言いたくなる気持ちは分かる。

2003年、とうえい温泉「花まつりの湯」と蔦の渕を結ぶ遊歩道と、滝を見下ろす展望台ができた。展望台の「竜神の鐘」は、鳴らすと願いが叶うそうだ。石好きの願いは、だいたい一つだ。

アクセスと観光情報

基点:とうえい温泉「花まつりの湯」。ここから蔦の渕まで遊歩道が続く。公共交通:JR飯田線・東栄駅からバス(東栄線・本郷下車)。車:国道151号・473号沿い。

夏は「大千瀬てらす」という川遊びの企画が期間限定で開かれる。東栄浄水公園の浅瀬で、小さな子供でも入りやすい。日程は年ごとに変わる。

石好き次郎
とうえい温泉に浸かってから蔦の渕まで歩く。順番を逆にすると、帰りにもう一回入りたくなる。
項目内容
場所愛知県北設楽郡東栄町(大千瀬川・振草渓谷)
見どころ蔦の渕(落差約10m)、煮え渕・預り渕ポットホール(県指定天然記念物)
石の採集天然記念物区域は持ち出し禁止。水晶が出るという裏付けは無い
駐車場・トイレとうえい温泉「花まつりの湯」を基点に利用可(詳細は施設へ確認)
最終確認日2026年7月

よくある質問

Q. 子供と行っても大丈夫?

A. 蔦の渕の展望台までは遊歩道がある。ポットホールのまわりは岩が滑るので、小さな子からは目を離さない。

Q. 紅葉の時期はいつ?

A. 例年の見頃は11月だ。振草渓谷は東三河でも紅葉の名所として知られる。

Q. 鮎釣りもできる?

A. できる。振草川は、鮎の川として知られる。遊漁券は漁協の案内に従う。

石好き次郎
水晶の噂を追いかけて、見つけたのは水晶ではなく、石で石を削り続けた水の根気だった。こっちのほうが、よほど気が長い。

石好き次郎から

仕組みは単純だ。石が岩を削り、削れた分だけ穴が深くなる。だから石好きは、穴そのものより、穴の底で回っていた小石のほうが気になる。掘ったのは、あっちだ。

石を拾いに行く谷より、石が削った跡を見に行く谷のほうが、話が長くなることがある。振草は、そういう谷だ。

公式確認先

料金や開いている日、道の具合は変わる。下は、書くときに開いた公式のページだ。

大千瀬川・振草渓谷の地理・ポットホール

蔦の渕・とうえい温泉

最終公式確認:2026年7月23日

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穴の底で回っていた小石が気になったら、宮崎へ。宮崎・関之尾滝の甌穴は、礫が岩盤を掘りながら自分も丸くなる、工事中の現場だ。

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この記事を書いた人

石好き次郎
石を拾って20年、仕入れて売る仕事もしてきた。実際に見て、触って、確かめたことだけを書く。

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